檻中華
天才VS天才の発端へ…
「凄え番狂わせだなこりゃ…」
豊がしみじみと言う。周りにも騒めきが走る。統と時雨はお互い喜び合っていた。とても昔殺しあったとは思えないほど仲睦まじく見えた。春は通路にいた。次の試合は第2試合であった。他の試合は見てなかった、興味が無いからだ。興味があるのは新沢と有栖の試合であった。だがその二人も相手を瞬殺し特に何もなかった。てか何であいつのこと気にしてんだろ、春はそう思った。
「お疲れ様〜春ちゃんだっけ〜」
前の通路から翡翠が歩いてくる。顔は前会った時と同様であり、手に何か持っていた。翡翠は口に不気味な笑みを浮かべている。春は少しだけ身構えた。だが、翡翠は凄い速度で春に近づき手に持っていたものを春の頭に付けた。それは触手の様なものであった。春がそれが何かを確認する間も無く頭に物凄い衝撃が走る。
「くふふふふ…有栖〜どう苦しめてやろうかな〜」
翡翠は笑いながら言った。春の意識は無くなった。
「第2回戦だぞ!第2試合は有栖秋と泡川翡翠だ!何でこんなに簡潔かって?うるせえ!お茶無くしたんだよ!」
豊が陽気な調子で言う。だがステージ上に上がった二人からは豊とは対照的に不穏な空気が流れている。
試合が始まるベルが鳴った。豊も同時に開始の合図を言った。その瞬間ステージに黒い塔ができ、外が見えなくなった。周りから困惑の声が聞こえる。だがすぐに聴こえなくなった。
「どうかな?有栖くーん」
翡翠がふざけた調子で言う。有栖は何も答えない。代わりに蔑んだ様な視線を向ける。
「無視しないでよー有栖くーん。君のそういうとこ栞ちゃんにそっくりだねー」
その言葉が有栖に届いた瞬間有栖は翡翠に何か投げた。それは小さなチップの様なものであった。
「わおっ!ばれてたー」
「そんなもので俺を殺せると思うな。ゴミ女」
有栖が花弁を創り翡翠に飛ばす。だが花弁は翡翠に近づいた瞬間切り刻まれる。
「うーん?この魔法栞ちゃんのじゃーん。え?え?いい歳してストーカー?しかも死者のじゃーんッ!」
翡翠は笑って言う。その瞬間下から植物が産まれ翡翠を呑み込んだ。だが3秒もしない間に植物を破壊し翡翠は外に出た。全身に植物の粘液や体液がついていた。
「自分がしていることを自分にされる御気分はどうです?」
有栖は笑って言う。翡翠は構わず有栖になにかを放った。その瞬間有栖は動けなくなる。有栖の口から弱々しい言葉が漏れる。
「最高の気分よ、落ちこぼれ君」
翡翠は鞭の様なものを創り有栖に振り下ろす–––––––
「有栖君、一緒に食べない?」
一人の女性が有栖に話しかける。有栖は少しの間言われたことが分からなかった。有栖は常に独りであった。区のレベルについて行けず成績は底辺、人と話すのも苦手で友達も居なかった。しかも虐められていた。そんな有栖にとって誰かと食事を摂るなど考えられないことであった。
「うん…いいけど…」
有栖は小さな声でそう言い、女性について行った。
「ねぇ名前は?」
女性は尋ねた。有栖は後ろからトボトボ歩いてきていた。そして言った。
「有栖秋です…」
有栖は弱々しく言った。まるで何かに怯えた小動物の様であった。
「かっこいい名前だね。私、栞。六鳥栞。ほれ、友好の印じゃ」
栞はそう言い、右手を出した。有栖は手をまじまじと見つめる。
「見たって何も出ないよ、ほれ」
栞はそう言って、強引に有栖の手を取って握手した。
有栖の心に何か暖かいものが流れた気がした。いや、流れた。
「あはっあはっあはっあはっあはっあはっあはははははははははははは」
翡翠は笑いながら、有栖に鞭を打ち続ける。鞭が打たれたところは赤く腫れ上がっていた。
「栞にもこのようなことをしたのか」
