夜は更ける
遅くなってしまい、申し訳ありません。
「話?」
「うん、ちょっとだけ」
イゼリアが2人を起こさないように、でも俺には聞こえるギリギリの声で言う。
「今日までのこと。私、こうして強い人、ジルの元で旅ができるってこと感謝してる」
イゼリア...
「あんたは私の知らない魔法をいっぱい持ってて、魔力も私より全然強い」
そりゃあ、全てのステータスがカンストしちゃってるからなぁ。
「魔力だけじゃなくて、剣も扱えてその戦い方はとっても参考になるわ」
そんな風に褒められると照れるな。
「それに、ハルやユミナっていう楽しい仲間にも出会えた。この旅はまだ先が長そうだけど今でも十分に充実した旅よ。ああ、もちろんあんたもその仲間の1人よ」
イゼリア!俺はくうっと目頭が熱くなる。
こういう素直な気持ちを伝えられるとおっさんは弱い。よかった、俺も仲間なんだな。
「えと、だからね、今日の私が宿の部屋で揉めに揉めたのは別にあんたが嫌いだからっていうわけじゃなくて、むしろ好きというか、ちがちが!私、人と距離が近いのに慣れていなくて、それでつい恥ずかしくなっちゃってどうしても焦っちゃうの。つまり、だから...私はあんたのこと嫌いではないから!そこだけははっきりわかっといてほしいなって!」
「お、おう...」
エスカレートしていくイゼリアの勢いに俺は口を挟むことも特に何かいうこともできなかった。
と、とにかく今日のこの話はイゼリアが宿のことで俺を必要以上に拒否したことを気にしていて、そのことを謝りたかったってことなんだな。よし、理解した。
「きょ、距離感もがんばって調整するから!じゃあ、おやすみ!」
「えと、おやすみ...」
捨て台詞のごとく宣言をすると、イゼリアは話を打ち切って寝た。
年頃の女の子だから、気にするのは当たり前なんだけど。でも、そう思わず正面から直そうとするっていうのがイゼリアがとても真面目な女の子だからだろう。
なにはともあれ、イゼリアが正直な気持ちを伝えてくれたこと自体嬉しいし、みんな仲間だって思ってくていることも嬉しかった。
窓の外をみると、月の位置が変わって夜が更けてきているのがわかる。
俺も寝なきゃだな。
明日は、トウシンへ行く。
ゲーム中のフィールドでも広大と感じるほどの砂漠を超えて。




