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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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閑話その7 兄弟子とは?

 今日も朝から師匠と組み手。あの時弟子認定は貰ったが師匠から学ぶものはいまだ数多くある。

 最初の頃と違って結構容赦なくふるぼっこにされているがそれでもめげずに手を出す。


「ようし、ここまでじゃ。汗を流したら飯にするかの」



 ふう。こうやって昼までちゃんと立っていられる時点で以前よりは遥かにましになっていると実感する。気絶、悶絶、リバースの連続だったからなあ。

 それでもまだまだ先は長い。そもそも、師匠が今何割くらいの力を出しているのかすら掴めていないからな。一度聞いたことがあるけれどもそれを掴むのも修行の内じゃときっぱり言われてしまった。俺以外の弟子の皆さんは一体どういう風に鍛錬していたんだか。


 ふむ、そういえば他の兄弟子の話って聞いたことなかったよね。

 俺で10人目だから上に9人の兄弟子がいるはず。そのうちの誰ともいまだ会った事は無い。そもそもグラマダにいるかすら知らない。師匠は今日休みだしちょいとお伺いしてみよう。




「ふむ、他の弟子たちか? そう言えば話したことはなかったのぅ」


「ええ、お会いしたことも無いですしどこか遠くにいらっしゃるんですか?」


「そうじゃのう。結構自由奔放なところはあるのぅ。少なくとも居場所がはっきりしておるのは5人じゃな」


 それから一人一人順を追って話してくれた。


 一人目の弟子はテムロ・リェイ氏。

 現在、ここグラマダで公爵家に仕え騎士団の部隊長を務めている。得物はジャベリンと予備でモーニングスターを使うらしい。どんな組み合わせだよ。

 若い頃は甘やかされて育ったせいか自分勝手で己の殻に閉じこもりがちだったが師匠に叩き直されて矯正されたらしい。その後、メキメキと腕を挙げ王都での武道大会で優勝するまでに至った。そこで公爵にスカウトされて騎士団に入団。今では古株で部下の育成に力を入れているようだ。


「そういえばやつの息子の何番目だったか忘れたがお前と同じくらいの年頃じゃったの。いずれどこかで会うやもしれんな」


 師匠、それフラグになるんでヤメテお願い。


 二人目の弟子はクリスティさん。

 女性ながら衛兵隊に所属。大盾と厚い装甲を身に纏い戦場を駆けていたらしい。現在は引退し奥様となっている。相手が投降してきた元敵で色々とあったようだ。


「男勝りでな。それでもエレノアの幼い頃には随分と面倒をみてくれたもんじゃ。今は王都近郊の静かな村で暮らしているはずじゃな」



 三人目はカミュという弓使い。

 女性のような名前だがれっきとした男。戦争で多くを殺めすぎて精神を病んでしまったらしい。


「弓の腕は儂の知る限りでは最も優れておったの。優れておるが故に配属された部隊がまずかった。暗殺を主体とした部隊に組み込まれてしもうてな。優しい性格だけに随分苦しんでおったらしい。儂が上に掛け合って除隊手続きをとれたころには別人のように擦り切れておったよ」


 今は片田舎の湖畔の別荘にて療養中だとか。



 四人目はA級冒険者として活躍するジュノー。

『震刀・滅却』のときに聞いた名前である。俺も以前冒険者ギルドでその名前は聞き及んでいた。

 たしか『放浪のソードマスター』とか呼ばれていたな。大剣使いで師匠譲りの型にはまらぬ奔放な剣技らしい。性格もそのまま自由奔放で各地の遺跡やダンジョンをふらふらと渡り歩いているようだ。


「ふらふらと安定せん男じゃが芯の強さは弟子の内でも随一じゃったな。それに人たらしというか他人を丸め込むのがうまいやつでの。儂もいつのまにやら弟子にしておったわい」



 五人目は冒険者だったが今は引退してパン屋を営んでいるシボックさん。

 双剣使いで魔物の討伐を重きに置いたハンターとも呼ばれる冒険者だった。想い人と結婚したのを切っ掛けに王都でパン屋を開業したらしい。最近子供が産まれたらしく師匠のところにも手紙が届いたようだ。


