出会い
にゃにーにーにーうーッにゃーーにーにーにゃッんにゃッにーにーにーにゃーにゃーに
二本針怜です。新しい連載です
現代2210年に於いて科学というものは、機能しなくなった。魔法というモノが生まれたからだ。例えば火が使いたければ、魔法で火を創ればいいし、水が飲みたければ、創りだすことができる。あまりにも簡単だった。
鏡崎春は電車の中にいた。魔法が使えない訳ではない。その気になれば学校へ飛んで行くことも出来る。だがしない、何故なら面倒臭いからだ。ふと空を見上げる。空にはたくさんの点があった。何も変わらないと彼女はこの時思っていた。そして何も無く、電車を降りて学校に向かう。だが彼女は目撃した、非日常を。
四人の人間によって一人の男が暴行を受けていた。
「何やってるんですか?」
彼女は急いでそこに駆け寄り、問い掛ける。
「何だよ、何か用か」
一人が不機嫌そうに言う。
「何って貴方たちがやっていることは人として恥ずかしい行為なのよ」
春は強い口調で言った。
「は?こいつが俺に失礼なことやったんだよ」
不良の一人は返す。何故かその取り巻き達は口に笑みを浮かべている。
「何が可笑しいの?」
春は問う。だが、返ってきたのは強烈な気だるさだった。
「え…」
春の口から弱々しい声が漏れる。立っていられない、思わず膝をついてしまう。
「ゲェッ…結構強めなんだけどな…膝つくだけかよ」
不良の取り巻きの一人が言う。
「でかしたぞ、斉!」
不良のリーダーの様な奴が嬉しそうに言う。
「んじゃ袋被せますかね」
斉と呼ばれている男が言う。マズイ…彼女は思った。どんどん気だるさが増してくる。このままでは意識が保てなくなる。春はついに地面に倒れこんでしまう。
「あんた、望月学園の生徒なの?」
後ろから男の声がする。
「えぇ…そうよ…」
彼女は力を振り絞って答えた。
「あ、そ、んじゃ後で頼みたいことあるから」
男は呑気に答える。そして彼女と倒れこんでいる男を見て、大体の事情を察したらしく臨戦体制になった。
「えい、”女神の怠惰”」
斉は男に手をかざして言う。だが男は特に何の反応も見せずに斉の顔を思い切り殴り飛ばした。
「斉!大丈夫か!お前よくも!」
不良が怒って言う。そしてその不良は男に殴りかかる…。春の意識はそこで途絶えた。
彼女は目を覚ました。見慣れた天井が見える。そう、望月学園の天井だ。
「気がついたかね、鏡ガール」
横の男がまるでミュージカルの劇団員の様に言う。
「松前先生、ありがとうございます」
春は一礼する。松前諭、保健室の先生だ。先生をする前はミュージカルの劇団員をしていたと聞いている。
誰が言ったか忘れたが、松前先生が魔力込みで本気で声を出せば、日本の何処にいても彼の声が聞こえるらしい。その大きな声と230センチの巨大な身長のためなのか、彼が赴任してから11年間校外学習、修学旅行等で迷子の生徒は0らしい。
「礼ならそこで寝ているボーイに言ってくれ給え」
松前先生は踊りながら春に言った。春はふと横の布団を見る。さっきの男が寝ていた。そして何の因果か不良たちも一緒に寝ていた。春は不良たちを睨みつけた。
「鏡ガール、彼らを怨むのは止して欲しい、彼らも被害者なのだから」
松前先生は真剣な表情を浮かべて春に言った。松前先生は続けた。
「近頃、このあたりで暴行や殺人事件が起こっているのは知っているね」
松前先生は言った。
「はい、その場で確保された全員が無罪を主張しているあの事件のことですね」
春は答えた。
「うむ、そうだ残念なことに彼がには記憶が無い昨日全員に禁魔法を執行したらしいが…何も得られなかったらしい」
松前先生は悲しそうに語る。
「でも被害者の方々は…」
春はそう言いかけたが、松前先生の表情を見て察した。
「眠ーい、おはよー」
男が目覚めた。
「おはよう新沢ボーイ」
松前先生は明るく答えた。
