焦燥の件
道中で魔物に襲われたりしたものの、素手で振り払うだけで魔物を吹き飛ばすことができるので俺とハルは
難なくカマクの村にたどり着くことができた。
「到着です!それにしても本当にお強いんですね。なにも装備されていないのに、魔物をなぎ倒していって!かっこよかったです!」
「ま、まあ鍛えているからね」
ゲームでだけど。
ゲーム内のステータスをカンストで引き継げたことはいいけど、装備も俺が装備していたものに引き継ぐことができなかったのだろうか。まあ、贅沢を言っても仕方がないか。
「色々あったんだし、とりあえずハルは家でゆっくり休んだ方がいいね。家までちゃんと1人で帰れる?」
「む!バカにしてますね!私はもう10歳ですよ、よゆーですよ!よゆー!」
そういうとハルは自分の家がある方へ走り出した。と思ったら途中でブレーキをかけて俺の方へ振り向く。
「今日は本当にありがとうございました!」
深くお辞儀をしてハルは今度こそ自分の家へと帰っていった。
元気があって、それでいて礼儀正しくて、見ていて飽きない子だったな。
「さ、俺も宿屋かなにかに...はっ!?」
そ、そういえば金をしまう場所ってどこだ?
そもそも俺は金を持っているのか?もし金がないとなると俺は早速野垂れ死ぬ可能性が...
・・・・・・・・・
な、なにかないだろうか。俺は自分の身に着けているものを改めて見返す。
すると腰にポーチがあるのを見つけた。ここになにか入っていないかな。
俺はポーチに手を入れて探ってみた。
ポーチの中は想像よりもずっと大きく、腕ごと入ってしまうかもしれないと錯覚するほどだ。
やがて、硬いものが指先に当たる感覚があった。お?お金かな?
俺はそれをつまんで引っ張り上げる。
するとポーチの中から出てきたのは素人の中年でもわかるほどの上質な剣だった。
俺は初めてこれを見るが知っている。イラストが入っている攻略本で子どもの俺が何度も食い入るように見ていた剣だからだ。
これは、「ゆうしゃのけん」
グランワールドの中で最も強い武器だ。