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叔母から姪へ

「ジルには前に話したけど、私はお父さんの作った魔法を広めるために旅をしているの」


イゼリアはぽつりぽつりと話し始めた。

イゼリアのお父さん、つまり大魔導士エラクスが作った魔法はゲーム中でエラクスが書いた本を読んで習得するグレンマやディレイといった類ということは想像できる。


だけど、俺が見た限りでは十分に広まっているように感じた。


「広めるって言っても、もう全然広まっているように思えるけど?」


俺の考えを代弁するようにユミナがイゼリアへ質問する。


「ユミナ、今使われている魔法はお父さんが作った魔法の中でもごく一部よ。少なくとも私が小さい頃に見たお父さんの魔法はもっといっぱいあった」


「うへー、大魔導士だと言われるだけはあるのねー」


俺がこの旅で見てきたエラクスの魔法はほんの一部に過ぎなかったのか!

となると、ゲームでは出てこない魔法がもしかしたらあるのかもしれない...


「ちょっと話がそれたわね。それで、なんで広めたいって思ったかについて話すわ」


イゼリアは深呼吸をして息を整える。ここから先はイゼリアにとっても辛い話なのかもしれない。


「私ね、故郷でお父さんに魔法をよく教えてもらってたの。当時のお父さんは強力な魔法を何種類も作り出していて、1つ覚えたら3つ新しく作り出していつまでたっても教えてもらえる魔法は尽きなかったわ。でもね、お父さんのことを妬んだ人たちがいてね。お父さんが作り上げた魔法のことを書いた本を奪い取って燃やしたの」


「燃やした?でも、それじゃあ今あるのはなんで...」


不可解な事実に俺は口を挟む。

イゼリアは俺の言葉に反応して頷く。


「燃やしたことは事実よ。ただ、燃やされたのは事前に危機を察知したお父さんが本の複製品を作っておいたの。それで、原本は無事に済んだの」


そういうことだったのか。エラクスにそんな話があったとは。


「でも、お父さんはその一件があってからめっきり落ち込んじゃって。あれほど作ってた魔法も全然作らなくなって、私はその背中を見るのが辛かったわ」


対処できたとはいえ、自分の作ったものに対して燃やそうとしてきたんだ。

辛かったんだろう。


「それでね、2年前くらいだったかな。お父さんが家に隠してあった魔法が書かれた大量の本と共にいなくなってしまったの。机の上に書置きだけ残して」


そう言ってイゼリアは懐から一枚の紙を取り出した。

そこにはこう書かれていた。


『父さんは自分の書いた本を信頼できる人たちに預けに行ってくる。正しい人に渡るのを信じて』


信頼できる人っていうと...例えばここにいるヤンさんのような人が各地にいるのか。


「私ね、このままお父さんの魔法が埋もれていくの悔しい。だから、娘である私が使いこなしてみせることでもっともっと広まってほしいの」


「イゼリア、よく言ったわ」


ヤンさんが話に唐突に割り込んできた。大きな黒い本を脇に抱えて。


「私も、兄さんがこんなもので終わる人じゃないと思ってたの。さ、イゼリア。この本をあなたに預けるから、いっぱい兄さんの魔法を広めていってね」


イゼリアの手には黒い本、いや「エラクスのほん」がヤンさんから手渡された。

イゼリアは慎重に受け取るとその本をまじまじと見つめた。


「うん!」


そして、ヤンさんの願いに大きく頷いて応えた

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