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本物

そういえば、許可証を発行してもらう約束だったことを思い出した。

俺たちは、発行所へ向かった。


「おう!よく来たな!」


「え?」


着いた先で、知らない人が俺に挨拶をしてきた。


「なんかあんたに話しかけてきてるわよ、あそこのゴツイ人」


「お知り合いですか?」


「いや、知らない...な...?」


知らないけど、どこかで見たことあるような...


「ん?鎧を着ていないからわからないか?あんたの後ろでぶっ倒れてたヤツだよ」


「あ!あの時の警備隊の方ですか!」


あの時は色々いっぱいっぱいで顔をよく見ていなかったから気づかなかった。

確かによく見ると心配をしてくれていた警備隊の人だ。


「気づかず、すみません」


「いやー!いいっていいって!大変な状況だったしな!」


警備隊の人は笑い飛ばす。なんて器が大きい人なんだ。


「まず名乗ってすらいなかったな。俺はテスラっつーんだ。ここの警備隊の隊長を任せてもらってる」


「た、隊長さんだったんですか!?」


なんだか強そうな人だと思ったら通りで。


「俺も名乗ってませんでしたね。ジルといいます。勇者として救世の旅をさせてもらっています」


この自己紹介、34のおっさんがやるにはキツイな...

あまり、なんともないように今まで勇者と言ってたりしたが、正直心の中は未だに乱れまくっている。


「それと、こっちにいる2人が」


俺は平静を装いつつ、ハルとイゼリアに顔を向ける。


「ハルです!ジルさんの旅のお供をしております!」


「イゼリアよ。私も、お供、みたいなものかしら?」


お供か。間違ってはいないかもしれないけどなんか子分感が出るな。


「あんた、2人も子どもいたのか」


「ぶふぉ!?」


思わず吹き出す。何言いだすんだこの人!


「んなわけないでしょ!私、17だしこいつの見た目考えても私が娘なわけないし、どっちかというと、こいび、と...とか、夫婦でしょ!」


イゼリアは声を荒げる。焦りすぎだろ。


「子どもですか、それもありといえばありですけど、ここはやっぱり...」


ハルはなぜかはわからないが考え込む。ハル、なんか変なこと考えてないか。


「テスラさん!そんなことより、なにか用があってここで待ってたんでしょ!」


俺は強引に話を変えた。こういう類の話は冗談いえども、話がしづらい。


「ああっとそうだ、あんた、許可証が欲しいんだってな」


「え、ええまあ」


どうしてそのことを...?


「ここの規則規則うるせー役人の兄ちゃんから聞いたよ」


ああ、俺が発行所に来た時にいたあの役人か。


「魔物倒したら許可証発行してくれるって話聞いてよ。でも、ここの許可だけじゃなく町のあちこちの役人から許可貰わなくちゃならないんだ。町の恩人にそんな面倒なことはさせらんねーからよ、あんたがここに来るまでに全部もらってきたよ」


テスラさんは全ての項目に印が押してある1枚の紙を渡してくれた。


「あんたが勇者として認められないから、許可証を発行できなかったのも聞いた」


俺の胸の鼓動が早まった。


「す、すみません...ここまでしてもらって、俺、勇者じゃないかもしれないです...」


俺は重い気持ちを必死に繋ぎとめてテスラさんに謝る。


「ま、待ってください!ジルさんは立派な勇者です!私は絶対そう思います!」


ハル...


「私はわからないけど、少なくとも悪い人間ではないと思っているわ」


イゼリアも...


「はっはっ!嬢ちゃんたち、そんなに焦らなくても別にどうこうしようってわけじゃねーんだ!」


テスラさんがさっき同様に笑い飛ばす。


「確かに、勇者が2人もいるのは不可解だし、そこの勇者が偽物かもしれねえ。けどな!町を救ってくれたのは紛れもなくそこにいるジルという人物だ!ここだけはどうあっても本物なんだ。たとえ、そのもう1人の勇者が本物であったとしても、シートレの勇者はあんたなんだ!」


テスラさんが力強くハルとイゼリアに熱弁する。

俺は、こんなにも自分自身を求められたことがあっただろうか。


「だから、遠慮なくもってきな勇者さまよ!」


「ええ、遠慮なく」


俺はテスラさんに負けないほど力強く頷いた。



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