2話 中編 依頼
どうやら内容は隣国の端、向こうの国よりこちらの国の方が近い場所にある村が狼に襲われているとのこと。
剣を持ち、鞄に薬草とか信号弾を入れて飛び出すとその図体の一回り大きな荷物を持ったクワットが丁度出てきた。
「そうだ、リーデル君。荷物は僕が持つから大丈夫だよ。何か特殊な物は入ってる?」
「いいのか?」
「馬車を使うような距離じゃないし、君は戦闘要員だから身軽でいてもらわなきゃね。」
クワットの荷物を見せてもらうと俺が入れたものは大抵入っていた。
「じゃあ大丈夫だ。石ならポケットに入るしな。」
「石?なんでまたそんなものを?」
「緊急用の武器だ。」
「なるほど。」
そう言って納得したように頷く。
と、ここで隣の部屋から明らかに叩き起されて不機嫌なオトフィが出てきた。
「おはよう。準備は出来たかい?」
「……出来た。」
「それじゃあ行こうか。リーデル君も、早く行かないとセッテに怒られちゃうからね。」
階下に行くと、既に用意を終えたセッテとレジーが待っていた。
「用意はできたな!行くぞ!」
国の外へ出る。国の城壁には結界が張ってあり、強力な魔物は危険性を知っているため近寄らないが、弱い魔物は気にせずに近づいて、焼かれて死ぬ。
そんなに道中に出てきた小人種。
数は3体。ごく一般的な数だ。
セッテと俺で払うことになった。
普段はロングソードは使わないが、これを機に習熟しておこう。
小人種は棍棒を振り上げ、飛びかかる。
あまりにも隙が大きい。
胴を斬る。内より魔力が溢れでる。
が、1体目は仕留め損ねた。まだ立ち上がろうとしている。
2体目がセッテに襲いかかる。難なく躱し、背面を斬る。
一刀のもとに両断されたそれは魔力塊と化した。
3体目は若干の怯えを見せながらも果敢に向かってくる。
次こそは一撃で。
頭部に剣を突き刺す。動きを止め、倒れる。
1体目が立ち上がり、逃げようと試みるが──
「無駄だ!」
セッテが剣を振り払い、砕いた。
落ちた魔力塊は小さく、もう殆どが大気中のマナに還ったようだ。
「やはり、その剣術は殺すことよりも自分が殺されないための物に見える。」
セッテは歩きながら語る。
「そうか?」
「そうだ。決して悪いという訳では無いが、いずれ通用しなくなるだろうな。」
あの短時間の戦闘で完全に見切られた。こいつも只者ではなさそうだ。
村に着くと、村長が歓迎してくれた。
「おお、遠いところをありがとうございます。どうか我々をお救い下さい。」
事情を聞くと、夜になると狼が現れ、村の作物を荒らしていくのだと言う。
なるほど、通りで畑が荒れ果てている訳だ。
そんな環境で作物を育てようとは思うまい。
「オトフィ、獣避けの結界は張れるか?」
「可能だけど……結局私がいなくなったら解けちゃうから一時的に凌ぐ程度なら大丈夫。」
「なら根本を潰さねばならんのか。」
セッテは悩んでいた。
それもそうだ。狼は単体ではそう大したことは無いが、集団になると途端に強くなる。そこを潰すのは事実上不可能で、更にはその集団の生息地は日々変わるというのだから厄介極まりない。
「おお、そうじゃ。」
村長が思い出したように言った。
「狼は毎日東側からやってくるんじゃ。」
セッテは飛び上がる。
「本当か!?それなら“飼い犬”の可能性が高いな。」
“飼い犬”──つまりは小人種などの知能を持った魔物が使役している狼のことである。
「確かに、それならいけるかもしれないね。」
クワットはそう言いながらこの地域の地図を取り出す。
「東で住処になりそうなのは……この辺りかな。」
いくつか丸をつける。
「夜になるのを待ってればいいんじゃない?結界を張っていれば入れなくて帰っちゃうだろうし。」
レジーの言うことにも一理ある。
「だが、確実に住処に帰るとは限らない。他の村に行く可能性もある。」
「そうね……」
暫くの議論の結果、オトフィとセッテを残して狼の住処に向かうことになった。
先導しているのはクワットだ。
「多分この辺だと思うけど……」
着いたのは木々が点在する平原だった。
確かに住処となりそうな洞穴が幾つかある。
「虱潰しか……」
これは骨が折れそうだと思ったが、
「いいえ、その必要は無いわ。」
レジーはそう言うと術式を展開する。
錬金術の強みは詠唱無しの魔術行使が可能な点だ。
「索敵術式、展開。」
四方へ光が飛んでいく。
この魔術は確か、魔力濃度を測る魔術だったはずだ。
魔力が弱い小人種や狼にはあまり意味が無いようだが…
「見つけた。ここから北に少し行ったところね。」
「こんな短時間で……?いったいどうやった……?」
「これは普通より精度を高めているの。魔力消費量は多いけどね。」