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第1章ー3「戦争ビジネス」

「なぁなぁ、リーダー。筋トレしていいっすか?」


「だめだ。機内ではおとなしくしてろ。あと汗の臭いがこもる」


「だって暇なんっすよ。ショコラも爆弾ばっかり触ってるし。こんなんじゃ体なまっちゃいますって!」


 太平洋上空を飛ぶ飛行機、そこに搭乗するクルス、オメガ、ショコラ。自動操縦のプライベートジェットに偽装したそれには彼ら以外にも、大量の武器が乗り込んでいる。


 ジェット機の表面はプロジェクションマッピングの機能を取り入れており、その体に回りと同じ景色を映し出している。さらに、レーダーで探知されないよう特殊加工も施されている。


 目視でもレーダーでも発見できないジェット機。そんな代物に彼らが乗っているのには、日ノ本の外交が関係していた。


「そもそもステイツー5に行くのに、なんで太平洋わたって本場のステイツを横切らないといけないんすか」


「それは俺たちがいてはいけない兵士だからだよ。日ノ本は2020年のあの爆破事件以降海外からの入国、海外への渡航を禁止した。それがどんな理由であれね」


「でも……貿易だけは……セーフ……だったよね?」


「そう、ショコラの言う通り。日ノ本は貿易のみで海外とつながっていた。けれど、そんな勝手なこと、諸外国のお偉いさん方は許してくれない」


 腐っても世はグローバル社会。どこかの国が自由にふるまえば、それだけで目がつけられてしまう。武装テロを何度も起こした宗教国家だってそうだし、ミサイルの開発をやめなかった独裁国家だってそう。最後は、制裁され消されてしまうのだ。


「だから日ノ本は俺たちを戦場に送り込むことにした。使い捨ての犯罪者としてね」


「でもどうして戦場なんすかね? あちらさんの工場とかで働かせる、とかでもよかったんじゃないすか?」


 不思議そうな顔を浮かべるオメガに、クルスは窓の外を眺めながら言う。


「戦争は昔とは違うんだよ。古い考えだと戦争は侵略行為の一環だった」


「従わなくちゃ……殺す……怖い……時代……」


「そうだ。けど今はビジネスだ。戦争が起これば経済が動く。銃が売れ、弾薬が売れ、爆薬が売れ、戦車も戦闘機も売れる。今やどこの国でも自分たちの武器が戦争で使われるために、武器の開発に精を出してるさ」


「確かにオレたちが使ってる銃もステイツ製だったりゼウス(元ヨーロッパ)製だったり、いろいろっすね」


「だが武器は無限に作れたとしても、人は無限じゃない。いわば俺たちは自国に損害を出さず成果を出せる有限の使い捨て製品ってわけだ。けど俺たちのこんな活動は日ノ本の人たちは知らないし、相手に日ノ本だとばれてはいけない」


 つまり彼らは非公式の使い捨て部隊なのだ。日ノ本の犯罪者をとらえるだけでなく、国外の戦争に肩入れする。そして命を落としたものが、果たしてどれだけの数になるだろうか。クルスは両指の数以降数えるのをやめている。


「だから俺たちは今からステイツの正規軍として出撃する。そのためには遠回りになるが大西洋を横切らないといけない。これでわかったか? わかったならおとなしくしとけ」


「あ、じゃあコマンドー見ていいっすか?」


「……ショコラ……それ、飽きた……」


「じゃあプレデター? トータル・リコールも面白いっすよ!」


「オメガ……お前の薦める映画、何回見てると思ってんだよ……」


 クルスもショコラもうんざりだ、という顔を浮かべる。そこまで好きでもない映画を何度も見せられれば誰だってそんな顔になるだろうが、オメガは理解できていないようだ。


「とにかく、ラジオでも聞いておとなしくしてろ」


 クルスは手元のコンソールをいじり、ラジオアプリを起動させた。するとスピーカーから自動音声変換で日本語に変換された声音が流れてくる。妙にテンションを挙げた男の声だ。


『こちらバトル・フィールド・チャンネル! 通称BBF! 今夜のパーソナリティも私、ジェイムズ・スパーナでお送りします!』


 テレビが生まれ、ネットワークが社会に普及し、ラジオの役目はもう終わったとされていた。だが、戦争ビジネスのこの社会ではラジオはとても重宝する。


 娯楽のほとんどない戦場で唯一楽しめるもの、それがラジオなのだ。兵士たちは戦いが収まるとラジオに耳を傾け、くだらないジョークや最新のヒット曲で自身の心を癒すのだ。


 戦場で感じるストレスは日常生活で感じるそれとは明らかに違い、戦場の人間のほうがPTSDなどの精神病にかかりやすくなる統計が出ている。


 有限の資材である兵士はラジオによりストレスをコントロールされている。だがそれは養鶏場の鶏が、肉を柔らかくするためにストレスコントロール用のクラシックを聴かされているのと何が違うのだろうか。


『さぁ、今日はステイツー5での戦いを紹介するぜ! 本場ステイツの兵士諸君の戦いは今日も勇敢なものでしたね。ステイツの民族の古くからの血が騒いだのでしょうか』


「……ラジオ付けたの、失敗だったかな? ちょっとうるさいな」


「そうっすか? オレは好きっすけどね。特にこのDJ、親近感が湧くっす!」


 あぁ、なるほど、とクルスは納得する。


『さぁ、それじゃあ今日のリクエストタイムに入るぜ! ばしばし応募されてるなかから選ばれた今日の一曲は……「ワルキューレの騎行」だ! 勇ましい音楽とともに戦場を駆け抜けて頂戴!』


 そしてスピーカーから大音量で流れる「ワルキューレの騎行」。勇ましく鳴る音色にオメガはノリノリだが、クルスはそうでもなかった。


「趣味悪いっての……」


 ぼそり、つぶやいた言葉に、ショコラも静かにうなずいていた。



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