予想
光が収まり眩しさから解放された俺の目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。
さっきまで俺は部屋にいたのにいつの間にか草原のど真ん中に立っていた。
しかもよく見るとドット絵で見たことのある魔物、つまりゲーム中に出てくる雑魚敵が実際に目の前に存在していてそこら中を闊歩していた。
・・・夢か?
いや、手に触れる草の感触や頬を撫でる風の感覚から夢であるとは言い難い。
まさか、ここはひょっとして・・・
とにかくなにかわかりそうな場所へ行こう。俺の予想が正しければこの先に村があるはずだ。
俺は胸の中にある恐怖とそれ以上の言い知れぬ高揚感に身を任せて歩き出した。
魔物に気づかれぬように慎重に辺りを伺いながら俺は歩く。魔物が多い場所では身をかがめて進む。
ゲームで何度も見たことのある外見ではあるが実物として存在しているととてもじゃないが敵う相手ではないと思わされる。
そうやって運よく魔物の目を掻い潜って進むことはできたが、まったく村の影も形も見えて来ない。
おかしい。こんなに遠かっただろうか。記憶の通りならもう見えるどころか着いてもおかしくない。
「きゃああああああ!助けてぇ!お母さぁん!」
「げっぎぎ!」
困惑した俺の頭に女の子の声が降りかかる。
声の方を見ると小さい女の子が魔物に襲われている。魔物は木の棒を持った餓鬼のような出で立ちだ。
コボルか!俺は駆け出した。
ゲームでは1番弱い魔物として最初に出てくるような敵だが、ここではどれほどの脅威なのかわからない。
なにもかもわからなくてもこんな状況を見て見ぬ振りなんかできない!
幸い1匹だ。体当たりでもすればあの子が逃げる余裕ができるかもしれない。
「うおおおおお!」
俺は雄叫びを上げながらコボルへと向かう。怖い、怖い。
34年間で最も怖い瞬間かもしれない。でも、退いていられない。
俺はそのまま全力疾走してコボルへ思いっきり体をぶつけた。
どんっと鈍い音がした。
「げぎゃ!?」
直後、コボルが声を上げるのが聞こえた。
「今の内に逃げえええ、あれ?」
さっきまでいたコボルがいない。
女の子に目を向けると女の子は無言で指を指す。
そっちを見ると遥か彼方の森の木に打ち付けられたコボルの姿があった。
「え、ええー・・・」
思わず呆然とする。やっぱりここは俺が考えた通り、ゲームの世界。
しかも、ステータスまで引き継いでしまったっぽいぞ・・・