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愚者の夢、破滅の王  作者: あいますく
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1話 後編 初任務

「早速だがお使いだ。」

男に大きな荷物を渡される。

「これは……?」

「高台の上に家があるだろ?これをそこに届けてほしい。」

「ああ……。」

かくして俺の初任務が始まった。


丘の上に人ひとりは入るであろう箱を抱えて登るのはなかなかな苦行だ。

扉の前につく。そう言えば昨日は雨が降っていた。地面がぬかるんでいる。

仕方が無いので足で扉をノックした。

「はーい」

女性の声が聞こえる。

程なくして扉が開かれる。

出てきたのは白髪が腰まで伸びた一風変わった女性だった。

いや、少女と言うべきだろうか?身長は俺よりかなり低い。頭2つ低いと感じる。

「荷物を届けに来た。」

「まあ!じゃああなたはセッテのお友達なの?」

セッテ…?ああ、あの筋肉か。

「いや、友達というか、ギルドの新参者だ。」

「じゃあ下っ端に雑用を押し付けたのね。可哀想に。荷物はここに置いてて。お茶を入れるわ。」

そう言うと奥へ引っ込んでいった。

荷物を置き、椅子に座る。

服装も町娘のものとは少し違う。手製だろうか。それにしてはかなり頑丈そうだったが。

「はい。召し上がれ。」

「ああ。いただきます。」

赤茶の透明な溶液は白い湯気を立てている。花に独特の柔らかな匂いが運び込まれてくる。

正直言って、この手の物は苦手だ。

嗜好品とは縁遠い生活だった。それ故に贅沢品を毛嫌いしてしまうのだ。

が、人の好意を無駄にするのもいたたまれない。

カップから半分ほど喉に流し込む。熱さが喉を焼く。

「……美味しい。」

「そう?私には美味しくなさそうに見えたけど。」

……鋭い。子供だと油断していた。

「……ああ。すまないが嗜好品が苦手でな。」

「あら、そうだったの?申し訳ないことをしたわ。」

「いや、俺の好き嫌いの問題だ。君に責任はない。」

「それなら、あなたは普段何を飲んでいるの?」

「……水だ。」

「お水?どうしてそんなつまらないものを?」

「仕事の……昔やっていた仕事の都合だ。匂いのあるのもが持ち込めなかった。」

「ふーん。」何かを詮索するような目で俺を見る。

「なんだ?」

「いいえ、あなたがギルドに入ったのが信じられなくて。」

「どうしてだ?」

「弱そうだもの。」

「……確かに見習いの身だが。」

「そうだ!」

ぴょんと椅子から立ち上がる。

「この武器の調整に付き合ってよ。」

箱に近づき、箱を開ける。

その中から、なんと、2.0mはある大きな剣が出てきたのだった。

「君がそれを使うのか?」

「ええ。でも、大丈夫。本気では振らないし、怪我をしてもすぐに治してもらえるわ。」

そういう問題ではない気がするが…


大きな剣を振り回せる場所はギルドの地下しか思い当たらなかったようだ。

俺は少女と剣を連れてギルドに帰った。

やはり、出迎えたのは筋肉質なこの男…セッテだったか。

「おお、レジー。こっちに来るならわざわざ持っていかせなかったのに。」

「この子を見てたら試したくなっちゃって。」

「なるほど。じゃあ俺はここで他の奴らの帰りを待つから、何かあったら言えよ。」

「はーい。」

そう言うと彼女は俺の手を引いてさっきの地下闘技場へ向かう。


「さて、あなたの得意な武器は何?」

連れてこられたのは闘技場の裏、武器庫だった。

ここには剣、槍、魔銃に至るまで、この世界の武器全てがあるのではないかと思わせるほどの在庫であった。

「短剣はあるか。」

「短剣?あるけど……いいの?」

「問題ない。」

短剣を借りた。刃渡り15cm程だ。武器の体格差はおよそ13倍。


位置につく。少女は剣を地につけて、俺は短剣を腰の当たりに逆手で構える。

こちらから攻める。相手の明確な弱点は振り上げるまでの速度。

その隙を縫って右手が腹部に入ろうとする。

が、相手の小柄さが利となった。

腹部に入れると、どうしても俺は屈まざるを得なかったのだ。

それに気づいた時には、大剣が真上に振りかざされていた。

短剣で防げるはずもない、本来ならば。

肩を狙われていたのが功を奏した。

大剣が振り下ろされる。短剣で角度を微妙に変え、かする程度にダメージを減少させた。

「あら!すごいわ!ダガーでいなせるだなんて。」

「たまたまだ。」

大剣の回避法は理解した。姑息な手ではあるが、背後からの奇襲が得策だろう。

素早く側部に回り込み、短剣を左手に持ち替え、正面に切りかかるように見せる。

少女は大剣を薙ぎ払うように振る。読まれていたか?

スライディングで大剣の下をくぐり抜ける。

すぐさま起き上がり、左肩に短剣を突き刺そうとする。

少女はしゃがんだ。俺は一瞬間バランスを崩す。

下からの斬撃が向かってくるのが見えた。

回避は、間に合わない。


この世界の物に基本的には破壊が訪れることは無い。

いわば硬度が無限大である。

が、魔力が付与されているが故に硬度が下がり脆くなるという性質がある。

逆を言えば、魔力が少なければ少ないほど硬い。


短剣は大剣を受け止めている。むしろ、大剣が刃こぼれをしている様にも見えた。

使ってから、しまった、と思った。

これは隠し通さなければならない秘伝であった。

距離をとる。

少女は呆然としている。

その後、気を取り戻し、今度はキラキラと目を輝かせて尋ねてきた。

「あなた!今のは魔力を限界まで無くしたのよね!すごいわ!こんなに凄い技を持ってるのに未熟者だなんて!」

「いや、あれは無かったことにしてくれないか。」

「どうして?」

「その……人には見せてはいけない呪いだと教わった。だから使いたくなかったんだ。」

「そうなの?わかったわ。2人だけの秘密ね。」

そう言って少女はいたずらっぽく微笑んだ。

report,1

危なかった。と言うより減給は免れないレベルだ。

何とか口外しないように約束はしたが、所詮約束、破られる可能性は高い。しかし、あの戦闘力。万一敵なら俺一人で片付けられるかどうか……

要注意人物としてマーク。

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