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偽物と本物

「それじゃあ、始めなああ!」


銅鑼の轟音が開戦を告げるために響き渡る。

俺は、まだ動けずにいた。予想していたはずなのに、会うためにここに来たはずなのに。

いざ、勇者を目の当たりにすると俺は子どものころに憧れていた気持ちが今更ながらによみがえり、まるでヒーローに会った無垢な小学生のごとく純粋な高揚感に包まれていた。


「君が、偽物の勇者か。思っていたよりは若いね。僕はアラド、正真正銘の勇者だ」


あ、喋った!勇者ってこんな口調なのか!

ゲームでは一切喋らないから想像もあんまりしたこともなかった!

名前も攻略本や説明書で見たことのある名前だ!


「お、俺のこと知っているのか?」


つい訊いてしまった。


「そりゃあ、人々に耳を傾けるのも勇者の仕事だからね。君の話はダナメ村でもこのトウシンでも聞き及んでいるよ」


ちょ、ちょっと嬉しい...そうじゃなくて!

色々と聞きたい事があるから俺はここまで来たんだ。


「勇者を騙る不届き者を公に成敗できるんだ。こんなにいい機会はない」


アラドは不敵な笑みを浮かべて剣を抜く。

その顔に俺は不信感を抱く。聞いた限りの話でもこの勇者にいいイメージは付きにくかった。


対面して、そのイメージは更に悪い方へと傾いてしまう。

姿かたちは俺が子どものころに憧れた勇者そのものだが、やはりなにかが違うと思ってしまう。


「はぁ!」


アラドは剣を俺に向けて振るってくる。

俺はそれを受け止めるが、思いのほか強い力に体勢を崩してしまう。


「な!?」


油断をして、あまり力が入っていなかったとはいえ、崩されてしまった!

流石に、勇者と言うだけあって剣筋は鋭い。素人目にもその剣が力任せに振られているのではないことがわかる。腕から上半身全体に行きわたるほどのけぞってしまっていた。


「隙だらけだ!」


体勢を崩した俺の胸に向けてアラドは剣で突く。

だが、俺は体勢を整えずそのまま力任せに腰を軸に体をねじって回避する。


ビキビキ!

い、嫌な音が腰から!?


「なに!?あれほど崩れていたというのに、この突きを避けるか!」


こんな無茶な回避、なんどもやっていられない!

もう気を抜かないように攻撃を見ないと!


「勇者を騙るほどの実力は持っているようだね。だが、人の名誉を利用する者にはそれ以上の賞賛をすることはないね」


アラドはなおも攻撃を仕掛けてくる。

人の名誉を利用だって?笑わせる。


アラドの剣を俺は真正面から受け止める。

今度は力を抜いたりなんかしない。


「び、ビクともしない!どうなっているんだ!」


アラドは必死に力を込めているようだが、俺の剣は少しも動くことはない。


「人の名誉を利用したのはどっちだ?」


俺は戸惑いを続けているアラドの目を見据えて言った。



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