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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第76話 れーっつふぇーど in ダンジョン6F

 あれから色々と準備して過ぎた一週間。


 やってきましたダンジョン6F。


 俺は洗礼後はコツコツと神棚(神殿)のパーツを作り出していたり師匠にふるぼっこにされたりセフィさんに泣き付かれてせっせとポーションを作ったりしていた。そしてみんなの準備も出来たということでついに突入ですよ。


 パーティ内で誰かが到達したことがあればポートクリスタルへの移動は可能なようだ。ちなみにここまで来た事があるのは俺とカグラさんである。フツノさんたちがなぜダンジョンにあまり入らなかったのか。それは信頼できる仲間がいなかったこと、ミタマの食料消費量が多いため気が引けたこと、クリアで汚れは落ちるものの臭いが残る為に長期のダンジョンアタックは避けたかったことなどがあげられる。二人とも鼻がいいからきっついらしい。


 そこら辺どうするか聞かれたのだが俺の魔法で服の洗濯も心の洗濯(風呂)も可能だと話すとカグラさんも一緒になって目を輝かせていた。ちなみにミタマはあまり風呂が好きでないらしい。やっぱり猫っぽい習性があるのかね。




 この間、大勢に襲われたちょいとトラウマな6Fの広間ではあるが今は結構静かなものである。

 だって早朝だもの。


 今日は6Fを探索しつつ連携の確認とレベル上げを主軸にしていこうと思う。俺のクラスだがファーストクラスは戦士のままだがセカンドを侍、サードを下忍にしてある。

 今回の戦闘は刀をメインにしていく。使える武技があれだけだと手札が少なすぎるので少しでも熟練度を上げるのだ。魔法で巻き込むのが怖いというのもある。下忍を上げることで警戒とか潜伏、罠を探したりするスキルが習得できないかという打算もある。俺一人が全部できる必要は無いのだが元々器用貧乏を地でいくもんで少しでもできることを増やしたい欲求に駆られるのだ。


 リビングアーマー戦で使った『空気推進エアスラスタ』を使った戦法も取り入れていくつもりだ。足場の悪いこういった沼地のエリアでは『空気浮揚エアホバー』も有効だと思う。どこぞのスカート付いた機動兵器ではないが滑るように沼の上を通過していければそれは結構なアドバンテージになるはずだ。いざとなれば沼を蒸発させるか凍らせるかするつもりではあるがね。



「それじゃ通常は俺が先頭で。ミタマ、周囲の索敵頼むよ。フツノさんはタマちゃんといつでも動けるようにしてて。カグラさんは殿しんがりをお願い」


「……了解」 「はいな」 ぽよーん 「うむ、任せるのじゃ」


 広間から進める通路は3本。マップで次の階層への道筋は中央と分かっているので今回は別な方、右へと歩を進める。『フルプロテクション』を全員にかけ奇襲に対する防御力も底上げした。


 通路を抜けた先はまさに景色が変わっていた。天井が10メートルほどと高く眼前に広がるのは一面の湿地帯。マップによるとドーム球場並みの広さが一部屋となっているらしい。

 場所によっては底なし沼のようなくぼみなどもあるので注意が必要なのだとか。念のためにと俺は『空気浮揚エアホバー』を発動していざって時に備える。少なくともこれで俺が沼にはまる事は無い。他の面子の救出も容易になるはずだ。


「……止まって」


 ミタマの合図で皆が立ち止まり警戒の色を濃くする。なにかしらが近いのか?


「……右前方、魔物が近い。数は……少なくても10」


 少なくて10か。


「ミタマは下がって。俺とカグラさんが前に出る。近づいたら弓で狙撃を。そいつを合図に俺達が畳み掛ける」


「……ん」


 俺は月猫を引き抜き攻の型でいつでも動けるように周囲を警戒した。


 カグラさんは槍を構えふーっと息を吐き出す。


 フツノさんは魂石のはめ込まれた買ったばかりの杖を緊張した面持ちで構えている。

 タマちゃんはフツノさんの足元へ降りぽよーんぽよーんとリズムをとりながら弾んでいる。


 待つこと数分。ミタマがトレントの合成弓(コンポジットボウ)を茂みの奥へと向け引き絞り矢を放った。


 ゲコアアアアア


 えもいわれぬ断末魔と共に茂みがガサガサと揺れ複数の影が一斉に飛び出てくる。

 俺達の目の前に降り立ったソレはヌメる体をてらってらに光らせて飛び掛ってきた。その大きさは1メートルほど。

 それを阻むかのように俺とカグラさんが立塞がる。



 ヒキコモリウチカエル Lv13

 HP:30/30 MP:4/4

 迷宮に引きこもる大型のカエル。巣を警備し荒らすものには容赦の無い制裁を加える。



 ヒキコモリドクガエル Lv16

 HP45/45 MP:10/10

 ヒキコモリウチカエルの変異種。ヒキコモリウチカエルと巣を共有し警備する。毒液を吐き出し攻撃してくる。特筆するのは血液にも毒の成分が含まれる。



 一匹一匹は対して強くは無いのだろうが数が問題か。最初に現れたのは6匹。追いついてきていないのがさらにいるようだ。


「表皮にイボがついているのは毒を持っている。返り血に注意して!」


「相分かった!」


 識別先生が瞬時に解析して俺に情報を送ってくる。以前と比べれば段違いに処理速度が上がっていた。俺のステータスの底上げのせいだろうかね。




「ハァァァッ!」


 カグラさんはその場を死守するかのように陣取りながら槍を縦横無尽に突き出しカエルの脳天を貫いていく。


 ブオン


 血を払うように振られた槍からズルリとカエルが抜け落ち地面へと叩きつけられた。

 一突きごとに辺りにはカエルの死体が積み重なっていく。頼もしいったらないね。俺も負けていられない。



 カグラさんとは逆に俺は機動性を生かして迎撃に転じる。

 踏み込むと同時に『空気推進エアスラスタ』を使用した。圧縮された空気が俺の背、足の合計4箇所から一気に放出される。急加速を加えられた俺の動きにカエルが付いて来られるわけも無く速度を維持したままの横薙ぎをその身に受けることになる。その一撃は月猫の鋭さも相まってまったく手ごたえ無くカエルを両断した。

