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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第84話 何でも屋ドルヌコ 後編

本日2話目でござる。

 そして後日。

 俺は『猫の目』を訪れていた。本当はミタマ達も連れてこようと思っていたのだがとある都合から一人で来る事にしたのだ。


『猫の目』店内はそこそこの賑わいを見せていた。所狭しと並べられた商品を冒険者や近所の奥様方が眺めている。所狭しといっても見やすく整然と並べられており対応をしてくれる店員も明るく好感が持てるな。さてドルヌコさんは……どうやら店内にはいないようだ。店員さんに確認とって貰おうかね。


 店員さんによると奥の作業室にて職人さんの作業を確認しているとのこと。確認をとってもらったのでそのまま奥へ案内され職人さんも含めてのご対面となった。


「これはこれは、ノブサダさん。来ていただけたのですね。こちらは当店のお抱え職人でワタクシの友人でもあるネーネです。ネーネ、こちらの方があの弦を融通してくださった冒険者のノブサダさんだ」


「おお、あんたがアレを獲ってきてくれたのか。いやぁ、いいもんをありがとよ。わたしゃネーネ。弓など木工を主体とした職人さ」


「初めまして、ご紹介に預かりましたノブサダと言います。うちのパーティにも弓の使い手がいるので是非お会いしたかったのでドルヌコさんに無理を言ってしまいました」


「ああ、あたしの前でそんな堅苦しい言葉遣いはいいよ。ドルヌコだって構わないだろう?」


「まぁ、ワタクシは構わないというかこれが素ですからね」


「俺も堅苦しいですか? いつも大体こんな感じですからね」


「なんだい面白くない。まぁいいか。んで? あたしに会ってどんな御用だい?」


「そうですね。木工が主体というと穂先さえあれば槍や魔術師が使う杖の加工も可能でしょうか? それとここら辺やここのダンジョンで手にはいる物で弓やそういった物に加工する素材で一番いいものは何でしょうか?」


 ほうとなにやら感心したように俺の方を値踏みするように眺めるネーネさん。

 しばし思案したあとにいっと笑みを浮かべながら口を開く。


「そうだね。弓の弦は恐らく悪魔杓子の腱が最適だろうさね。槍の柄と弓の素材なら8Fに稀に出没するオールドトレントの落とす老叡樹の原木、杖ならば13Fに出るらしいエルダートレントの落とす老霊樹の原木だろうさ。最もエルダートレントがでるってのは眉唾ものの噂話だけれどもね」


「なるほどなるほど。参考になりました。もし素材が取れたら加工のお願いに来ます」


「あいよ。それにしても聞いていた噂よりも随分とお仲間を大切にしてるんだねえ」


 なんだ噂って?


「噂……ですか?」


「あら、知らないのかい? なんでも冒険者ギルドの綺麗どころをはべらかしてぶいぶい言わせてるとか受付嬢を口説き落とすのを趣味にしているとか女好きをこじらせてエルフの親子を囲っているとか色々あるねえ。『色魔』とか『獣欲』のノブサダと言われてるんだよね?」


 なんだその下半身に直結してそうな二つ名は!? 酷くない!? あながち間違っていないところに悪意を感じる。

 でもそんな噂があったのか……。信じたくないけれどそっとドルヌコさんを見ればちょっと目を伏せがちに小さく頷かれた。


「その、申し上げ難いのですがワタクシも聞いたことがあります。失礼かと思いましたが取引をする相手のことを調べるのは商人にとっては極当たり前の行為。調べた結果をふまえ直接会った今となっては悪意ある噂話でしかないと思っております」


