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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第86話 従業員教育しました。

でも本日二話目なんでござる。ついつい書き上げて寝不足。ではおやすみなしあ。

 あれから三連娘を屋敷へと連れ帰り皆へ紹介した。


 ガーナはティノちゃんにやたらと懐かれて少し困惑気味だったがやっぱりツンデレを発揮していた。デレ率は高めのようである。

 オルテアはカグラさんの姿を見てあねさんと呼び始めた。たしかに肌色などは違えども角もってるからねえ。戦闘種族らしく拳で語り合うことしばし完璧に憧れの目で見ておるわい。あ、俺も一緒に参加したけど似たようににいさんって呼ばれ懐かれたよ。鍛えてて良かった、ちょっと嬉しい。

 マーシュはマイペースなところがセフィさんと被っているせいか二人馴染むのが早かった。でもいいか? 二人とも仕事のときはしっかりしてね。


 セフィさんに変化の使い方を三連娘に教えてねって言ったらいつから気付いてたのって驚かれていたっけ。最初からって言ったらなぜか押し倒された。時間は1時間ほど暗転する。あのスキルとってからブツの早期回復と連続使用が可能になったので最後に立っていたのは俺だけども。


 元々、異種族で構成されていたうちの面々なので比較的馴染むのが早かったかな。エレノアさんが当初顔を引きつらせたように見えたけれどもあれは魔族に連なるものと会ったからなのかそれとも俺が三連娘を買ったことに関してなのかは不明。それでもオルテアなんかと拳で語り彼女もあねさんの地位を獲得していた。悪い気はしないらしい。


 そして今は新人教育中である。


「はい、諸君。それではこれからうちでの作業工程を説明するよ」


 俺の目の前には現場責任者としてディリットさん、作業員としてティノちゃんと三連娘が畏まっている。

 ホワイトボードなんてないのでストーンウォールで作った石版に木炭でがりがりと書き記した。幸い『獣人演義』で読み書きは教育されていたのでやりやすい。やるなキリシュナさん。


 作業工程っていっても完全に単純な作業なんだけれどもね。

 1:製品の種類ごとに器を仕分けます。

 2:俺とセフィさんが予め作成しておいた製品を種類ごとの柄杓と漏斗を使い容器に流し込みます。

 3:容器についたものがないか確かめ、あれば拭き取り蓋をします。

 4:それを延々と繰り替えすのです。


 容器は種類ごとにサイズと形を分けてある。柄杓も種類ごとに一杯で一つ分になるよう作ってあるので分かりやすいはずだ。慣れるまでとどれだけ売れるか分からないのではじめは限定生産ということになっている。最初はそこまで忙しくないはずなので合間に三連娘とティノちゃんへ四則演算や自衛技術も教えていくつもりだ。


「むー、ノブにいさん。これあたしに向いてないけどやらなきゃだめ?」


 早速、実践しようとなったのだが悪戦苦闘するオルテアが泣き言を言い始める。早い、早いよ。


「オルテア、泣き言を言うのがはやくてよ。わたくしたちができる女だとご主人様に見せ付けておやりなさい」


「くかーーー」


 なんだかんだでガーナが三連娘をまとめている。本人はせっせと詰め込み作業をこなし他の娘を気にする余裕もあるようだ。マーシュは……寝ながら手先だけはしっかり動いているだと!? 器用といっていいのかなんなのか。


 ディリットさんやティノちゃんなど魔族と括られる三連娘に抵抗感があるじゃないかと思っていたが表面上は問題ないようだ。内心どうかは分からないけれども大丈夫だと思いたい。どうしてもってなった場合は……うん、三連娘を取るしかないな。ディリットさん達が望むなら故郷まで送ってもいい。この娘達には他に行き場がないから俺が全責任を持つ、これは譲れん。そうならないことを祈るけれどもね。




 それから全員揃ったところでお食事会。見たこともない料理に三連娘も飛びつくように貪っていた。こらこら欠食児童じゃないんだから落ち着いて食べなさい。食べかすだらけのオルテアの口の周りを拭いてやったりゆっくり食べるものだから横からおかずを掻っ攫われて涙目になっていたマーシュに追加で渡してあげたりとやっていることは給仕か子守だな。ここでもガーナは落ち着いてお姉さんらしく振舞っている。手の掛からない子だなと思っているがなんか違和感も感じる。いや、なにとは言えないくらい僅かなもんなんだけどもな。


 三連娘はディリットさん達と同様に離れの寮で寝起きをしてもらう。新人研修をしている間にフツノさんたちにシーツや着替えなどを購入してきてもらった。こちらの真新しい服やシーツに目を輝かせていたっけ。今は床に寝具を敷いて寝てもらっているがそのうち二段ベットでも作ろうか。そんなに広いわけでもないしね。