有栖は鞭に打たれながら言った。翡翠は恍惚とした表情を浮かべている。
「ええ、当然じゃない」
翡翠は言う。その瞬間下から植物の蔦が伸びる。翡翠はそれを切り刻む。だが翡翠は異変に気付いた。だがその異変の答えはすぐに出た。
「成る程、大体わかった」
有栖は後ろから言った。翡翠は舌打ちをして鞭を振るう。だが有栖はそれを避ける、そして詠唱した。
「桜花舞 開幕ノ舞 沙羅双樹枯らしの大陸風」
その瞬間物凄い強風が吹く、翡翠は吹き飛びそうになり慌てて体制を整える、また有栖が居ない。
「ふぅぅ〜やれやれですな〜糸魔法 マリオネット」
翡翠が詠唱すると、糸が現れ背後の有栖を攻撃する。
「桜花舞 起ノ舞 春狂桜」
有栖が詠唱した瞬間、強烈な耳鳴りが翡翠を襲った。
耳鳴りは何かの叫び声の様に聴こえとても恐ろしかった。創った糸も形を無くして行った。
「ああ?痛ってぇな、糞がぁ」
翡翠はそう呻き耳を抑えながらまた糸の攻撃をする。だが有栖はそれをするすると風に靡く木の葉の様に回避していく。
「栞の痛みはこんなもんじゃないぞゴミ女」
有栖はそう吐き捨て翡翠に蔦を伸ばす。だが
「あはっあははははこうすれば良かったんだ」
翡翠がそう言った瞬間地面に落ちた糸から電流が流れる。有栖は回避しようとするが動きがとても早くその電流は有栖に当たった。有栖は少し咳き込んで倒れこんでしまう–––––––––––––
あることに気づき栞は尋ねた。
「弁当とかないの?」
有栖はその言葉を聞いて少し目に涙が浮かんでいた。
「弁当盗られるんだ…いつも…」
有栖は小さな声で言った。栞はその言葉を聞くや否や有栖の口に何かを押し込んだ。それは、ほうれん草であった。そして言った。
「半分あげる」
栞は笑う、有栖も少しではあるが笑っていた。
「キメラか…」
有栖は言った。翡翠は頷いて言った。
「ええ、そうよ。わたしには生まれつき魔法が2つあるの。一つは糸、もう一つは雷」
翡翠は笑っていた。有栖は花弁を飛ばして攻撃する。だがその威力はとても弱く、翡翠に手で払いのけられてしまう。翡翠は口を開く––––––––––––
次の日有栖の前に先生と何人かの生徒が来た。その中には翡翠も含まれていた。顔はとても不機嫌そうであった。全員は有栖に頭を下げた。そして弁当や虐めに関することを謝罪した。そして全員帰って行った。
「良かったじゃん」
栞が言う、有栖の顔は少し明るかった。
「栞さんがしたの?」
有栖が小さな声で言う。栞は笑っていた。
「そんな優しいこと私が出来る訳ないじゃん」
栞は言った、それを聞いた有栖の心の良く分からないものが一つにまとまった。そして有栖も口を開く
「貴女のことが好きですーだっけ?」
翡翠は煽る様に言う。有栖は怒り、攻撃しようとするが電撃を流されまた動けなくなる。
「あははははがっつきすぎーそんなんじゃモテないゾ」
有栖にその言葉は届いていなかった。栞、君なら何をするのかな、有栖の中にはこれしかなかった。有栖の頭に走馬灯の様なものが流れた。だがそれらは全て栞のものであった––––––––––––
「こうするのよ」
栞は言った。栞の手には華が咲いていた。有栖もチャレンジするがなかなか上手くいかない。
「上手くできない…」
有栖は落胆した様子で言う。栞はそんな有栖の両手を包む様に握って言った。
「大丈夫…すぐできるよ…」
有栖の体温は一瞬で跳ね上がり、栞を直視出来なくなった。栞は隣でクスクス笑っていた。
「攻撃できないわよねぇだって」
翡翠はそう言い、巨大な繭の様なものを開ける。そこには春が入っていた。
「私の意識を奪えばアレが壊れるからねぇ」
