闘技大会、開幕
俺はなんとか闘技大会の出場登録を済ませることができ、宿に向かっていた。
明日には、闘技大会だ。この闘技大会が始まるまで、ゲームでは何度か宿に泊まって闘技大会の日まで進める必要があり、開始まで時間がかかることからもう1人の勇者が出ることを賭けて俺は急いでこの街に来た。
結果、他の3人には迷惑をかけてしまった。
ロレドニアまでの道とはいえ、ハルも巻き込んでしまったな。早く宿に戻らないと。
戻る道すがら、街のいたるところで闘技大会に出場すると思しき人を見かける。
流石、闘技大会の街なだけに強そうな人ばかりだ。
酒場に差し掛かるとより一層そういう人が多くなる。
昼間だというのに騒ぎが遠くまで聞こえる。
昼から酒を飲んで酔っている人からは碌な絡まれ方をしない。
休日に偶然、昼から酔っている上司の八木さんに会って俺は散々な説教というか罵倒をくらう目に会った。早く抜けてしまおう。
「うわああああああ!」
「おっと!?」
酒場の横を通り抜けようとしたとき、酒場から人が吹っ飛んできた。
俺はその人を咄嗟に受け止める。
「闘技大会で人が集まるってんで期待していたが、軟弱なやつしかいねぇなこの街は」
酒場の奥から大男が出てくる。身長、2mはあるんじゃないか?
「ひ、ひいー!た、助けてくれ!」
飛ばされてきた男の人はすぐにどこかへと走り去って行く。
「闘技大家に出場するらしいから遊んでやったのに、暇つぶしにもなりゃしねぇ」
大男はイライラしながら片手に持った酒を飲み干す。これは、酔っているのか?
「ん?お前、なかなか立派な剣と鎧持ってるじゃねえか。もしかして、お前も闘技大会に出場するのか?」
「え、ええそうですけど」
大男は俺をじろじろ見た後、大笑いをする。
「はーはっはっは!てめぇみてえな身体も碌に鍛えてねえようなおっさんが闘技大会とは笑わせるぜ!まださっきの軟弱野郎の方が潰しがいがあるぜ!」
そういえば、ステータスがカンストしているとはいえ自分の体は現実と大差がなかったな。
ステータスに見合った体にしてくれないものだろうか。
「どうせ、出場してもすぐに負けちまうんだ。今、このディバダ様が出場できなくしてやるよ」
ディバダという男の手が俺の顔に伸びてくる。
俺は首だけでかわし、酔っておぼつかない足元を力強く蹴る。
すると、ディバダは綺麗に半回転して、頭から地面に落ちる。
「ごめんなさい、急いでいるんで」
「うが、ががが」
頭を打って、悶絶していてディバダはそれ以上動くことはできなくなっていた。
野次馬も集まって来ている。俺は急いで宿へ直行した。
「おかえりー、2人とも起きてるよー」
宿に戻ると、ユミナが出迎えてくれた。
「ジルさーん!元気になれましたー!」
「下からなんか騒ぎが聞こえてきたんだけど、あんたまたなにかやったの?」
「いやあ、はは...」
元気そうでよかった。早速、俺は3人に闘技大会に出ることを告げた。
「へー、闘技大会ってもう明日なのね。じゃあ、この街にも色んなすばらしい武器が...」
ユミナは商人らしく武器の方に情熱が行っちゃってるなー。
「出たかったけど、こんな状態じゃしょうがないわね」
イゼリアは残念そうだ。ただ、この闘技大会は危険だから俺としては安心している。
「ジルさん、私頑張って応援しますね!」
「ああ、俺もがんばってくるよ」
ハルはもうベッドから立ち上がって窓の外の闘技大会の会場を指さして言う。
「明日は予選らしいし、まだ楽できそうね」
「え?そうなのか?よく知っているな」
「まあ、商人はいかなる情報も大事ですからー」
ユミナからそう告げられて、俺は驚く。
そういえば、ゲームでは「そして、たいかいがはじまった!」の一文からいきなり戦闘に入ったから合間にどういったことが起きたか細かいことはわからなかったんだよな。
「でも、気を抜かないようにね」
「ああ、もちろん」
イゼリアの言葉に俺は頷く。そうだ、俺はこの大会で勝ち上がらなければ...
そして、たいかいがはじまった!
◇
俺は地下に通される。どうやら予選はここで行われるようだ。
何人いるかはわからないが、100人はいることからかなりの数の人が集まっている。
「おい、誰だよあのおっさん」
「あんな奴まで出場できんのかよ」
「あいつと当たる奴は幸運だな」
周りの声が聞こえてくる。陰口は元いた世界でもよく言われてたけど、どれだけ言われても慣れないものだなー。でも、周りにどう思われようと俺は俺の目的を果たそう。
俺は案内人の指示に従って闘いの舞台に上がる。全く知らない予選、誰が相手になるんだ?
「あ! お前は!」
「てめぇ!」
俺の目の前にいたのはディバダだった。
「昨日の借りは瞬殺で返してやるよ」
ディバダは青筋を立てて、既に臨戦状態だ。
「はじめ!」
開戦の合図だ。
「うるあああああ!」
ディバダが猛烈な勢いで迫ってくる。
拳が俺めがけて振られる。酔っていない分、昨日よりも流石にキレがある。
俺はそれを片手で受け止め、瞬時に懐に潜り込む。
ディバダの腹めがけて俺は真っ直ぐに拳をめり込ませる。
「があ!?」
直後、ディバダは吹き飛び壁へめりこんだ。
「なんだ、あいつ!?」
「ディバダを一撃で吹き飛ばしやがった!」
観戦していた他の出場者が騒ぎ出す。
「まずは、1勝」
俺は呟いた。