 まあ、調べるのは当然だわな。俺も実際ここのことは色々と聞き込んで情報を集めたしね。むしろそれくらい慎重なほうが信用できる。


「すいません、初耳だったので動揺してしまいました。俺以外女性のパーティですからそう思われても仕方ないかもしれません。皆大事な人ですから」


「そうですか。羨ましいですなあ。ワタクシは一度結婚で失敗しておりますからもう懲りてしまいました」


 なんでも元々は王都で商売をしていたそうなんだが妻が店の従業員と不倫。あげくいつの間にやら店の権利書の名義も妻のものになっており着の身着のまま追い出されてしまったんだそうな。失意のどん底にいたドルヌコさんをネーネさんが励まし、もはや未練のない王都を出てここグラマダへと移り住んできた。


「それが1年ほど前。それから借金をしこの店舗を借りやっと軌道に乗り始めたところなんです。やはり持つべきものは友人ですな。ネーネがいなければ今頃は王都でのたれ死んでいたと思いますよ」


 んー、どっちかというとネーネさんはドルヌコさんに惚れているように思うのだがここは突っつかないでおこう。人の恋路を邪魔するのは悪いしな。

 ドルヌコさんの人柄も分かってきたところでちょいと商談に入りましょうかね。


「それでですね。ドルヌコさんに折り入ってご相談、いや商談があるんです」


「ほうほう」


 お、目の色が変わった。流石生粋の商人だ。


「先日お飲みいただいた栄養剤。あれが完成しまして。それともう一つ。こちらの化粧水。これら二つ、貴族やお金持ち向けの高品質のものと庶民向けの低価格の二種類を作ったのですが如何せん作るので手一杯でしてね。信用のできる方がいれば販売をお願いしたいと思っていたのですよ」


「あれですか!? ふむふむ、価格帯を分けることによって購買層をきっちりと線引きすると。手が届くならなにか記念の日の贈り物にも喜ばれそうだ。いいですな、これは売れますよ」


 鼻息荒く興奮するドルヌコさん。近い、顔近いです。彼の頭の中ではすでにシミュレーションが始まっているらしい。


 それから話を詰めて卸値を決めた。リポビタマデラックスは卸値15マニー、リポビタマアゲインは卸値200マニー、タマちゃん印の美肌水は卸値150マニー、タマちゃん印の極美肌水はなんと強気の10,000マニー。素材は元より超濃厚な魔力水は俺くらい無駄に魔力を保持してないとそうそう大量に確保できないはずだ。よってそうそうライバルがでないと見越しているのと高級品としてのイメージを植えつけたいからだ。材料は同じだし器から全て自作だから元手はほぼゼロなんで売れればうはうはである。


「あ、これは見本として置いていきますね。ネーネさんや従業員の方に使ってもらえば効果の程が分かると思います。勿論、ネーネさんにはこっちのやつで」


 そう言って極美肌水を渡す。つやつやになってら見惚れるかもしれぬ。これくらいの恋の手助けはよかろうて。


「おお、それはありがたい。やはり扱うなら是非効果の程を知りたいですからな。後で皆に渡しておきましょう」


「それと、これは個人的なお願いなんですがドルヌコさんから見てこれらの値段はおいくらになると思いますか?」


 俺がテーブルの上に広げたのは5種類の宝石。そう、ジャミトーから慰謝料代わりに拝借したものだ。いまだ値段が不明なためどれくらい価値があるものか今後に備えて調べておこうと思ったわけだ。


「ふむふむぅ。これはどれも価値が高いものばかりですなぁ。特にこのダイヤモンド。これ一つで10万マニーはしますぞ。他のものも負けず劣らずの価値があるでしょう」


「そうですか。いや、譲り受けたはいいもののどれくらいの代物なのか判別付けがたかったので助かりました」


「装飾品への加工なら当店でも請け負いますよ。台座になる素材も選べますし」


 な、なんだってー。なんて至れり尽くせりなんだ。ふむ、まだまだ在庫はあるし折角だからこれペンダントに加工してみんなに贈ろうか。来週か再来週辺りには発注していたあれも出来るだろうしセットでプレゼントしちゃおう。


「是非お願いします」


「それでは素材と納期の説明を……」


 そうしてドルヌコさんと長いこと話し合ったのだった。


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