邂逅
歓声の中、俺は一礼して去る。
しかし、ユミナはその場にとどまったままだ。
「みなさーん!どうもありがとうございましたー!ただいまの試合で圧倒的な差を見せつけて勝った人が使ってる剣はこのサルガッソが仕立てた武器でございまーっす!もちろん、あたし自身が使っていた武器や防具類もこの商人であるサルガッソが自前で用意しました!1回戦で残念ながら負けちゃったけど、この後は露店を開くつもりなので、ぜひ来てくださいねー!」
ユミナは観客へ大々的に語り掛ける。
...そういうことか。もう、本人に聞かなくてもなんで出場したのかわかる。
ユミナはこの闘技大会を自身の宣伝に利用したんだ。
闘技大会はこの街の名物だから自然と人が一か所に集まる。そこで自分の商品の宣伝をすれば、注目を一挙に集められる。商魂たくましいというかなんというか。
ユミナは俺の視線に気づくとまたウインクした。
◇
「続けて連戦となりますが、ポーションは使われますか?」
待機場所で案内人に聞かれたが、俺は首を振る。
一応、持ってきてはいるけど使わなさそうだな。
俺はその後も勝ち続けた。
2回戦以降は、俺がゲームで知っている出場キャラばかりだった。
2回戦、やたらとポーションでこまめに回復する戦士、ソロモー。
そもそも、万全の状態から一撃でダウンまで持っていけた。
3回戦、毛むくじゃらな大男だけど分身でひたすらかく乱してくるイエット。
ゲームでは全体魔法を覚えずに来るから運だけが頼りの戦闘で苦戦させられたが、今の俺には全体魔法で分身ごと攻撃できる。
俺はヒョウマレンで闘技場ごと凍らせて、分身を完全無視して倒した。
4回戦の準備をするために俺はまた待機場所に戻ってきた時、近くの衛兵の話し声が聞こえてきた。
「今回の大会、勇者が参戦しているらしい」
「へぇ!そりゃすげえ!今回の大会は盛り上がるだろうな!」
「勇者の名に恥じず、確実に勝ち上がってきているみたいだしな」
確かに聞いた。
やっぱりこの大会には勇者が出場している。
しかし、できれば決勝戦に行く前に勇者と当たりたい思いがあった。
実はこの闘技大会、決勝戦が始まる前に闘技場にボスが乱入してうやむやになる話の流れがある。
同じ流れになるかはわからないけど、早めに会っておきたいのは事実だ。
「そろそろお願いします!」
「あ、はい!」
もう次か。現実に連戦ってなると体力は大丈夫だとしても精神的にキツイな。
スポーツや格闘技で見るインターバルの大切さが身に染みてわかる。
4回戦は、武道の達人レドだったか。ゲームでは単純な殴り合いになるからHPを盛らないと辛い相手だったな。傷は負っていないが、念のために俺はポーションを1本飲んでから行く。
俺は階段を上って対戦相手を確認する。しかし、そこにいたのはレドではなかった。
あれは、あの姿は...とんがり頭をバンダナで押さえつけるに整えた髪、胸に大きく描かれた勇者の紋章がある鎧、刃物のごとく鋭い目つき。
俺が初めてパッケージで目にした姿、仁王立ちでそこに立っていた。
勇者が、俺の前にあらわれた。




