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緑衣の女行商人

「確かに3人全員の許可証を確認しました。勇者様、よい旅を!」


門番へ許可証を渡して、シートレの見上げるほどの門を通る。

流石に3人だけなので、門全体を開けるのではなく横にある小さな扉からシートレの町中へと入る。


通り抜けた先は、全く知らない世界だった。

ゲームではここの門を通り抜けるとフィールドへ出てしまう。だから、まず見るはずのない場所。


俺は、今まで想像することしかできなかったシートレの町を初めて見た。


門を通ってすぐに広場があり、中央には大きな噴水がある。

町の至るところに行商人が店を開いており、ここから見える酒場には船乗りや鎧を着こんだ男たちが昼間から酒を飲んで談笑している。あちこちで馬車も行き交っており、辺りには活気が満ちている。


「お、おお...!」


俺は感激のあまり声が漏れる。長い間、設定だけの存在だったものが目の前に...!


「町の中はさらにおっきいです!」


「ここってこんなに人がいる町だったの?」


広場の奥には多くの家が立ち並んでいる。路地裏までいけばどこまで広がっているのか。


「迷子にならないように気をつけなさいよ」


「あ、ああ!もちろん!」


「あんたじゃない!ハルよ!」


しまった。今にも走り出したい自分のことを言っているのかと思った。


「私を舐めてもらっては困りますね!今まで迷子になったことなんてそれなりにあるぐらいなんですよ!」


「いや、そんな得意げな顔で言われても。ていうかそれなりにはあるじゃない!」


町は広いし、人の往来は東京の観光地並みに多い。どちらにしろ、はぐれないようにしないとな。


「それで、ここからどこへ行くの?」


イゼリアが訊いてきた。


「ダナメっていう村が近くにあって、次に向かう場所はそこかな。でも、もう日が暮れそうだし、補給もしたいからもう何日かこの町でゆっくりしようか」


「やった!」


ハルが小さく跳ねる。色々見たいんだろうな。

まあ、こんな町をすぐに出発は味気なさすぎるし。俺も散策したいからちょうどいいだろう。


「そうね。私もいい杖がないか武器屋を見てみたいし」


イゼリアも賛同する。


「おっと、そこのお嬢さん。いい杖をお探し?」


「え?」


突然、イゼリアは声をかけられる。

その方向を見ると緑衣に身を包んだ女の子の行商人が立っていた。


「ここであたしが話を聞いたのもなにかの縁。試しにこれを見てくれない?」


そう言うと、行商人は背負っているリュックから一本の杖を取り出す。

杖の先には青い玉がついている。その杖を、行商人はイゼリアに見せた。


「これ、見ただけでも質がいいのがわかる。杖自体の材質もそうだけど、なによりも先端のこの玉に魔力が満ちてる。こんなにいい杖が売られているなんて」


「ふっふ、そうでしょそうでしょ。これは昔、とある魔法使いが魂込めて作った傑作よ。今日はもう店じまいしちゃったんだけどあたしの露店に行けば、他の杖や武具もそろっているよ。もし明日、よかったらあたしの露店へ立ち寄っていかない?」


イゼリアはすぐに頷く。俺も、最強装備とはいえ、ちょっと気になる。


「俺も見てみたいし、行ってもいいかい?」


「もちろん!ありがとね!あたし、ユミナ。一応、露店の場所書いてある簡単な地図も渡しとくわ」


ユミナは小さな紙をイゼリアに渡して去って行った。


「明日は絶対行かなきゃ」


イゼリアは地図を見つめて言った。目に見えてテンションが上がっているな。

意外と強い装備品に心躍るタイプ? 気が合うな。


「ほほー、商人さんってスムーズに話を進めるのが上手なんですねぇ」


ハルは感心してうんうんと頷く。


確かに、いい物を見せることで他にはなにがあるのか気になるように仕向けるのは上手いな。


でも、この話の進め方とあの緑衣、なにか知っている気がする。

なんだったかな?


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