行き先
「旅の方、よく来なさった。ここはダナメ村です」
ダナメ村に入ると早々に村人から歓迎される。
村人への挨拶もそこそこに、俺たちは宿へ向かう。
俺たちはウーロイを倒した後、宿へ泊るためにダナメ村に来ていた。
というのはついでで、俺は先に行ったというもう1人の勇者の情報を村人から聞き込みするためにやってきたのが本当の目的だ。
聞き込みするに当たって、俺が勇者であることは伏せるようにした。
村人がもう1人の勇者を知っていた場合、どう考えても怪しいやつになっちゃうからなぁ。
だから、勇者の紋章が刻まれた「ゆうしゃのけん」も一旦はポーチにしまうことにした。
代わりに、ユミナが持っていた剣を装備した。
「宿に着きましたねー。これから村の人たちに話を聞いていくんですか?」
「ああ、誰か知っていたらいいんだけど」
俺は開いた入口の扉から村の様子を見る。
ゲームでもそうだったが、ここは中間地点に当たる村でそんなに大きくない。
次に訪れる町が大きい分、ここは特に小さく作られている。
「部屋、全員個別で取れるくらい空いてるって。どうする?」
部屋を取りに行っていたイゼリアが戻ってきて言った。
どうせならみんなそれぞれの部屋で羽根を伸ばした方がいいだろう。
「じゃあ、こべ...」
と言った瞬間、ハルが涙目でこっちを見ていることに気づく。
「私、ひ、1人は...嫌です...。皆さんと一緒が...」
こんな目をされてじゃあ個別でなんて絶対に言えない!
前と同じようにイゼリアと一緒の部屋にした方がいいか。
俺はそうしようとハルに言おうとしたら、いつの間にかハルの前にユミナがいることに気づく。
そういえば、さっき店主と話していたな。なにか聞いてきたのかな。
「そうだよねー、せっかくの旅なんだしみんなバラバラの部屋は味気ないよねー」
「ユミナ?」
イゼリアが見てわかるほどに嫌な予感がしている。俺もしている。
「ここ、4人どころか10人以上泊まれる大部屋があるんだって!しかも、今日は誰も部屋取ってないからそこを占有できるよ!これはこの部屋しかないでしょ!」
「きゃーっか!私たちまだ乙女なのよ!少しは恥じらいってものを...」
イゼリアが顔を真っ赤にしてまくしたてる。
しかし、ユミナは平然としている。
「えー、でももう部屋そこに決めちゃった!」
ユミナはウインクしながら言う。
「はあ!?なに勝手に...」
「皆さん一緒の部屋ですか!?やったあ!私、楽しみです!」
イゼリアの更なる怒りをハルの歓喜の声が遮る。
「ほら、ハルも喜んでることだしさ」
「む、うぐぐ」
イゼリアはハルの姿を見て、必死に怒りを飲み込む。
「イゼリアさん、せっかくですし楽しみましょー!」
「はあ、わかったわよ。ただし、あんたは隔離させてもらうからね!」
イゼリアはキッと俺をにらむ。なにもしないって...
信用されていないのはまあ、しょうがないか。実際自信がない。
「部屋も決まったことだし、聞き込みにいこいこ!」
ユミナは宿を出て、一直線に村の武器屋へと向かっていった。
わかりやすいな!
「ユミナはわかりやすいわね...私も行ってくるわ」
そう言ってイゼリアはあっちこっちに行くようなそぶりを若干見せてはいるが、明らかに武器屋への進路で去って行った。君もわかりやすいな!
「じゃあ、俺たちも行こうか」
「私たちがちゃんと、情報を集めないとですね...」
◇
「うん?勇者様?あー、見た見た!ここに立ち寄っていかれたよ」
「本当ですか!?」
俺とハルは聞き込みをして間もなく勇者を見たという村人に出会った。
「ああ、なんでもトウシンの街に行くっていっていたな」
やっぱりか。俺の予想通りだった。
「ジルさん、トウシンってどんなところですか?」
「ここから更に歩いて行った先にある街さ。規模の大きい街で、闘技場がある」
シートレを発って、ダナメに立ち寄ったならば次はまたその先にあるトウシンなのはわかっていた。
そして、トウシンということは...
ゲームのイベントを俺は思い出す。おそらく、そこでもう1人の勇者に会える。




