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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第81話 雪面に飛び魚

 はい、ど~も。ご存知、ノブサダでございます~。

 昨晩ハッスルしすぎましてフツノさんたちが眠る寝床へ戻るのも気恥ずかしく風呂場のほうでカグラさんとオヤスミしておりました。もちろんちゃんと乾かしましたよ。


 昨日、俺が問答無用でしばきまわした熊ですが実はそれなりに強い固体だった模様。騒動ですっかり聞き流していたけれどもレベルが上がっていた。礼は言わないが良き糧になってくれたようだ。識別先生を起動すらしていないので名前も知らないけれど。


 そんな俺の横には生まれたままの姿でカグラさんがすーすーと寝息をたてている。うん、柔らかくてぷにぷにである。


 だって幼女モードだもの!


 なんでか事が済んだ後、一緒に寝ようと誘ったら幼女モードになってしまった。布団の中でさらに襲われると思ったのだろうか。……否定は出来ない、うん。

 流石にこの状態の彼女に手を出すのはご法度なのでぷにぷにのほっぺを突くだけなのである。ふああ、もうちょっと寝ようかね。いつの間にか潜りこんでいたタマちゃんを含め再度眠りの世界へと旅立つのだ。



「って寝たらあかんよーーー!!」


 カンカンカンカンとフライパンを叩きながらオカン、もといフツノさんが襲撃してきた。


「もうお昼近いんやで。いくら安全言うたかてダンジョン攻略中なのにありえへんよ。ごゆっくり言うたけどやりすぎやん。はい、カグラもおっきして。ミタマももう起きとるさかいに早よ準備したってや~」


 しーましぇん。一気にまくし立てられ反省する。なぜか正座してしまうのは日本人たる宿命か。




 それから昨晩作って保管しておいたおむすびを朝食にして本日の予定を決めた。この広間は行き止まりらしく今度は左側の通路へ向かって探索する。状況を見てレベル上げとお米の収穫を行うことに決めた。どうやらお三方とも米食をお気に召したようだ。



 ノブ君、ノブ君とフツノさんが食器を片付ける俺に上機嫌で近寄ってくる。


「昨晩はお楽しみでしたね」


 ニヤニヤとなんともいえない笑みを浮かべたフツノさんが俺を小突きながらぽそっともらす。

 うっと詰まるものの少し考え反撃を試みた。


「……今晩はフツノさんの番ですよ?」


 耳元で囁くようにそう返せば『むぐぐ』と口ごもる。ふふふ、いつまでもやられ放題じゃないのですよ。





 反対側の通路へと向かう道中、みんなに成長限界について聞いてみる。

 聞けば確かにそういったことはあるらしい。神殿にて提示されるクラスは本人に適性があるものばかりなのだが稀に成長が早期に終わってしまうものがあるらしい。そういった場合は転職を行える神殿へと向かいそこでクラス変更をしてもらうのだとか。それには結構な額のお布施が必要で貧しいものはそのまま諦めてしまうようだ。限界突破の方法については皆知らなかった。


 ま、仕方ないか。限界突破はあるか分からないし差し当たってクラスをどんどん変えて試していこう。上げれば上げただけ底上げされるしな。少なくとも有用なクラススキルを覚えていくだけでも違うだろう。



 左の通路を進んだ先は右側と左右対称のまったく同じつくりだった。そう、あの沼地もあり中央には小島もある。さすがに前回と同じ轍を踏むわけにはいかないので遠距離からの範囲魔法を試してみるのだ。この階層は人気のある場所が限定されているらしく人が全然いないんだよね。経験値自体はパーティメンバー全員に振り分けされているようなので問題もない。

 ミタマとカグラさんに周囲を警戒してもらいフツノさんと魔法攻撃を食らわす準備をする。


「それじゃ一気にいこう。魔力は気にしなくていいから全力でよろしく」


「はいな。いやぁ、魔力気にせんでええなんて魔法を使うものにとっては夢のような環境やね」


 そして二人とも魔法を詠唱していく。今回は炎系の魔法だと辺りに引火する危険性があるので水魔法を改変し氷雪系と言ってもいいものを使ってみる。範囲ということで狙いを定める必要がないから威力を高めるだけに詠唱を行った。


「風よ風よ。集いて全てを飲み込む嵐とならん。暴れ踊り切り裂け」


「凍えるその身に追い撃つようによされよされと雪が舞う。雪は舞いて風と共にあり。吹けよ荒べよ白銀の景色へ世界を変えよ」


「ウィンドストーム!!」


風雪雪崩旅(ダイヤモンドダスト)!!」


 フツノさんの起こす風の奔流へ俺の作り出す猛吹雪が重なり合う。相乗効果でその範囲を拡大しあたり一面を白が覆っていった。魔力を気にしないでいい事からその勢いは衰えることは無い。やがて俺達の前方は真っ白な白銀の世界へとその姿を変えた。



 ええ、やりすぎました。共同作業が楽しくてね。この結果に後ろの二人はともかくも一緒に魔法を行使したフツノさんですらポカーンとしている。


 そりゃそうだ。沼もさることながら辺りの木々やなんかも全て凍らせてしまったから。識別先生で確認すればアルラウネやアルライネ、果てはイービルタッドポールも巻き込んで死滅させてしまったようだ。