 現在、『空気推進エアスラスタ』の展開数は最大で4つ。見えないが圧縮した空気の塊がふよふよと俺の後ろに引っ付いている感じだ。この塊は俺の意思で自由に動かせるので急ブレーキなどにも自在に使用可能である。


 何もしていなければその速度のまま前のめりに突っ込んでしまうのだろうが『空気推進エアスラスタ』を横方向へ入れ替え地面を滑るように方向転換する。少し大回りになってしまったが初の実戦使用でこれなら問題ないだろう。あとは調整して隙を少なくするだけだ。


 すぐさま次の獲物へと狙いを定め地を蹴り突貫していく。


「お前らの相手はこっちだ!」


 戦士のクラススキルである挑発を込め叫びながら一太刀一太刀振るっていく。範囲はそれほど広くないが周りにいたカエルはこちらへと向かってくる。それらの横をすり抜けながら陣形をかき乱し白刃が戦場を駆けるたびに二枚におろされたカエルが地に落ち魔素へと還元されていった。


 ミタマは俺とカグラさんの間をすり抜けてきたカエルへと矢を放つ。カエルの動きに合わせるとともに飛び回る俺に当たらないように調整しながら一矢また一矢と放っていた。急所以外では一撃で屠ることはできないものの幾度も突きたてハリネズミのようになってカエルは絶命していく。


 さらに隙を見ながら腰のポーチから予備の矢束を取り出し背に付けた矢筒へと補充し戦闘を継続していく。したんしたんと動き回りながらそれができるのはうちのパーティではミタマくらいなものだろう。種族的なこともあるが一番器用なのである。ま、結構面倒くさがりなので戦闘以外にはそれがいまいち発揮されないのが玉にキズだが。


 ゲコァァァァァ


「……あっ!?」


 補充する瞬間、ほんの小さな隙をついてヒキコモリドクガエルの一匹が後方で待機するフツノさんへと突撃した。せめて一矢報いるためかそれとも後ろであまり動かないフツノさんを組みしやすいと判断したか。


「あかんでー、うちかてただ立ってるだけやないんよ」


 ベシン

 メゴアアアア


 勢い良く飛びついたカエルはビタンと透明な壁のようなものに阻まれる。そんなヒキコモリドクガエルの全身へ合計6体のタマちゃんによる迎撃体当たりがめり込んだ。ご存知『分体生成』による質量を持った分身による生ものファ○ネルである。

 フツノさんの結界術はパーティメンバーは通り抜けられ害意持つものは阻む。気をつけないと穴がありそうだがこの面子なら今のところ問題はない。

 未だ動こうとしたところへ立て続けにタマちゃん(分体)が突貫しやがてピクリともしなくなる。

 案外、フツノさんとタマちゃんはいいコンビなのかもしれないな。



「フッ!」



 突進からその勢いのまま最後のカエルを貫き俺達以外に動くものがいなくなり最初の遭遇戦が終わる。

 ヒュっと刀を振り血を払い懐紙代わりの布で残った汚れを拭き取り鞘へと納めた。


 転がる魂石は合計で15個。ヒキコモリウチカエルは黒い魂石、ヒキコモリドクガエルは赤い魂石を残したようだ。金額的に大した事のないものだが力試しの初戦の相手としてはこんなもんだろう。


 そんな魂石を『にひひ』と満面の笑みでフツノさんが回収していく。おっかね♪おっかね♪と鼻歌も歌うくらいにご機嫌だ。そうフツノさんはお金が大好きである。討伐などの実入りの良い依頼を避け二人で出来る細かな依頼でいままでやってきた分、お金には苦労してきたそうだ。


 そう考えたとき俺が最初に会ったときのイノシシの分配は大盤振る舞いだったと思うだろう。だが実際はフツノさんたちが持っていった肝などの部位に対して依頼が出ておりそれ以上の収益があったそうな。ミタマがぽろりと洩らしたんだが俺はあえて聞いていないふりをした。俺が貰った部分だけでも十分助かったしフツノさんの強かなその部分は妹の為の健気な姉のやりくりである。感心こそすれ責める謂れもない。


 余談だがティノちゃんが歌っていた億千マニーの歌もフツノさんが教えたそうな。


 グラマダに着く前に質問したとき渋い顔をして言ってたしな。


 Q:冒険者やっている上で一番お金がかかるのはなんですか?

 A:ミタマの食費。


 思わずほろりと涙が流れそうになったよ。これからはお金に苦労させないように一緒に頑張ろうね、フツノさん。



 てれれてってって~♪ 侍、下忍のレベルが上がりました。

 てれれてってって~♪ カグラのレベルが上がりました。

 てれれてってって~♪ フツノのレベルが上がりました。

 てれれてってって~♪ ミタマのレベルが上がりました。

 てれれて~て~てんてってれ~♪ タマちゃんのレベルが上がりました。



 おお、全員レベルアップか塵も積もれば山となるだな。異魂伝心かパーティ組んだ影響か他の人がレベルアップしたのも分かるんだな。駄女神の加護の恩恵もしっかり行き渡っているようでよきかなよきかな。

最近書いている時のBGM

誰がために→コンバトラーVのテーマVer2012→ベリーメロン→絶唱†漢女道→……


うん、暴走するわけですな。

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