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第1章ー4「出撃準備」

『そろそろ降下地点につくよ! みんな、用意してね』


 出発してから5時間が経過した頃、ようやくカフカの声がスピーカーを通して響き渡った。


「そうか……やっと出発か……ありがたい……」


「ショコラも……早く……降りたい……」


「えぇ!? オレもっといたいっすよ! ラジオ聴いてたいっす!」


 はぁ、とため息をつくクルスとショコラ。その顔には明らかに疲労が見て取れた。


 その原因は、もちろんオメガ。彼がまるで年齢一ケタ台の子供のようにはしゃぐせいで、クルスたちはゆっくりと自分の時間を過ごすことさえできなかったのだ。


『あ、あはは……何があったかはあえて聞かないことにして……とにかく、出撃の用意をしてね』


「了解」


 気を引き締めなおして、彼らは早速効果準備を始める。


 武器庫にいくつも収められた棺桶のようなポッド。彼らは真っ先にその背面に取り付けられたモニターを操作する。


「カフカ。降下予定時刻は?」


『今から30分後。現地時刻で、午前3時30分』


「場所は?」


『ドバイとアブダビのちょうど狭間あたり』


「降下ポイントに敵兵の存在は?」


『なし。掃討モードもオフで大丈夫』


 慣れた手つきでそれを操作する。


 彼らが触っているそれは、降下用ポッド「クリーンナップ・インヴェージョン」。搭乗者を入力した時刻、ポイントに着実に落下させる代物だ。今は棺桶のような形だが、降下が始まると何本もの腕が生え、そこから機銃やミサイルを撃ちまくり近づく敵を掃討する。


 そのおかげで空中で撃墜される可能性は1%未満。さらに落下地点で囲まれてしまう、という可能性もほぼ0になり、より安心安全な降下ができるようになったのだ。


 パラシュートにより落下の衝撃を抑え、中の人間も無傷。さらに、これは人間だけでなく武器を乗せるスペースも十分にある。つまり、降下した瞬間にでも激しい戦闘が可能、というわけだ。


「武器用ポッド、準備完了だ。あとは俺たちのだが……重っ! 俺のだけ重たくないか?」


『クーたんの気のせいじゃない? それとも腕がなまったのかな?』


 移動しやすいようにタイヤもついているが、それでもポッドが重い、と彼は感じてしまう。重装備をよく用いるオメガのものと間違えているのでは、と疑ったが、ポッドのタグには彼の名がしっかりと刻まれていた。


「とりあえず、セッティングを済ませてから中を検めるか」


『あ、そうだ。クーたんクーたん。一つ気になってることがあるんだけど、いいかな?』


 用意をしながらクルスはカフカの言葉に耳を傾けた。


『アーちゃんが見当たらないんだけど、心当たりない?』


「アリサが? 通信には出ないのか?」


『うん……クーたんたちが出発して暇だったからあそぼっかなぁって思ったんだけど……いないし、通信にも出ないんだ』


「そうなのか……まぁ、ひょっこり出てくるんじゃねぇの? つか俺たちが任務だってのに遊ぼうとするな」


『は~い』


 カフカの気の抜けた返事を聞き終えるとともに、彼はもろもろのセッティングを終えた。


「アリサがいない、か……いったいどこにいるんだろうな」


 アリサのことを考えながら、ゆっくりとポッドの扉を開いて彼はその中を凝視した。


「やっほー、おにいちゃん」


 ばたん。素早く彼は扉を閉める。アリサがいたような気がしたが見間違いだ、自分にそう言い聞かせてもう一度扉を開けた。


「ひさしぶり、おにいちゃん!」


 ばたん。


「ちょっとおにいちゃん!? 無言で閉めないで! ねぇ、開けてよ!」


「カフカ。アリサ発見」


 ポッドの中のアリサは、クルスの顔を見るなり恥ずかしそうに笑う。だが、対するクルスは鬼の形相だ。


「つかお前、何でここにいるんだよ!? 俺たちは任務でここにいるんだ! 遊びじゃない!」


「むぅ……いいじゃん、別に……おにいちゃんと一緒じゃないと、寂しいし……」


「子供かよ」


『ま、まぁまぁクーたん。そう怒らないでよ。付いてきちゃったものは仕方ないし』


「なんでカフカがフォローしてんだよ……」


「オメガもショコラちゃんも、私がいたほうがいいよね? ね?」


「人数が多いほうが楽しいっすから、オレは賛成っす!」


「アリサさん……いれば……心強い……」


「はぁ、お前ら……」


 クルスは悩ましげに頭を抱え、叫んだ。


「わかったわかった! 今回だけだからな!」


「やったぁ!」


 こうしてイレギュラーだが、作戦にもう一人加わることとなった。



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