規則
「勇者の紋章、でしたか。そちらは既に勇者様に見せていただき許可証をついこの前に発行したばかりです」
役人は俺の動揺などまるで知らんとばかりに続ける。
「その際に、許可証の発行理由を勇者で登録しています。救世の旅をされている勇者様だからこそ通る発行理由です。現在、正式に認められている勇者は2人目以降はいません。よって、どちらかが偽物であると考えられます。偽物の方に、信頼できない方には許可証を発行することはできません。先ほど見せていただいた紋章の他に自身が勇者である決定的な証拠を見せられない限り、信頼に足る人物ではないと判定します」
役人は淡々と今の俺の状況を述べていく。
俺はこのおかしな状況を整理するので精一杯だ。
許可証を発行してもらうのは時間はかかるが簡単に終わるイベントだ。
自分が勇者であることを認めてもらうためにこの場所まで来て、紋章を見せる。そうすると、役人がリストを渡してくるので、そこに載っている港の管理をしている人全てに勇者であることを証明しに行く。それが終わって、役人にリストを渡すと発行がされるようになっている。
ところがこれはどうしたんだ。
俺が勇者であることを伝えるとさっきのような状況を説明され、通そうとしてくれない。
偽の勇者がいるなんて話はまったくここではしない。初めての状況だ。
それに、なによりも俺の他に勇者がいる...あまり気にしたことはなかったけど、俺がこの世界に来る前の元々救世の旅を行っていた勇者はどこに行ったんだろう。もしかして俺が勝手に思い込んでいただけで本物の勇者はいたのかもしない。
そうだとしたら、俺は偽物の勇者ということになる。あまり考えたくはないけど...
「すいません、これ以外に勇者の証拠はないです。ですが、嘘をついたつもりはなく...」」
俺は正直に答えてしどろもどろになる。嘘をつく余裕なんかなかった。
「私、いやこの町は勇者としてどちらが本物かなんて塵芥ほども気にしていません。ただ、この町の奥へ通してよい、信頼できる人物かどうかです」
鋭い役人の目が俺を突き刺す。
「つまり、別に偽物であっても信頼できる人物であれば許可証を発行することは可能です」
「信頼できるというのはどういったことで?」
「この町は昔から多くの船が立ち寄り、旅の商人が最後に腰を落ち着ける場所として発展してきた商人の町です。そんな町が信頼に足る人物と認識するのに重要な事はただ1つです」
役人は人差し指をぴんと立てる。そして、一呼吸置いて発した。
「この町に利益をもたらせられる人物かどうかです。この基準で許可証を発行するか決めることが規則、となっていますので」
「急にそんなことを言われても...何をすればいいのやら...」
「キャー!!!!!」
戸惑っている最中、町のほうから悲鳴が聞こえてきた。
「この騒ぎは?」
外を見るとみんな逃げ回っていた。
「魔物だー!「警備隊はまだか!」「逃げないと!」
魔物?今、外はどうなっているんだ?
すると役人の後ろからもう1人役人が現れ、耳打ちをした。
「はい、はい。わかりました。では私なりに対処を進めておきます」
耳打ちを受けた方の役人が言葉を発して伝言役のひとは下がっていく。
「ちょうどいいです。今、船着き場にこの町の警備隊が手を焼いている魔物が出現しています。それを、
見事倒すことができたら許可証を発行します」
唐突に良い話が降ってきた。




