初代サルガッソ
「え?お爺ちゃん?」
俺は思わずユミナとお爺さんを交互に見る。この人が、ユミナの?
そう思って見ると目元が似ているような...
「おぉ、ユミナか。大きくなったのぉ」
「大きくなったのー、じゃないよ!今までどこ行ってたのもー!」
ユミナがこんなに取り乱すの初めて見た。口ぶりからして、会うのは久しぶりのようだ。
そんなユミナの様子なんて意に介さないでお爺さんはニコニコとしている。この、自分のペースを持ち続けて話す感じは確かにユミナの家族だ。
「えっと、さっき言っちゃったけど、この人あたしのお爺ちゃん」
「どうも、サルガッソと言います」
ユミナのお爺さんの名前を聞いて俺は思い出した。
そうかこの人が初代サルガッソか。こう思っては失礼かもしれないが、街の片隅にある古びた店の店主という姿がよく似合っていて行商人なんてやらなさそうな人に思えた。
「私はジルです。お孫さんと一緒に旅をさせてもらっています」
「同じくイゼリアです」
「ハルです!」
俺たちも簡単に自己紹介をサルガッソさんに返す。サルガッソさんはこくこくと頷く。
「素敵なお仲間さんがいるじゃないか、ユミナ。わしと似て見る目あるのぉ」
「そうでしょー! ってそうじゃなくて!なんで今まで便りもよこさないでいたの!」
サルガッソさんのマイペースにはユミナも振り回されっぱなしだ。
「ユミナ、落ち着いて落ち着いて」
イゼリアがどうどうとユミナを落ち着かせる。
「あ、ごめんね。久しぶりに会ってもお爺ちゃん全然変わらずに話すものだから...お爺ちゃんね、組合としてのサルガッソがようやく軌道に乗って大きくなろうとしていたところで急に家からいなくなって。それで、あたしのお父さんがお爺ちゃんの代わりを務めているうちに組合の代替わりができちゃったの。なんとか上手くいったからよかったけど、本当に苦労したのよ...あたしのお父さん」
ユミナは当時の苦労を思い出したのか辟易しながら語った。
だが、サルガッソさんはなおもニコニコとした顔のままだ。
「いやぁ、ちょうどやりたいことが他にできてしまってのぉ。あいつも、後を継がせていいほどの商人になっとったし任せてしまえばいいと思って」
ユミナははぁー、とため息を吐く。俺たち3人も苦笑いするだけだ。みんな、サルガッソさんのこの雰囲気に飲まれてしまうばかりで、掴めない人だなぁ。
「それで、家を出てまでやりたかったことってこれ?」
「そうそう。こういうなんでも置ける店がやりたくなってのぉ」
店内には怪しげな人形や、数々の楽器類によくわからない薬の類といった商品のごった煮状態だ。
確かに、なんでも置いてそうだ。
「そうだ、ユミナ。ここを見つけたのは誰かの?」
「あー、それならハルよ。さっき自己紹介してた小さい女の子。ほら今店内の商品見てる子」
ユミナが店内を見て回っていたハルを指さす。
「あの子か。そういえば、ここに来たのはなにか目的があって来たのじゃないのかね?」
「あ、はい。ハルの母親へなにか贈り物をと思い、立ち寄らせていただきました」
俺はサルガッソさんにここに来た目的を話す。ついでに、ハルが母親に贈り物をする理由も説明した。
「なるほど、久しぶりに母親と再会で指輪を贈ろうと...それなら、ちょうど最近いいのが入った」
サルガッソさんは店の奥に引っ込んでいく。そして、再び戻ってくると手にはきれいな箱を持っていた。
サルガッソさんはそのままハルの元へ行き、ハルの肩をたたいた。
「ハルちゃん、贈り物を探していると聞いてね」
「は、はい!お母さん、指輪が好きで、その...」
「これなんか、どうかのぉ」
サルガッソさんが持っていた箱の中身をゆっくりと開ける。
その中には、俺がいる場所からでも鋭い輝きを放っているのがわかるほどの赤い宝石が埋め込まれた指輪だった。間近で見ていたハルは息を吞んだ。
「これ、すっごく素敵です!私のお母さんも絶対に喜ぶと思います!」
「おお、よかった。それじゃこれは君にあげよう」
サルガッソさんは流れるように衝撃的な提案をする。
「え、ええ!?そんな、ダメですよ!絶対に高価な物じゃないですか!タダで受け取ることなんてできません!」
ハルはブンブンと手も首も振る。
そんなハルにサルガッソさんは「ほっほ」と笑う。
「いいんじゃよ。ユミナが世話になった礼にでも思ってもらっておくれ。」
「う、うぅーん...わかりました!でも、私からもこれを受け取ってください!」
ハルは懐から布の袋を取り出してサルガッソさんに渡す。
「私が持っているお金の全部です!これだけじゃ、足りないかもしれませんがせめてものお金は払わせてください!」
サルガッソさんは、袋を持ってハルに笑いかける。
「そうかそうか、わしはいいお客さんに会えたのぉ」
「えへへ、私もいいお店に来ることができました!」
だが、サルガッソさんは袋から金貨を1枚だけ取り出して後はハルに返した。
ハルは当然ながら困惑する。
「わしにはこれだけあれば十分な金じゃよ。お釣りは返しておくよ」
サルガッソさんはニヤッと笑い、ハルに指輪を渡す。
「あ、ありがとうございます!」
ハルは指輪を大事そうに胸に抱え、サルガッソさんに頭を下げた。