 草木も眠るド深夜。急にもよおしたのでむくりと起きる。

 やれやれ電気があるわけでもないのでやはり暗いな。ライトの魔法を使って光球を作り出し進行方向へと進ませる。個人的な感想だがやはり洋館は苦手なんだよなあ。なので必死に日本建築家屋の構造を思い出している。俺の父が建築士だったので図面や現場を何度も見ているからそこから記憶を引き出す。いつか俺の城たる一戸建てを作ろうなんて計画だ。もし街を作ったら城でも作ろうかね、風雲ノブサダ城とか。トラップで龍神池とかもいいな。石から落ちたら龍に食べられてしまうのだ。


 ……しくしく、ぐすん、ひっく……


 そんなことを考えつつことを済ませた帰り道。なにやらすすり泣く声が聞こえてくる。この世界で出るっていうと本当にゴーストなんだから困る。いやいや、今まででなかったし何事だ?


 丁度倉庫のあたりか。なにか怪しいものでも入れたっけかな?


 ギイッ


 扉を開けるとそこには小さな影が見える。いや、中にいたのは……ガーナか?

 膝を抱えて一人ぽつんと座って泣いている。ヴァンピーラだけに瞳が赤く輝いているが。


「ごしゅ……じんさまですか?」


「ああ、どうした? こんな夜中に。なにか怖いことでもあったか?」


 ガーナに並ぶようにぽすんと座るとそう訊ねる。「え……あ……」と言いづらそうにしていたがやがて落ち着いたのかぽつりと洩らした。


「ご主人様は……わたくしたちを捨てませんか?」


 それを言ったときのガーナの表情は悲壮なものだった。


「わたくしたちは物心ついたときからあの商館にいましたわ。親の顔は覚えてもいません。ただ血まみれでわたくしを抱きかかえる人の温もりだけをかすかに覚えています。それまではかあさ、い、いえ、キリシュナ様のもと奴隷のみんなの雑多なお世話をしながら過ごしていました。そして幾人も売られていく様も見てきました。中には幸せですと手紙をくれる者もいましたがほとんどはどうなったかすら分かりません。次はオルタナか、マーシュか、それともわたくしかと怖くて眠れないことはよくありましたわ」


 そこまで一気に話してふうと息を吐く。


「そして遂にわたくしが呼ばれました。呼ばれてすぐには恐怖しかありませんでした。すぐに二人の名前も呼ばれたことで少し薄らいだけれどもどんな方の元へと送られるのか震えが止まりませんでしたの。そしたらこんな風に暖かく迎えてもらって……でも嬉しいのだけれどもこれは夢なんじゃないかって。気付いたら……また檻の中で怖い大人が何人も見下ろしてくるじゃないかって。そう思ったら涙が止まらなくて……」


 これは完全な俺の失策だ。ガーナは手の掛からないいい子だと思っていた。でもどんなに背伸びしても幼い女の子なのだ。それが売られ知らないものばかりのところへ来たのだからその心情推して知るべきだっただろう。

 ガーナの頭の上にぽんと手を置くとガーナの体がびくりと跳ねた。ゆっくりと頭を撫でながら怯えさせないよう優しく声をかける。


「ガーナ。君も他の二人もうちに来たからには家族だと思っている。今はまだ外とかに出すわけにはいかないけれども姿を変え身を守れるようになればそのうちキリシュナさんのところにも連れて行くって約束する。キリシュナさんは君たちを預けられると信用して俺に託してくれたと思っているからね。いずれは奴隷からだって解放しようと思ってもいたし。だから心配しなくていい。君たちはここにいていいんだよ」


 俺が話すうちにいつのまにかまた目じりに涙を浮かべていた。でもさっきまでの悲しい涙じゃないと思う。


「……あ……い……」


 小さく搾り出すような声でそう頷くと俺に顔を埋めて泣いていた。そんな彼女が落ち着くまで頭を撫でながら抱きしめてやる。


 やがて泣き疲れてしまったのかガーナはそのまま寝こけてしまった。起こさぬようそっと抱きかかえながら離れの寮へと連れて行く。頑張れ『隠遁』! みんなを起こさぬように抜き足差し足忍び足だ!!


 よしよし、二人ともしっかりと寝ているな。となりにガーナを降ろしてシーツをかけてやる。






 そーっと部屋から出たところで……なぜかディリットさんに見付かりあらぬ疑いをかけられお説教を受けるのは余談である。見た目は15歳くらいなのでロリコン扱いではないがお盛ん過ぎるとね。誤解が解けたときはディリットさんも申し訳なさそうに謝ってきたけれどもさ。

 ただ、これって本館にいるとき激しくしすぎて音や声が聞こえちゃっているせいじゃないかと不安になってきた。今度、防音か消音の魔法を開発しておこうと心に誓ったのである。


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