 昨日の肉弾戦はなんだったのだろう。まあ、人目が無いからできる事だということにしておく。見付かれば悪目立ちどころじゃないからな。さ、ちゃっちゃと回収作業にはいりましょう。彫像みたいに凍っているけれど叩けば砕けるはずだ。カグラ先生出番ですよ。


 カシャンカシャンとカグラさんの金棒が彫像を砕いていく。その後に付き従ってほいほいとドロップアイテムを回収する。たまに雪道になれていない皆が転んでいたのはご愛嬌。うーむ、雪面をトビウオのように駆けるシューズでも作るべきだろうか。


 同手法で右と左と往復しいい感じで魂石、素材、米が貯まっていった。イービルタッドポールだけはある程度時間がたたないと再ポップしないようだということも判明した。

 3日をかけてレベル上げと素材集めを繰り返しいよいよ7Fへと足を踏み入れる。







 7F。


 それは大海原が広がる異空間。

 階段から通路を真っ直ぐ進めばそこに広がる水平線。明らかに広さがおかしい。先が見えないもの。


 ま、この空間の捻じ曲がったような大海原は今回華麗に回避します。

 通路を右へと曲がりぐるりと反時計回りに進めば8Fへと続く階段があるようだ。此度の遠征ではこの通路各所から延びている小部屋の探索に残りの時間を使おうと思う。


 小部屋には各種魔物が点在し中には宝箱が湧く事もあるようだ。そこで現れる魔物からドロップする海産物がグラマダで消費されている。もはや養殖みたいなもんだな。


 以前は木工ギルドの支部がここに出張所を作るほど大海原探索が盛んだったようだ。海洋で出現する大貝系の魔物をこぞって倒しにかかっていた。真珠ウマーな状態だったらしいけれども現在ではそれも下火。最近の冒険者はそこまで血気盛んではなくなったのか船の需要が衰え支部は撤退。

 特殊な依頼の際はいくつか係留されている船をレンタルして依頼をこなすらしい。それが沈めば損害はどでかいからそんな無理はする者はよほど金が有り余っているか権力があるかだわな。そういや魚竜関係の依頼もあったよね。やらないかと誘われてもやらないけどさ。



 通路を進み小部屋を探索していく。同業者もちらほら見えるな。

 さぁ、一刻も早く敵を倒して海産物を回収せねば! 後ろのおぜうさまの涎が止まらない。ええ、実のところすごく楽しみにしていたようです。


 そんな俺達の目の前には数匹の魚の群れ。空中に浮かんでいるけれどもな!


 フライングフィッシュ・ポーン Lv16

 HP:26/26 MP:4/4

 空を飛ぶ魚の兵隊。複数匹で群れを成し集団戦を挑んでくる。


 それらをあっさりと倒せばそこにはイワシのドロップが。たたたたと駆け寄るミタマに焼こうかと尋ねようとした矢先にもしゃもしゃと頭からイワシを召し上がっております。猫系の獣人は生魚でも平気でいけるらしい。流石に生で頭からいくとは思っていなかったから驚いたよ。


 さ、気を取り直してどんどんいこうか。


 基本はフライングフィッシュだが強さに応じて名前が変わる。まさに出世魚。

 ギルド情報だと現時点でポーン、ガード、ナイト、ジェネラル、クイーン、キングまで確認されていた。そして強さに応じてドロップする海産物も変わる。全体的にはずれドロップの場合はワカメや昆布がでるようだ。


 ポーンはイワシ。

 ガードはサバ。

 ナイトはサケ。さらにレアで鮭児が出るとか出ないとか。

 ジェネラルは大当たりはメバチマグロ。小当たりはビンナガマグロ。

 クイーンはカツオ。

 キングになるとクロマグロだそうな。


 恐ろしい。あのデカイのがずどんとドロップするんだろうか? 以前切り身の値段を見たが日本と比べれば安いがそれでも結構な値がついていた。



 フライングフィッシュ以外にも色々な魔物が出現する。


 ブラックタイガー

 八足歩行の大きなエビ。尾びれでの反撃に注意。


 リョーマクラゲ

 空中を浮遊するクラゲ。電撃の他に多種多様な攻撃を仕掛けてくる。群れるのを嫌い単独で行動するのが特徴。


 ヒトデナシヒトデ

 巨大なヒトデでなんと二足歩行してくる。覆いかぶさりそのまま冒険者を喰らうという悪食。


 ヤラナイカ。

 南国風のカラフルなイカ。その巨大な吸盤に張り付かれれば身動きが取れなくなる事請け合いである。人の屍骸に卵を産み付けることもあるらしい。



 魔物は連携も上達してきたのか比較的楽に殲滅していった。

 だが問題も浮上。宝箱や罠である。うちのパーティにはそういったものを解除できる面子がいないのだ。

 折角見つけても開ける事ができず非常に悔しい思いをした。これは由々しき事態なので緊急会議をする。いや、もっと早く気付こうやって思うのだがいままが順調すぎた。鍵の掛かった宝箱もでなかったしな。

 これらは一度戻った際にギルドへ依頼を出してでも習得せねばなるまいと駄目元で箱を弄りながら思ったよ。


 その箱が爆発してアフロヘアーになったことは余談である。


 そういうわけで一週間の遠征を終えて帰路についた。


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