頂点調子な雪
天才の眼は遠く凡才の眼は近い
「え?え?いやいやおかしいやろ」
翡翠がオドオドしながら言う。何故か関西弁のようになっている。眼前には有栖と巨大な髑髏が居る。髑髏は人の形をしていた。髑髏は呼び出したと分かるが何故有栖が動いてるの?翡翠には疑問が生まれた。
「ヒントは骨だよ」
有栖は言う。言われて翡翠は目に魔力を集中させた。すると有栖の両腕と両脚に異常な程の魔力が集中していた。翡翠は大体察した。
「まさか…あんた…」
翡翠は確かめるために言った。有栖は少し笑って言った。
「そうだよ、回復するまでの間魔力で四肢を動かしてんだよ」
そして有栖は髑髏に合図する。すると髑髏は翡翠に飛び掛かる。翡翠はそれを糸で斬り刻んでいく。
「無駄、変わんないから」
翡翠は笑ってそう言い、糸を操る。糸からは雷が流れ有栖を攻撃している。有栖はそれを骨の壁で防御する。骨の壁は軋んでいた。有栖の顔から余裕がなくなる。
「まずいな…」
時雨が言う。そして統に電話をかける、統は直ぐに出た。時雨は分かったことを言った。
「それは本当か!」
統は時雨に言い返す。時雨は本当だと答える。
「直ぐに戻る––––––戻った!」
統は時雨の隣の鏡から出てきた、時雨はただ塔を見ていた。塔ができたときは困惑の声があったが今はもう無く静かであった。司会も黙り込んでしまった。
「春はあの中だ統」
時雨は言った。統は塔を凝視している。
「時雨、救えるか」
「ああ勿論だ。中に鏡を作ってくれ」
時雨はそう言い、目を閉じて集中する。統は鏡を塔に向かって飛ばす。
「光よりちょっと速いくらいで大丈夫かな」
時雨がそう言った声が統に届く前に時雨は塔の中に入った。
骨の壁には亀裂が入っていた。隙間から雷が漏れる。
「あはっ弱〜い。ほらほらほら〜」
翡翠は笑いながら言う。有栖は左から少し顔を覗かせる。翡翠が居ない、有栖は殺気に気づき上空を見る。翡翠は上から落ちながら糸と雷撃を放つ、だが彼の視線はそこに向いていたのでは無い。無いのである、春を閉じ込めていた繭がなくなっていた。有栖はそれに気を取られ雷撃を食らってしまう。雷撃に打たれながらクソ師匠、有栖はそう思った。
「余所見するとは余裕だね〜」
翡翠は笑って言う。有栖は直ぐに起き上がり、翡翠に攻撃を放つ、翡翠はそれを避ける。
「余裕ですよ。もう貴方のカードは無くなったんですから」
有栖は言う。翡翠は怒る。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでいっつも私ばっかりなのよ!翡翠は怒り電撃を放つ。
「桜花舞 承ノ舞 月天華の誘惑」
有栖がそう言う、するとスタジアムに巨大な桜の木が出来る。その木はとても大きく塔に巨大な穴を開けた。そこからは芳しい匂いが漏れていた。翡翠は吸い込む、思わず翡翠の口が緩む。
「あはははは…何このにオい。駄目なのに…ひぎっ…
闘ってるのに…あん…うっ…いい匂いあははははははははははははははははははははははははははははは」
翡翠が自分の顔を叩きながら言う。顔には恍惚とした表情を浮かべている。有栖はそんな翡翠に眼もくれず続ける。
「華の酒宴はまだまだ続く。永遠とも思える時の中で…常世を忘れ…ただ溺れるのみ」
有栖は俯き哀しげに言う。翡翠は倒れ込んでいた、だが次の瞬間自分に雷撃を放ち翡翠は正気に戻った。
「ひぃぃぃぁぁぁぁぁ危ねぇなぁ」
翡翠は言う、そして有栖に電撃を放つ。顔はとても怒っていた。
「あらら、あらら。次の舞」
有栖は雷撃を防御しながら言う。
「桜花舞 転ノ舞 暗闇髑髏花弁」
有栖がそう言うと、巨大な桜の幹が割れる。翡翠は桜の幹と有栖に雷撃と糸で器用に攻撃した。有栖はそれを幹の陰に隠れてなんとか防御する。桜の幹に巨大な亀裂が入る。次の瞬間幹から何かがもの凄い早さで出てくる。それは翡翠に斬りかかる、しかも真正面から。それは髑髏であった。
「うおっ!そっちか!アホやのぉ〜糸魔法 惨劇舞台!雷魔法 王雷」
翡翠は笑いながら魔法を詠唱する。髑髏は一瞬で斬り刻まる。その瞬間もの凄い速度で有栖が翡翠に近づく。だが翡翠の細い糸の壁が有栖の顔に切れ込みを入れる。そこからは血が流れている。
「まだ…壁あったんですね…」