「紹介するね…彼は新沢秀、君を救ってくれたこの学園の生徒だよ」
松前先生が新沢と呼ばれている男を紹介する。
「はい、どーも新沢です。高等部1年C組です。よろしくね鏡がーる」
新沢が少し馬鹿にして言う。そして彼女はある事に気づいた、同じクラスだ。
「よろしくねわたしは鏡崎春クラスは貴方と同じよ」
春は少し怒って言う。彼は彼女に何か投げた。それは餅だった。
「それ食え、友好の印だ」
新沢は言う。春は震えていた。
「そんなに嬉しいのか?」
新沢は嬉しそうに聞く。春は顔にへばりついた餅を剥がして新沢に言い放った。
「ふざげんな!ぶっ殺すぞ!」
新沢は春を見て笑っている。
「やってみろや、病み上がり野郎」
新沢は笑いながら言った。
「ほっほっほ、子供は元気が一番!」
松前先生は微笑んでいる。二人は大量にある餅を投げ合っている。二人の顔や服に餅がどんどんへばりついていく。だが保健室は少しも汚れていない。
そして彼女は最後の二つの餅を投げた。一つは新沢の顔に当たった。
「先生〜ってうわっ!」
呑気に一人の生徒が入ってきた、もう一つの餅はその生徒に当たった。しかも顔に。
「大丈夫かい?有栖ボーイ!」
松前先生が男に尋ねる。
「大丈夫ですぅ…先…生…」
生徒が答えた、だが彼は泣いていた。
春は冷静になった。そして新沢に言った。
「ほらやらかした〜」
「お前やろがアホ」
新沢が返す。
「大丈…って有栖先輩!何やってるんですか!」
彼女はその男の正体に気づいた。有栖秋、この学園の中でトップクラスの実力をもつ魔法使いだ。今の1位とほぼ互角の実力であるらしい。だが学校に行くのが面倒臭いらしくあまり登校しないらしいが。
「何をしているのだ君は…ってなんで泣いてるの」
後ろから声がする。そうこの男が現1位、玻璃川直人。有栖と同じで、彼もあまり登校しない。もっとも彼は国の軍隊に入隊したらしいが。
「いや…だってぇ…保健室入ったら…顔に餅投げられたんだよぉ」
有栖は泣きながら言う。そして春に抱き付いて言った。
「うわーん春ちゃーんヒグッ慰めてよ〜死んじゃうよ〜」
「先輩セクハラですか」
春は冷たく言った。そして有栖をベッドに座らせて言った。
「ね?後で謝りますから、ね?泣かないで。ね?」
春は優しく言う。有栖は泣き止んで座ったまま眠った。
「ヒグッ…お前…いい奴だなぁッ…ヒグッ…」
何故か新沢も泣いている。そして泣きながら言った。
何なのこいつ、彼女は思った。
そして玻璃川直人は思った。あれ?僕空気…。
そう思った時、横の不良が目覚めた。
「ここは…」
不良は弱々しく言った。そして不良は起きたと同時に春と新沢の方を向いて頭を下げて謝罪した。
「すいませんでした!」
「うんうん、金崎ボーイ、謝ることはいいことだよ」
松前先生は優しく言った。
「うん、操られてたんならしかたねーよ」
新沢は言った。
「ボーイ、ガールそろそろご飯の時間だよ。」
机の上には料理が置いてあった。待ってましたとばかりに、新沢は椅子に座った。他の面々はそれぞれ弁当を出して食べ始めた。有栖は顔についていた餅を食べていた。春は弁当を出そうとする、が弁当が無かった。それどころか、包みも無く、いつも使っている箸も無かった。ふと新沢の方を見る。男とは思えない可愛い弁当箱を使っている、ん?待てよ、あの弁当箱は…
「ちょっとそれ貴方の弁当箱?」
春は強めの口調で言った。
「駅で助けたときに落ちてたからちょっとしっけ…」
春は疲れて殴る気にもなれなかったので。仕方なく新沢が食べるのをひたすら妨害した。
「それでは、本題に入っていいですか?先生」
有栖が真面目な表情になって言う。
「いいよ、有栖ボーイ」
松前先生も同じように真面目になって返す。
「では金崎健介お前に質問するよ、犯人の顔見たでしょ、どんな奴?」
有栖は金崎に言った。
