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ぶきやぼうぐはそうびしないといみがないぞ!

なぜポーチの中に剣が!?


どう考えてもポーチとサイズが合ってないぞ!

しかもこれ、最強武器の「ゆうしゃのけん」じゃないか。


「ゆうしゃのけん」は主人公が冒険の果てにある魔王城手前の街の鍛冶屋で「ふるいけん」を預けて宿屋で

一晩過ごした後にできるグランワールド最強の剣だ。


間違ってもゲーム開始直後のイベントの後で持っている代物ではない。


俺はひょっとしてと思い、ポーチを腰から取り出して中身をひっくり返してみた。


すると、ガシャンガシャンと強烈な騒音とともに鎧や薬の瓶が散らばる。


やっぱりだ。散らばった物をかき分けて俺は1つ1つ確認する。

まず、ピアスがある。これは「いのりのピアス」、とある王女からもらう最強の頭防具。

次は鎧だ。「まほうのよろい」といって、さっき出てきた「ゆうしゃのけん」をができる鍛冶屋で売られている最強の防具。

この指輪もだ。「せいなるゆびわ」、終盤で聖王から直々に与えられる最強と最も言われている装飾品。

どれもこれも説明書や攻略本のイラストで穴が開くほど見たことのある装備品だ。間違えようがない。


念のために他にあった道具を調べてみると、どんな鍵のかかった扉も開けることのできる「マスターキー」、そして回復薬である「ポーション」が2本と「ハイポーション」が2本あった。

そして、金貨の入った小袋が1つだった。


グランワールドの道具欄は装備品やだいじなものも含めて入れることのできる最大は10だ。

さらに、ポーチの中に入っていたこれらは俺がこの世界に来るまでに入れていた内容と全く一緒だ。

おそらくこのポーチはゲームの道具欄に当てはまる物なんだろう。

つまりこれは、ゲームの道具欄も引き継いでこの世界へ来ていたということだ。


とりあえず装備をしてみようか。この先、必要になるだろうし。


俺は装備品をあれこれ試行錯誤しながら着ていく。剣を腰に差し、ピアスをつけて...

意外にも簡単に装備ができていった。


「なにごとかねこれは!」


突然に後ろから怒声がかけられて俺はぎょっとする。

後ろを振り向くと老人を先頭に人だかりができていた。


「キミ!そこでなにをしているのかね!?」


老人の後ろにいる明らかに困惑したり、気味悪がっている人たちの表情を見て俺はしまったと思う。

調べたり装備するのに夢中で周りに全然目がいってなかった。


「いえ、違うんです...あのー、これはですね」


突然の事態に上手く説明できない。まずいぞこれは。どう見ても不審者だし弁明の仕様がない。


「むむ!その剣に刻まれた紋章は!」


突如、老人は俺の剣の鞘の装飾にある紋章へ目を近づけた。


「もしや、あなたさまは勇者様!?」


「へ? あ! はい!そうです!ここへは旅の途中で立ち寄りました」


俺は咄嗟に話を合わせた。入り方こそは違うがこれはゲームスタート直後にあるイベントだ。


グランワールドの主人公は勇者として魔物の主である魔王を倒す救世の旅を続けていた。

その旅の途中で手ごわい魔物に傷を負わされ、その魔物から逃げている最中に持ち物もなにもかも失ってしまい、命からがらこのカマクの村へたどり着く。そして村長、ここでは恐らく今話している老人だろう、

に手助けをしてもらって再び旅立つ流れだ。


「なんと!知らずとはいえ数々の無礼をお許しください。私はカマク村の村長です。勇者様が救世の旅の途中で重傷を負われたとお聞きして、私を含めた村人一同は勇者様の無事を案じておりました」


結果、勇者様(34)が今ここに生まれた。村長の様子を見ると、特に疑った様子もない。

中年勇者が生誕してしまったこと以外は特に問題はないようだ。


「話に尾ひれがついてしまっているようですね。私は無事ですよ、どうかお気になさらずに」


ここにはついさっき来たところなんで。


「それはなによりです。しかし、長旅でお疲れでしょう。宿があります。どうぞごゆっくりなさってください。もちろんお代はいただきませんので」


「ありがとうございます。とても助かります」


どうにか上手く乗り切ったようだ。俺は村長の案内に従って宿屋へ行き、部屋に入ってすぐにベッドへ飛び込んだ。


「つ、疲れた...」


思わず独り言が漏れる。今日は色々あった。まだ頭の整理が全てに追い付いていない。


「ゲームしてたら、この世界にいて、魔物が現実にいて、でもゲームの俺のステータスや装備は全部持ってて、うーん...」


起こったことはわかるがどうしてこうなっているのかがわからない。


「うーん...うーん...」


「お悩みですかー?」


「うわぁ!?」


いきなり視界の外から人影が現れて驚きの勢いで俺はベッドから転げ落ちる。

慌てて床から立ち上がるとハルがそこにいた。


「ハル!? どうしてここに!?」


「そういえば言ってませんでしたね。私はお母さんが帰ってくるまでここの宿屋のご夫妻に厄介になっているんです!」


そうだったのか。


「それよりそれより、聞きましたよー?ジルさんって勇者さんだったんですね!通りで武器の類を使わなくても強いわけです!」


「あっはは、まあ、そうだね」


ハルは子ども特有の綺麗な目で俺に話しかけてくるので、俺は愛想笑いをする。ややこしい状況を抜け出すために話合わせただけって言いづらいなぁ...


「あっ、そうじゃなくて、お願いしたいことがあって来たんです。ジルさん」


「お願いしたいこと?」


「はい、私を救世の旅へ一緒に連れて行ってください」


ハルが言い出したことはとても予想外のことだった。


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