母のいる場所に
コンダルが光の粒子となって散っていくのを見届けると、イゼリアはグッとガッツポーズする。
「やったわ!まだ1つ目だけど、お父さんの魔法使えたわよ!」
イゼリアが使った魔法...ヒョウヨクだったっけ。
そんな魔法、俺は知らない。つまり、ゲームには出てこない魔法だ。
思えば、ゲームで「エラクスのほん」を手に入れて覚える魔法は3つだ。
だが、イゼリアの持っている本はとても3つで終わるとは思えないほどの厚さだ。
あの本には、きっと俺の知らない魔法がたくさん書かれているんだろう。
...後で見せてもらえないかな。
「ヤンさんに報告しに戻ろうか」
「その必要はございません」
「うおお!?」
びっくりした!?いきなり背後からエリクさんが現れる。
いつからいたんだ!?
「皆様のお手を煩わせてはいけないと奥様が私を使いに出した次第です。報告は私から奥様へ責任を持ってお伝えさせていただきますので、どうぞ皆様はこのまま旅を進めてください」
ヤンさん、そんなことまで考えて...
「イゼリアの叔母さんは姪とよく似て気遣いができるな」
「な、なによ皮肉!?」
「正直な気持ちだよ」
気遣いができない人は今のを皮肉になんて思わない。
イゼリアが不器用なりに俺に気遣いをしているのはわかっている。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「承りました。それでは皆様、よい旅を奥様と共にお祈りしています」
俺たちはエリクさんに手を振って別れる。
頂上から少し下がったところに洞窟があったはずだ。
そこを抜けて、真っ直ぐ下っていけば草原に出て、王都ロレドニアはすぐそこだ。
ハルにやっとお母さんを会わせてあげられる。
俺たちは馬車に乗ってユミナが引いて先へ進み始める。
「この山を下れば、お母さんがいる街はすぐそこだ。ハル、楽しみ?」
「もっちろん!さっきから気分が高揚しまくっちゃってます!あ、でも...勝手に家を出てきてお母さん怒らないかな...」
ハルはしゅんとする。確かに、留守番を言いつけられて勝手にここまで来てしまったのはまずかったのかもしれない。でもそれは、俺が連れて行くと言ってしまったのが原因だ。ハルは悪くない。
「お母さんが怒っても、俺が全部引き受けるからハルは安心してお母さんと会ったらいいさ」
「ジルさん...はい!」
ハルは満面の笑みで俺に頷いた。
「お、山下り終えたよー」
ユミナが知らせる。俺は幌馬車の進行方向へ顔を出す。もう山のふもとに降りていた。山のふもとからは草原が広がる。そしてその先には、グランワールド内で最も大きな国、ローガスの城下町ロレドニアが堂々と存在していた。