有栖が笑って言う。翡翠は笑って、有栖に糸を飛ばす。それは有栖に当たり有栖から血が流れる。
「条件は調いました。
これにて桜花舞は終焉へ
桜花舞 結ノ舞 終焉知らせの崩」
有栖がそう詠唱すると、上にある塔の天井が降ってきた。
「最後の悪足掻き?」
翡翠はそう言い、降ってきた天井を壊そうと電撃を出す。だが電撃はすぐに下に堕ちてしまう。翡翠は糸で鞭や剣を創り防御しようとする。だがそれもすぐにへなへなと地面に堕ちてしまう。
「あぁ〜鬱陶しい〜究極雷魔法…」
翡翠がそう言いかけた瞬間下からあの時の百足人間が地面から出てきた。時雨の移動の反動に耐えられなかったのか百足が壊したのか分からないが塔が完全に壊れた。周りからは困惑の声が出る。
「オヒサシブリ〜有栖〜」
百足は笑いながら言う。百足はあの時と同じ服であった。まるであの時の百足をそのまま連れてきたみたいである。
「オホホホ時間ガナッシングストゥッドゥ」
百足はたどたどしく言う。翡翠は笑いながら百足に駆け寄る。百足の視線の先には警備員達がいた。
「アランドラーンジョアぐーるどすたっと」
百足がそう言い、スタジアムに手を置く。するとスタジアムに亀裂が入り崩壊する。警備員達はバランスを崩してしまい、魔法の詠唱が途中で止まる。
「有栖、またいつか会おうね!あはっあははははははははははははははははははははははははははははは」
翡翠は笑う。完全に目がイッちゃってた。上空からは梟が飛来し、二人を咥えて上空に飛んでいった。有栖は客席をただ見ていた?
「えはっえはえはえはえは翡翠ちゃんやられすぎー」
百足が梟の肚の中で言う。翡翠は顔をタオルで拭いていた。翡翠は少しだけ不機嫌な表情を浮かべていた。
「ごめんねーだって時雨は想定外だよー」
翡翠は言う、だが顔は笑っていなかった。翡翠はポケットの中の紅のペンダントを取り出してそれをまじまじと見つめる。
「アウトブレークは始まってる。ウフフあはっ、さ。
帰りましょうか」
翡翠はそう言う。百足は横たわって眠っていた。翡翠も目を閉じた。
春は目を覚ました。そこは自分の部屋であった。ここが何故自分の部屋か分かったのは理由がある。天井に小さな穴が開いてあるからだ。それは昔魔法が暴走して開けた穴だ。横には統が座っていた、顔は哀しげであった。
「春…すまんな…」
統は言った。私はこの人のこの顔が嫌いだ。世界中の不幸を寄せ集めそれを全てぶつけたような絶望した顔。私はこれが観たくなかった、だからいつも努力してきた。この人を絶望させないように。
新沢は有栖と一緒に居た。二人は何故か時雨の家でお茶を飲んでいた。
「有栖、俺強くなりてーわ」
新沢がいつもの調子で言う。顔は真剣そのものである。新沢は頭を下げた。
「え?いやいや、それはないっしょー」
有栖はいつもの調子で言う。顔もいつも通りの何考えてるか分からない顔だった。
「怖くて何もできなかったゴミが何か喋んなよ」
有栖はそう言った。有栖が殺気を放つ。新沢の全身が恐怖を感じ取った。全細胞が逃げろと警告を出す。だがここで逃げれば何もできない、そう何も…。
時雨は空を見上げていた。空は曇っていて今にも降り出しそうであった。時雨の眉がピクリと動く。
「ふむ…冷たい風よのぉ…もう冬か…」
時雨はしみじみ言う。そして魔法で椅子を創り座った。その目は雲の方に向いていた。
「津田」
玻璃川が冷たく言う。津田は座って本を読んでいた。玻璃川は本を取り上げるそして津田に顔を近づけて言った。津田は驚いた様子で思わず椅子から落ちる。玻璃川は続けた。
「百足の件についてなのだが、帝都が召集をかけた」
津田は立ち上がる、そして眼鏡をかけた。
「合格ですよ新沢さん」
有栖は笑って新沢に言った。新沢は弱々しく返事をした。そして小刻みに震えた。
「何もしませんよははは」
有栖はツボに入ったのか腹を抱えて笑っていた。新沢はまだ震えていた。空からは雪が降ってきていた。
「雪ですよ新沢さん」
有栖は言う。新沢は上を見上げる、雪であった。雪は静かに降りてきていた。それは溶けずに机の上に積った。
「この家もガタがきてるな」
時雨はそう言い魔法を詠唱する。天井は素早く埋まった。有栖は机の上の雪を見ていた。それは机の上の電灯に照らされてとても綺麗であった。
翡翠は作者が言うのもなんですが嫌いですw




