ここは序盤
村から出て、意外とすぐに森へたどり着くことはできた。
ゲームでは色が少し違うだけのフィールドだけど、こうして現実となった世界で歩くと方角を見失ってしまいそうなほど、視界を木で遮られているのがわかる。
「というか、なんで子どもまで一緒なのよ!」
森に入ってすぐに、イゼリアが声を上げる。
「どうしても行くって聞かなくて・・・・」
「村で1人で留守番なんかつまんないですもん」
その言葉を聞いてイゼリアは「はー・・・」とため息を漏らす。
「まあ、私はどうでもいいんだけど。危ないんだから、気をつけなさいよ。精々そこの勇者さまに守ってもらうことね」
「はい!私、ジルさんがいるから平気です!」
「ああ、連れてきた以上は俺が責任を持って守るさ」
イゼリアはちらりと俺を見ると先頭に出て、さっさと前へ歩いて行ってしまった。
俺とハルは慌てて追いかけた。
◇
森の中を俺たちは真っ直ぐにずっと歩いた。体感的には20分ほど過ぎたように思える。
「広い森ね。こんな広い森で本当に言われた場所が見つかるのかしら」
確かに。こうも同じ景色が続くと気持ちが不安になってくる。
「そうだな。けど、真っ直ぐに行くとしか言われてないんだから信じて歩くしかないんじゃないか」
実際、ゲームでも村から出てずっと真っ直ぐにしか行かなかった。
そんなことより、結構長い間歩いているけどハルは大丈夫かな。俺はチラリとハルを見る。
「森も深くなってきましたねー!村の人を困らせている魔物ってどんなやつなんでしょう!」
むしろ一番元気だな。体力があるって、いいな・・・・
中年の哀しみを俺は胸にしまいこんだ。
「ぴぎー!」
前からなにかの鳴き声が聞こえた。
「!? 魔物よ!」
「ウリボンスか!?」
「いいえ、そのウリボンスの子分ね。コウリボンよ」
コウリボンか。ウリボンスに比べると一回りほど小さい猪型の魔物だ。それほど強くないが2~3匹の群れで出てくることがあるから、ゲームを始めたての装備とレベルではなぶり殺されることもある。
「3匹いるわ!」
「手伝うよ!」
1人なら厳しいが、2人いるなら楽に対処しやすいだろう。俺は剣を抜こうとする。
「待って」
ところが俺はイゼリアから静止される。
「この程度、私の魔法で余裕よ」
イゼリアは笑みを浮かべて言う。
「ぴぎゃ!ぴぎゃ!」
コウリボンはそんなイゼリアにまとめて襲い掛かってくる。
マズイぞ!あんなに一気に来たら魔法では対処が!
だがイゼリアは全く慌てる様子もなく杖をかざし、呪文を唱えた。
「グレン!」
直後、杖から視界を覆うほどの大きな炎がほとばしりコウリボンを焼きはらう。
あっという間に3匹のコウリボンは光の粒子となりあたりには金貨が散らばる。
俺は驚いた。イゼリアが放ったのは中級の魔法「グレン」。今の場所ではNPCでさえ使えるはずがない魔法だったからだ。
イゼリア、君はいったい誰なんだ・・・・?




