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許可証

シートレの港の隅にある桟橋に船が着く。


「そんじゃ、ここでなー。達者でやれよぉ」


俺たちが船から降りるとネタス村の渡し船は帰っていく。


「ここがシートレ!どこを見ても人がいっぱいです!」


ハルは着いてすぐに走り出す。


「こらこら、走ると危ないよ。やることもあるんだから」


「はーい!」


ハルは俺の言うことを聞くと急ブレーキをかけてUターンして戻ってきた。

咎めはしたけど、正直俺も走り回って何があるのか見たい気持ちがある。しかし、やることがある。


「やることって?」


イゼリアが訊く。


「さっき少し言っていたけど、許可証だよ。ここは世界中から様々な船が集まる。多くの人が行き来するから、危険な人物ではないという信頼の証を示さなくちゃならないんだ。それが許可証、それであの一番先に見える門を通してもらうことができるんだ」


「大勢来る場所な割には面倒な構造してるわね」


イゼリアは門を見つめながら言う。


「それが安全というものなんだろう。それで、その許可証なんだけど今から発行してもらいにいかなくちゃならない」


「ジルさんは、許可証? を持ってないんですか?」


「そうなんだよ、まあ現地で発行できるからね」


ゲーム内でもこの許可証を発行しにいくイベントがある。これが面倒極まりないもので、市役所レベルであちこちをたらい回しにされる。あそこのダンジョンへ行け、あの村に住んでる村長にこれを届けてくれなどといった、いわゆるお使いイベントが珍しくないRPGの時代だった。

だから、そういうお使いには慣れている。

しかし、このイベントの面倒なところはこのゲーム画面では決して広いとは言えない港をグルグル回って同じような景色の中、延々とお使いをさせられるので正直かなりキツいイベントだった。

なぜこんなイベントを入れたのか未だに語られていない。


...しょうがないか。確か、勇者であることをこの港を管理している役員に伝えることができればいいはずだ。その後に、たらい回しが始まる。あー、面倒だ。


「私、持ってますよ!」


「え?」


ハルの思いがけない一言に俺は驚く。


「ほら!」


ハルは懐から一枚の古びた紙を渡す。

本当だ。俺は実物を見たことはないが、確かに許可証であることが書かれている。


「確かに許可証だね。どうしてこれを?」


「2年前、お母さんが家を出る時にお母さんからもらったんです!もし寂しかったら誰かと一緒にこの紙を持って来なさいって」


当時8歳の女の子に預けて言うこととしては結構な無茶を言うな...

でも、これで1人分発行しなくてよくなった。


「あ、その紙なら私も持っているわよ」


「イゼリアもか」


ここに来るのは初めてのようなのに許可証は持っていたのか。


「これでしょう?私が旅に出る時、役立つからって叔父さんからもらったの」


「これも確かに許可証だ。ん?となると俺だけ持っていないのか」


ハルもイゼリアも既に持っているとなるとそうなってしまう。


「そういえばそうね。まあ、ここで発行できるんでしょ。行きましょうよ」


「いや、持ってないのは俺だけだ。どうしても長引いてしまうし、来ても退屈なだけだよ。イゼリアはハルと一緒にシートレを見て回っといてくれないかな。ハルがさっきからうずうずしているし」


ハルは今すぐにでも走り出しそうだ。あちこちを目を輝かせながら見ている。


「わ、私はもう大人ですから!ジルさんを待つくらいど、どうってこと!」


言いながらちらちらと足踏みしながら町を見ている。


「わかったわ。私も色々と見て回りたかったし。頃合いになったらこの桟橋付近にいるわ。行きましょう、ハル」


「しょ、しょうがないですね!ジルさん、すぐに来てくださいね!ジルさんも一緒がいいですから!」


「おー、終わったらすぐ向かうよ。イゼリア、ハルを頼んだよ」




俺は許可証を発行してもらうために発行所にいた。

役員がしかめっ面で俺に言う。


「勇者?勇者様なら既にこちらへ来られていますが。あなたはどちら様なんでしょう」


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