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プロローグ-1「2100年 トーキョーポリスにて」

「こっちだ! 早く来い!」


真っ暗な闇に紛れるように、二人の男がここ、トーキョーポリス湾岸区を駆けていく。都市部とは違い、この湾岸区は明かりが少ない。と、言うのも外交のための輸送船しか辿り着かず、普段はめったに使わないせいである。


船の格納庫の隙間を、まるでネズミのように抜ける二人。コンクリートの地面に反射する足音の短い間隔が、彼らの急ぐさまを表している。


「くそっ……なんで俺たちがこんなに走らなくちゃなんねぇんだよ!」


「それはあんたが『公安』の連中に見つかったからだろう!? 僕に逆ギレしないでくれ!」


 やっとのことで目的地である湾岸区の一番高い電灯のもとにたどり着いた彼らは、足を止め肩で大きく息をついた。


「はぁはぁ……追っては来てないみたいだ。へへっ。うまく撒けたようだな」


 明かりに照らされて男のニッと笑う顔が映る。歯が欠けて顔の髭も手入れされていない、浮浪者のような男だ。やれやれ、と肩をすくめたのは20代半ばの若い男だ。身なりは普通のスーツだが、向かいの男と相まってかなぜか高級なスーツを身に着けているように見える。


「どうだ、吸うか?」


「やめておく。さすがに依頼の品に手を付ける度胸、僕にはないからね」


「意気地なしめ」


 浮浪者風の男はにやにやとした笑みを顔に貼り付けながらポケットをまさぐる。そうして取り出したのは小さな白い筒状のもの。パッと見ると煙草のように見えるが、実はその紙筒の中身は違法薬物だったりする。


 彼らはクスリの常用者であり、最近世間を騒がせている麻薬密売グループ『真田組』の一員なのだ。


「くぅ! 頭がしびれるほどうまいねぇ」


「まだ仕事中だ。トリップするのはいいが、ほどほどにな」


 ぷはぁ、と重たい白い煙を口から吐き出した浮浪者風の男。黙々と煙は風に乗り、いつのまにか彼らの前にいた男の顔にかかった。


「お前ら、まだ仕事だってのに、ほんといい身分だな」


 街灯の光に照らされたその男がニヤリ、と笑う。口元から覗く歯は、金色に輝いていた。


「ボ、ボス!?」


「ど、どうしてボス自ら……」


 ボスと呼ばれた男は浮浪者風の男からクスリを奪い取ると、それを思い切り吸引した。ぷはぁ、と巨大な煙を吐き出してから、男は低い声音で話す。


「お前ら。取引は中止だ」


「え!? 急にどうしてですか!?」


 真面目そうな男があわててそう言った。隣の男も意味が分からないという風な瞳をボスに向けている。


「この取引は罠だ。『公安』の連中のな」


 ボスが忌々しそうにそう吐き捨てる。


 それと同時に、闇夜を切り裂くように光が現れた。それは一つや二つではなく、大量の光源を用いて麻薬密売集団を映し出した。


 突然の光に目を細める彼ら。眩む視界の中、彼らの目には二つの人影が映っていた。



「こちら国家公安保全委員会、犯罪執行部隊ハウンドドーベル。政府の意向に従い、貴様ら真田組を壊滅させる」


「A級犯罪者、真田ミツハル、以下二名の処刑を実行」


「ま、まずいですよボス! あいつら公安です!」


 国家公安保全委員会、通称公安。彼らは2100年現在のトーキョーポリス、いや、日ノ本の平和を守るための組織だ。


 そして彼らこそがそのための実行部隊、ハウンドドーベル。


「ハウンドドーベル……政府の忠犬気取りのガキか」


「社会のクズにそう言われたくはないね、なぁ、アリサ」


「えぇ、そうね。クルスおにいちゃん」


 彼らはボスの言葉に視線を変えずに答えた。


「ダラダラと長話してると怒られちまうし、早速やるか」


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