4話 いざ、極東へ
翌朝、全員が揃い、馬車に荷物を載せた。
あまり裕福ではないギルドだが、馬車を使っても1週間かかる極東からの依頼なのだから仕方がない。
むしろそんな遠くからどうして依頼が届いたのかと疑問に思うほどだ。
馬車に乗り、セッテが操縦する。
その間に他の4人で依頼を確認する。
『書面では完全に伝えることは難しい。ドリゥブ国へ来てくれ。』
「……怪しい。」
「確かにこれは……ね。」
お人好しのクワットもさすがに疑っているようだ。
それに反してオトフィは乗り気のようだった。
「ドリゥブ国は地図の端っこなのよ?『世界の果て』が見れるかもしれないじゃない!」
「『世界の果て』?」
そう尋ねるとオトフィの代わりにクワットが答えた。
「そう。世界の端が崖になっててその先には誰も進めないんだ。」
「登れないのか?」
「噂では空と繋がってるとか……まあ登り切った人は誰もいないんじゃないかなぁ。」
少し間が空いて、レジーが尋ねる。
「そう言えばあなたは旅をしていたって言っていたけど『世界の果て』については知らないのね?」
「ああ。旅と言っても村を転々としていただけで果てから果てへ横断したわけではなかったからな。」
そもそも、果てがあるというのは盲点だった。
ここでは物理法則が必ずしも通用するとは限らないのを見落としていた。
1日目は何事もなかった。
夜は2時間ごとに見張りを交代したが、魔物の襲撃もなかった。
2日目、道中に珍しい薬草があったとかでクワットが集めて、レジーが加工して、緑色に輝く傷薬が出来た。
1ヶ月は保存ができるらしい。
3日目、日が傾いた頃。村があると言うのでそこの宿に泊まることにした。
宿の一室に集まって、会議を行う。
「……あまりにも魔物が少なくないか?」
どうやら皆が同じことを思っていたようで、各々が頷く。
「『果て』に近づくほど魔物が強くなるし出ないに越したことはないんだが…」
セッテも若干悩んでいるようだった。
「やっぱり何かの罠なんじゃ……」
クワットは先日の地図を見ながら言った。
あんなものを聞いたら次はここかもしれないと思うのも仕方が無い。
レジーはいつの間にか寝ていた。頷いたように見えたのは船を漕いでいただけか。
オトフィは夜型で、普段よりも若干饒舌だ。
「あの穴が魔物の仕業と考えるなら確かに罠だろうけど、いくら幻獣種でもあんなに大きな穴は作れないでしょ。」
「ならなんで魔物がいないんだ?」
俺は素直な疑問を投げかけた。
「逆にあたしたちを罠にはめて魔物に何の得があるの?」
確かに。人為的なものがあれば冠位を有しているレジーを狙っていると考えられるが、魔物には関係の無いことだ。
当然うちよりも多くの魔物を倒しているギルドもあるだろう。罠にはめるならそちらを優先するはずだ。
「……もしかして、依頼者の計らいか?」
3人は俺の思い付きを聞いて呆気に取られた様子だった。
「いや、忘れてくれ。ただの思い付きだ。」
「あるかもしれないな。」
意外にも、セッテが同意した。
「ドリゥブ国には腕の立つ戦士が多くいるらしい。それを恐れてこの辺りに寄らなくなったと考えれば……」
この日はここでお開きになった。各々が眠り、日が昇ると同時に村を出立した。
ここから先も、魔物は出てこなかった。
強いて言うなら旅の商人にあったことだろうか。
だが、彼も魔物がいない理由までは知らないようだった。
1週間の旅を終え、目的の国へ到達した。
「ここがドリゥブ国……」
それは国と言うよりも、巨大で堅牢な砦と言った方がいいような外観だった。
「俺も直接見るのは初めてだ……ここまで大きかったとはな……」
一同、唖然としているようだが、レジーはそうでも無いようだ。
「レジーはここに来たことがあったのか?」
「うん。『果て』にしかない素材とか集めるにはドリゥブが一番だからね。」
一行は番兵の元へ行き、依頼書を見せた。
番兵は俺達の顔を一瞥し、嘲笑するように言った。
「またここを無事に通れるように精々励むんだな。」
「どういうことだ?」
「いずれ分かるさ。」
そう言われ、疑問を抱きながらも先へ進む。
ドリゥブ国
人口12,000人程の国。決して少なくない数だが、その多くがギルドや軍に属しているため、一見すると人口はかなり少なく見える。
交易業が盛んで、他国から素材を輸入し、それを加工して輸出することで経済を成り立たせている。
悪い噂が届かぬ程の極地でありながらその知名度は高い。