ダナメ村の夜
「ねーイゼリアー、これはやりすぎじゃないー?」
「なにかあってからじゃ遅いの!」
俺はユミナたち3人が使っている壁際のベッド3つから反対の壁際にあるベッドまで追いやられた。
間にシングルベッドが5つもある。これは広い部屋だ。確かに貸し切り状態は気分が上がるな。
でも、俺の目からは涙がほろりとこぼれ落ちるばかりだ。
しょうがないとはいえ、ここまでの拒否というのは堪えるものだ。
俺は必死に涙を引っ込めた。
だが、俺のベッドがもぞもぞと動く。というか、体の上になにかいるような...なんだ?
「ばっ!」
「うわあ!」
突然、ハルが俺のベッドの中から目の前に出てきた。
「えっへへー、びっくりしました?」
「色々な意味でびっくりしたよ」
ちょっとしたホラー映画気分を味わったよ。
「あ!ハル!そ、そんなところになんでいるの!?」
イゼリアは近くにハルがいないことに気づき、こちらの様子を見て取り乱す。
「えー、だってジルさんこんなに離れてたら可哀想ですよ」
「そーそー、あたしらは付いていかせてもらってる身なんだし、ぞんざいに扱っちゃダメでしょ」
いつの間にか左隣のベッドに移動していたユミナが賛同する。
よそ見してたらどこに行くのか本当に予測は着かないな。この子は。
「ユミナまで...!くぬぬぬ、うーーーーーん、わかったわよ!私も近くで寝たらいいんでしょ!」
イゼリアは渋々ではあるが、ユミナの左にある隣のベッドに移動した。
「流石に隣は、ダメだから!」
イゼリアが強く言う。
「大丈夫だから、無理しなくてもいいよ」
「無理なんて、してない!」
イゼリアはそう言うとさっさと寝に入った。
「それじゃ、俺たちも寝ようか」
「えー!せっかくいいお部屋取れてみんな集まれたのにもう寝ちゃうんですか?」
「明日は厳しい道のりを行くつもりだから、体力を少しでも回復させとかないと」
「う、そういうことなら...」
俺はハルにごめんなと言って寝させる。でもやっぱり、ハルは疲れていたのか俺のベッドから動かずに俺のベッドの中で寝始めた。
「ありゃ、ハルは寝るの早いわね」
「そんなこと言ってる場合か。どうしようか」
「いいんじゃない?子どもなんだし、人肌恋しい時もあるわよ。親にだって長いこと会えてないみたいだし。存分にあなたの腕の中で寝かせてあげなよ」
言い方が卑猥に聞こえるのは俺がおっさんだからだろうか。
ユミナの顔を見るとニヤニヤしていたから、ユミナのせいだと思うことにした。
「あたしも寝るよ。商人の大原則は早寝早起き、早く寝て体力を万全にして早起きすることでその日の商機を決して逃さないことが重要だからねー」
そんな社訓みたいなことがあったのか。
あ、でも俺の会社、営業がメインだから似たような社訓はあったな。
なんて考えてるとユミナはもう寝息を立て始めていた。
寝るのはや!この寝つきの良さも商人をやる上で大事なことなのか...?
...みんな寝たみたいだし、俺も寝ようかな。
「ねえ」
不意にイゼリアの声が届く。
「まだ起きていたのか」
「ごめん、少しだけ話に付き合ってくれる?」
少し、長い夜になりそうだ。




