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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第90話 帰還

ノブサダ「シナモンたくさんあるんで持っていってください」

ジェリンド「9本でいい」

流石ナイト、謙虚だ。


こんなやり取りが、ないない。

『蛮勇の巨人』の面々を見送った後、俺たちは周辺にいるであろうシナモンキーなどの間引きを始めた。

 ダンジョンの中で中々倒されない魔物は時としてクラスチェンジまで至ることがある。シナモンキーはその中でも冒険者から武器防具を奪いそれを加速的に進めそうだと思い至ったからだ。一度倒してしまえば次にポップするものは裸のまま出てくるだろう。まあ、なんだかんだ理由を並べたがシナモンキーのあの顔が気に食わないわけで。どうせレベルを上げる為に倒すならイラつくやつらを蹂躙したほうが精神衛生上良いのである。よろしい、ならば殲滅だ。


 キイイイイ


 ウキャアアア


 はーっはっはっはっは。お猿は焼却だー。

 ある程度の範囲をストーンウォールで囲いフツノさんと二人で合成魔法を使い木々もまとめて焼き払っていく。追い立てられたシナモンキーをミタマとわかもとサンが蜂の巣にしていった。万が一接近されたときに備え待機していたカグラさんは手持ち無沙汰のようだ。


「妾も遠隔攻撃か魔法を学ぶべきじゃろうか」


「……やってみることが大事。私も魔法練習してみよう。ノブと姉さん楽しそうだし」


 当初は装備品などもあるし一匹一匹殺っていたのだが手入れをするわけでもないのでボロボロになっておりとても使えたもんじゃないと殲滅戦に移行したのだった。自然破壊? いやいや、沼での実験結果でフィールドの木々なども魔物のようにポップすることが分かっていたから大丈夫なのだ。


 てってれ~♪ 称号『滅猿』を獲得しました。


 称号『滅猿』

 猿を虐殺する者に与えられる称号。滲み出る威圧感により野猿系の魔物の動きを阻害する。


 シナモンキーやケイヴコングなど数えるのも忘れたくらい猿を殲滅した頃、こんな称号を手に入れた。どれだけ野猿系の魔物がいるか分からないが知恵があり動きの素早いこいつらを相手取るには使い勝手のいい称号である。





 拠点を切り替えながら密林の中を突き進む。

 俺達が一番苦労したのはやはり2cmほどのDグリーンヒルだった。名前にあるとおり緑色の体色で木の葉に擬態しており気付けばHPが減っているという事態に陥っていたのである。ドライをかけてやれば瞬時に倒せるのだがいつのまにかくっつかれているので皆嫌気がさしていた。後半はもう周囲に人気が無い時は雷撃を放ちつつ進んだくらいだもの。


「おいおい、若ぇの。いくらカリカリしていても八つ当たりしちゃあいけないぜぇ。こんな小さなヒルだって……おおう? 何やら目の前が真っ暗にぃ……」


 のあああ、吸われてる吸われてる。わかもとサンにびっしりDグリーンヒルがくっ付いてやがる。慌てて引き剥がし濃魔力水を吸わせることでことなきを得た。


「ふううう、すまねぇな若ぇの。ちょいと意識が飛んでいたようだ。白昼堂々夢を見るたぁ俺っちも耄碌したかねぇ。夢の中で俺っちは両手に武器を持ち化物どもへ速やかなるトドメを……」


 おっとぉ、わかもとサンそこまでです。あなたは生まれてまだ半月もたってないのだから耄碌もくそもないのですよ。いいですネ、ワカリマシタカ? よろしい。アイテムを落とす魔物だけが良い魔物です。おーけー?




 そんな中、いい事が2度ほど。宝箱を発見したのだ。

 だが油断めさるな。俺とミタマの開錠技術はレベル1。念のためフルプロテクションをかけ宝箱の横から開錠に挑戦する。正面だと飛矢とか火炎弾が怖いからね。

 苦戦すること30分くらいずつ。見事開錠に成功する。そしてミタマは開錠スキルが上昇したようだ。これは嬉しい。中に入っていたのは両方とも小さな指輪。はてさてどんな効果があるのやら。

 ささ、識別先生のご出陣でござる。


 身代わりの指輪

 品質:並 封入魔力:3/3

 一定量のダメージを肩代わりしてくれる効果が封じ込められた指輪。限界値を超えると指輪は砕け散る。


 呪詛返しの指輪

 品質:良 封入魔力:6/6

 身につけた者に呪いが降りかかった場合、それを防ぎ一定確率で術者へ返す。


 思った以上にいいものかもしれない。こいつはキープですな。



 そんな感じでやっとこさ9Fへ続く階段まで辿り着いたわけです。今までで一番ストレス溜まったわ。

 次は流砂洞だし慎重に行こうと皆で話し合いながら階段へ向かうとなにやら話し声が聞こえる。どうやら他のパーティが9Fから上がってきたらしい。その数6人。リーダー格らしい男と3人の女性奴隷。取り巻きみたいな男が二人か。

 念のため用心しながら会釈をするとあちらから話しかけてきた。


「9Fへ行くのは今はやめておいたほうがいいぞ」


 リーダー格の男がそう言い放つ。

 ふむ? なんかあるのか?