「俺も覚えていないんだ。ゲーセン行って帰ってきてたら後ろから突然そのペンダントをつけられて…」
金崎は静かに言って、机の上のペンダントを指差す。
紅い水晶が繋がっている綺麗なペンダントだった。
「そう…それじゃ帰りたまえ」
有栖は言った。
「分かった、本当にすまなかった!」
金崎は再び謝りドアを開けて帰って行った。そしてドアを突き破って帰ってきた、保健室に。金崎は強く頭を打ち付けたらしくぴくりとも動いていなかった。頭は出血して真っ赤になっていた。
前から一人の男が歩いてくる。その男はあの紅いペンダントをしていた。手には黒い槍の様な物が握られていた。
「玻璃さ…いないじゃん!」
有栖が呑気に言う。が表情は真剣だった。
「ボーイ達!ここは下がって!」
松前先生が前に出る。春と新沢も異変に気付き臨戦体制をとる。が、後ろから魔法詠唱の声が聞こえた。
それが耳に届いたとき、春と新沢は保健室から消された。有栖も同じように消える…が最後の悪足掻きと言わんばかりに移動させた張本人の包帯の魔法使いに向かってフォークを投げつける。フォークは綺麗な放物線を描き、魔法使いの腕に当たる。その瞬間春たちは戻ってきた。
「?何故!」
包帯男は問う。その瞬間新沢が彼にパンチを放つ、包帯男はそれを躱す。が、躱した先には春の拳があった。春の拳は包帯男の顎にクリーンヒットし、包帯男は動かなくなった。
「片付いた様だな」
松前は槍を持った魔法使いに言う。
「こちらもだな、魔法発動”酸槍”」
彼が言うと。槍から白い煙が出てくる様になった。煙にあたった学校の柱はどんどん融けている。そして魔法使いはその槍を松前先生に投げた。
だが松前先生は息を吸っている。そして次の瞬間
「波ッ!」
溜めた息を全て使い、声を出した。その瞬間保健室の周りの空間に亀裂が入っていく。槍も声に耐えきれなくなったのか亀裂が入り、崩れ去ってしまった。
「面倒なことになった」
魔法使いは耳を抑えながらそう言い、松前先生のグーパンチを腹にくらって消え去った。
「防御魔法解除。声出すときは言ってくださいよ先生」
有栖が呑気に言う。だが松前は何も答えない。
「あの小僧…やりおる…」
松前は腹を抑えて言う。抑えている手からは血がどくどくと流れている。春は急いで松前に治癒魔法を使った。だが傷口が塞がらない。
「なんでッ…なんで…」
春は泣きながら言う。
「ありがとう春ガール、後は…ぬんッ!」
松前が力を入れると傷口がみるみる塞がっていった。
「おっさん!大丈夫か!」
新沢が駆け寄る。手には何かチューブの様なものを持っている。
「ありがとう新沢ボーイ、これで大丈夫だ」
松前はチューブを傷口に当て力を再び入れた。チューブからは血に混じって、黒い何かが出てくる。
「皆にはお礼をしないとね」
松前は笑って言った。
「どうやって…俺の…魔法を解いた…俺はお前らをブラジルに転送したんだぞ…」
包帯男が有栖に問いかける。
「どうやってって…僕もあんたと同じ魔法を唱えたんです。ブラジルに転送される途中でね。それで転送先の目印にするために、フォークを投げました。あと貴方を倒せるように一時的に春ちゃんの魔力を隠しましたが。あ、ちゃんと春ちゃんと新沢君の体がバラバラにならない様に防御魔法もかけときました。急に日常的じゃないこと起こったらそれ覚えるでしょそれだけだよ」
有栖は当たり前の様に言う。
「そんなことが…言っておくがその魔法はこの俺が3年かけてやっと使えるようになったんだぞ…このチート…野郎が…」
包帯男はそう言い残し動かなくなった。
読んでいただきありがとうございます!どーも、前書きで壮大に猫化していた二本針怜です。この作品は僕が昔から暖めていた作品です。
誰かの暇つぶしになってくれると嬉しい。
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