3話 満月のある日
「……暇だな。」
あの依頼が終わったあと1週間経った。
その後の依頼が全くと言っていいほど来ない。
一通来るには来たが、確認を取ってみるともう既に他のギルドが解決したらしい。
「平和なのはいい事だよ。」
クワットは紅茶を飲みながらのんびりと話す。
「そう言えば最近レジーを見ないが……どこかに行っているのか?」
「ああ。月に一度、満月の日に遠くでしか取れない薬草とかを取りに行くんだ。」
「行商人から買えばいいのに。」
「行商人に頼ると入荷されてない時もあるし、不当に値段が釣り上がったりするからって言ってたなぁ。」
クワットはカップを置き、2杯目の用意をし始めた。
「そう言えば、リーデル君はセッテと鍛錬に行かなくてよかったのかい?」
「鍛錬は要らない。余計な筋肉がついて動きにくくなるからな。」
「へぇ、そういうのもあるのか。」
次の日、オトフィが珍しく心配気な表情で話しかけてきた。
「レジーはまだ帰ってきてないの?」
「俺は見てないが……何かあったのか?」
暫く、悩む。
「いいえ、あなたには関係ないから大丈夫よ。」
──カマをかけてみるか。
「何か異変でもあったのか?」
「……はぁ。勘がいいのね。」
観念したかのように話し出す。
「この前、依頼を受けた村があるでしょ?あそこの村が消えてるの。」
「消えた?」
「正確には魔力反応が消えてる。つまりは人どころか周りの魔物も含めて消えてるの。」
「……それは。」
「まあ私たちにはどうしようもないし、レジーは国から称号貰うくらいだし何かわかるかなって思っただけ。気にしないで。」
オトフィが部屋に戻る時、小さく呟いた。
「いつもならそろそろ帰ってる頃だと思うんだけど……」
その次の日、依頼が舞い込んだ。
が、レジーは帰ってこない。
「長引いてるだけだろ。これまでも時々あったぞ?」
セッテはこう言っているが、クワットとオトフィはやはり心配しているようだった。
「依頼の日は明後日か……それまでに帰ってきてくれればいいけど……」
オトフィは特に心配しているようで、あの村が消えた一件を気にしているようだ。
その事はまだ俺以外には話していないようだった。
きっと、余計な心配をかけたくないのだろう。
そのまた次の日。
レジーは帰ってこない。
セッテはレジーがいなくても大丈夫なように用意を整えると言っていたが、恐らく彼なりに心配しているのだろう。
いつもの彼らしくなく、右往左往している。
そして、居待月がちょうど半分顔を見せた頃。
ようやくレジーが帰ってきた。
その顔には若干の疲れが見て取れた。
「ごめんなさい。突然村が消えたとかですぐに行かなきゃならなくって。」
「村が消えた!?どういうことだ?」
セッテは詰め寄る。オトフィが遮る。
「私も村の魔力反応が無くなったのを感じたの。まだどうなったかまではわからなかったから言わなかったんだけど…」
「そうだったのか…それで、どうなってたんだ?」
レジーは背中の大きなカバンを下ろしながら答えた。
「大地が飲み込まれてた」
「えっ…」
「言葉の通りよ。村というかその周辺地域の土地が無くなってたの。」
クワットは倒れるように座った。
セッテ、オトフィもかなりの衝撃を受けているようだ。
「復旧してみようとしたんだけど……被害が大きすぎて無理だったの。近くの国の王様は神罰だって仰ってて。」
そう言いながらカバンの中からラツェフ全土が載っている地図を取り出した。
俺達のいるネウカー王国から西に少し離れたところにあるユーコグネット王国の南に、半径20kmの円が書かれている。
「だいたいこの部分が無くなってたの。」
暫く、絶句が続いたが、いち早く立ち直ったのはセッテだった。
「……俺達にはどうしようもない。それよりレジー、突然だが明日、依頼が入っている。もう休んでくれ。疲れているだろう?」
「ええ。そうさせてもらうわ。心配かけちゃってごめんなさいね。」
少し欠けた月明かり
これからもっと欠けてゆく
いずれ有明に沈みゆき
終いに姿を消してしまう
明らかにバグが増えた。
これまでも小さな異変はあったがここまで大きいのは初めてだ。
אが動く可能性も考慮しなければ。
リーデル・サントガラル
彼は十中八九■■■■から来た■■■だろう。
原因はそこにあると見て間違いはない。
次は必ず■■。