「そうなんですか? 俺たちは9Fへ行くのは初めてなんですがなにかあったので??」


「ああ、そうだと思ったよ。9Fの流砂洞にはちょいとやっかいな時期があってな。ギルド内では『乱流砂』って呼んでいるものだ。通常一定方向にしか流れていない砂の流れが変化してどこに行き着くか見当もつかない。さらに砂の勢いも段違いだ。こいつが収まるのに1~2週間はかかるだろう。命あってのものだねだから今行くのはやめておいたほうがいいってことさ」


 なるほど。そんなのがあるのか。それにしても1~2週間の足止めは痛いな。だけどこの人の言うとおり無理して皆を危険に晒すわけにもいかない。


「なるほど、そんなのがあるんですか。貴重な情報ありがとうございます。何かお礼を……」


「そうか! それじゃ多めにあるなら飲み水を分けてくれないか。俺達も乱流砂に危うく巻き込まれかけてな。運悪く水袋を落としちまったんだ」


 食いつきが早いな、おい。その為に情報を開示したのか。それでも助かったことにはかわりないし水くらいなんぼでも出せるからな。


「なにか容器はありますか? 魔法で出しますよ」


「助かる! 連戦のツケがたたって魔力もやばかったんだ」


 折角なので水を出しつつ根掘り葉掘り聞いてみた。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥であるからね。

 容器に並々と注がれる水に息継ぎするのを忘れて飲み干す一同。よっぽど喉渇いてたんだね。


 一息ついたところで話し始めるとどうやら彼らはC級の冒険者パーティであるらしい。依頼でアイアンアントの変異種スチールアントを狩りに来ていたのだが流砂洞内部にて微震を観測。長年の経験則からやばいと判断したリーダー格が慌てて反転し一目散に駆け上がってきたようだ。砂に飲まれてしまえば方向感覚もなくなり一気に遭難の可能性が上昇するそうである。

 そしてなぜかアント系の敵の目が赤く光り凶暴化することも特筆すべき点だろう。こうなったアントは手足が千切れようが目に付いたものを攻撃するようになるそうだ。なんてバーサー○ーシステムよ。そんなわけでギルドのほうでも乱流砂の時には流砂洞へ踏み込まないよう勧告するらしい。ちなみにもし中に取り残された場合は簡易観測拠点『ブーンブーン』を目指すといいと教わった。ギルド職員と護衛が常駐しており生き抜く可能性が上がるだろうとのこと。


 うむ、いい事を教わった。


「乱流砂は俺の経験だと何ヶ月かに一回あるかないかってところだ。ま、入る前に気付けたってことは運がいいってことさ」


 お礼に燻製なども分けてあげるとすごく感謝された。やはり食糧事情も芳しくなかったか。どうやら8Fへ来てから狩りをしつつ戻るつもりだったらしい。


 彼らと別れた後、どうするか家族会議を開く。結果、一度見るだけ見に行ってそのまま引き返してこようということになった。


 階段を下るとそこは……石狩川やユーコン川もびっくりの砂の流れ。速いよ! これ絶対ファイト一発なCM級の急流だよ!


 よし、帰ろう。

 もちろん誰も反対しなかった。



 今回は時間のほとんどを8Fで使うことになってしまったな。その分、様々なドロップアイテムが入手できたから利益は十分にある。エンゲル係数高いから食材はほとんど自家消費だけどな! とりあえず帰ったら精算を済ませて乱流砂が収まるのを待つか。ダンジョン外の依頼を受けるのもいいだろうしまた潜って素材を集めながら経験を積むのもありだな。



 ・此度の拾得物

 赤の魂石(小型の魔物)×79

 橙の魂石(ケイブコング、シナモンキー)×46

 シナモン×20袋

 ペッパー×17袋

 肉類(全て自家消費に回すことに)

 果物類(マンゴー、パパイア、バナナなど南国系のもの多数。ただし、全部自家消費)

 ミスリルソード(シナモンキー所持、ただしボロボロ)×1本

 宝箱から指輪2種(これは自分達でキープ)

 トレントの原木(焼却していたらいつの間にか落ちていた)×8本

 極彩色の羽(これもいつの間にか落ちていた)×3枚

 イノシシの肝×6

 プロテイン×7袋

 ガラナ×4袋

 菜種油×石バケツ(大)9個分

 砂糖×石バケツ(小)12個分

 蜂蜜×石バケツ(小)7個分



 買取金額が分からないのが多すぎる。


 特にコレ。


 極彩色の羽

 品質:良 封入魔力:16/16

 普段は地味な鳥だが年に一度だけ華々しいほどの彩を身にまとう妖鳥『コウハクサチコバ』の羽。



 先達てよりも金額的には少ないと思うがかなりの量の食材を確保できたから我が家の食糧事情は潤った。なんせ食べ盛りの子供が増えたし師匠もよくくるので我が家のエンゲル係数の上昇率は止まることをしらないのである。


 なんにせよ思わぬ人助けやら突発的なイベントが多い遠征だったね、今回は。


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