翡翠は嫌味げに言う。表情はとても楽しそうであった。
数週間後
「栞!できたよ!」
有栖は笑って言う、そして栞に向かって走り出す。だがそれを見せることは出来なかった。何故なら翡翠がそれを踏み潰したからだ。
「あ〜ごめ〜ん。汚いから踏んじゃった」
翡翠は無表情で言う。口調も腹立たしいものであった。
「ふざけるなよ」
栞はそう言い翡翠に掴みかかった。見たことがないくらい怒っていた。翡翠は掴まれながらも言った。
「分かったよ、後で裏来い」
それ以来栞を見ることも虐められることも無かった。そうあの時まで…
教師に呼ばれ有栖は教師棟に行った。そこには5人の先生と一つの布があった。先生は校長、教頭、理科、社会、体育の教師であった。
校長が布を捲る
そこには
栞の死体が入っていた。服は下着しか着ておらず、全身に痣や切り傷があった。
有栖から力が抜ける、それを見て先生が有栖の肩を撫でる。有栖自身そう願いたかった、だが肩にはナイフが刺さっていた。有栖は叫び声を上げようとする、だが教師に口を塞がれさらに蹴られる。
「君が栞君を殺したという情報があってね…しかも君泡川家に逆らったらしいじゃないか…」
教師はそう言い、有栖をバットで殴る。それを合図に教師が暴行を有栖に加える。有栖は何に怒っていいか分からず、ただ空虚だった。だがそれもすぐに終わる。教師共は笑っていたのだ。有栖はその瞬間心の中の何かが外に出た。それは自在に畝り教師を攻撃する。
だが教師はそれを綺麗にいなす。そして有栖を殴って言った。
「お?お?手出しだな、はーい犯罪者確りましたー。追いだせー」
校長が言う。そして理科の教師が有栖の前に来て言う。
「小僧、力が欲しいか」
その声はいままで聞いたことのないような口調だった。校長が怪訝そうな表情を向けて近づく、理科の教師は校長に手を翳す、すると校長の手がありえない方向に曲がる。校長が叫び声を上げる。
「お前よくも!」
教頭が叫び理科の教師に火を浴びせる。だがそこから出てきたのは–––––––––––––
崩災寺時雨であった。
「小僧、もう一度問う。力が欲しいか」
時雨は言う。有栖には何も無かった、恐らくこのまま翡翠に向かって行っても栞の二の舞だろう…だから…
栞ちょっと寄り道するけど赦してくれ。
「欲しいです」
有栖は言った。時雨は少し笑って有栖を掴み、ワープホールのようなところに入れた。
「有栖!有栖!」
栞の声が聞こえる。有栖は少し嬉しかった、それと同時に少し哀しかった。
「栞、僕は…」
有栖は言う。栞の向こうには花畑が広がっていた。それはとても美しかった。
「時間が無いから簡潔に言うね貴方は今死にかけてるの。春ちゃんは貴方の助けを待ってる」
栞は矢継ぎ早に言う。よく見ると栞の身体が薄くなっている。しかもどんどん薄くなっている。まるで一昔前の心霊映像の幽霊の様であった。
「だから助けてあげて」
栞は笑って言った。そして完全に消えてしまった。
「”あの魔法”を使いなさい。それが答えよ」
彼女の声が聞こえた気がした。
「んじゃそろそろ」
翡翠はそう言い、雷撃を有栖に放つ。傷は全て完治していて試合開始直前の状態になっていた。
「骨魔法[ 栞、僕は君の様に ]」
有栖は呟く。その瞬間有栖は動き出し雷撃を回避した。
「は?なんで動けるの?脊髄の働きを一時的とはいえ止めたんだよ?」
翡翠が困惑した表情と口調で言う。だがその声には誰にも届かずに何処かへ消えていった。
「武者の残滓[ 命を賭して ]」
「発動![ 誰かを護りたい ]」
二本針怜です。いやー寒いのか暑いのか分かりませんねぇ〜
リアルの予定が忙しくなってきたので更新遅くなるかもというか遅くなります。