「剣の腕も良いがハンターやっておっただけに気配の殺し方が実に上手い。他の弟子にアサシンになれるとからかわれておったの。本人は苦笑いだったがな」


 それは会う機会があれば是非ご教授願いたいですな。ダンジョン探索に一役かってくれそうです。



 六人目はウソン。

 とある教団に攫われた幼馴染の女性を救うために師匠に弟子入りしたという過去を持つ。現在はその女性と山間の村で隠遁生活をしているようだ。得物は短剣と暗器。暗器付きのブーツを飛ばしてきたり結構なんでもありだったりするらしい。


「あやつは両手ききでの。左からと思えば右から右からと思えば左からとジュノーに負けず劣らずの奔放な戦い方をしよったのう」


 大丈夫、師匠も十分奔放ですよ。さっきも突きと見せかけて無数のデコピンを放ってきましたよね。いまだにおでこが真っ赤です、はい。



 七人目はカッシュ。

 師匠と同じく拳で語る熱い男らしい。修行馬鹿というか強い相手を知ればどこなりと押しかけ闘いを挑むような人。それだけに現在行方知れずで連絡すらとれないらしい。


「若い頃の儂によく似ておる。はっきり言うがこやつは馬鹿じゃ。ノブサダよ、お前が名を売ればいつかは相対するかもしれんのう」


 師匠、だから旗の建設はやめてください。仮に来たら落とし穴に嵌めて埋め立ててしまいましょう。そうしましょう。穴の上にバナナでも置いておいたら引っかかったりしないかね?



 八人目はロードラン。

 使えるものは何でも使う無手勝流でこの人だけは弟子と言っていいものか迷うらしい。今どこにいるかは不明。最新情報では地下遺跡で掘り起こした巨大な戦士像を売り払うため遠くの好事家の元へ向かっているとかなんとか。


「冒険者というのはこやつのためにあるような言葉じゃな。未開の地や遺跡となるとホイホイ飛んで行っては怪しげなものを掘り起こしてきおる。環境に適応という点では弟子の中で屈指の順応性があるのう」


 何をしでかすか分からない点では師匠譲りな気がします。え? お前が言うな? そいつは言わない約束ですよ、おとっつぁん。



 九人目、セツエイ。

 短剣、小剣、細剣、片手剣、両手剣、長剣、大剣、様々な剣に精通した剣士。各地の戦場を渡り歩く戦の申し子。血に飢えた狂人かと思いきやそんな事は無く寡黙な若者らしい。最新の情報では北のオロシナ帝国で勃発していた魔王軍との戦に参加していたようだ。


「戦災孤児でな。戦争そのものを憎んでおった。その後、傭兵団に所属しておるうちに儂と会った訳じゃ。それはもう目だけがギラギラ光っておったのぅ。儂のところにおるうちにかなりマシにはなったがな」


 七つの剣を自在に使う様から『セブンズソード』なんて二つ名がついているらしい。7本同時使用ってわけじゃないんだろうけどもね。某ゲームの独眼龍のように両手で6本とか使う人がいるかもしれないし真偽のほどは分からないけれども。



「なんとも濃い面子が多いですね」


「何気に除外しておるがお前も含まれておるからの?」


 くっ、あえて避けていたというのに気付かれている!


「ま、まあ、早々会うことの出来る人っていないですね」


「ん? そう言われると……そのうちテムロあたりがちょっかい出してきたりするかもしれんの。公爵様にもお前の噂は入っているようじゃしな」


 え!? なんで! たしかに師匠経由であんまりな貴族連中へO・SHI・O・KIしていただく計画はあったが未だ机上の空論で接触する機会などなかったはずだ。


「なんでも公爵様のお嬢さんに会ったと聞いたぞ?」


 あ゛!


 あーーーーーーーー!!!!


 会っていました。会っちゃってましたよ。(閑話その3参照)

 うわあ、失敗したかも。一体どんな噂が耳に入っちゃっていることやら。


「ええ、確かにレベリット神殿でのいざこざの際に一度お会いしていますが一体どんな噂を?」


 ふむうと顎に手をやりヒゲをさする師匠。こいつは勿体つけているときのクセだ。むぐぐ、なんか楽しんでますね?


「ま、悪いことではないな。お嬢さんにしても歳の近い同じ信徒と初めて会ったと喜んでおった。その様子を目を細めて眺めておったな。……悪い虫なら排除するとも言っておったが」


 ぎゃー、公爵は娘溺愛か。あれは突発的な出来事だったからな。あまり悪い印象は与えてなかったはずだがどうだったろうか。大丈夫なはず。大丈夫だよね?


実はせっせとフラグを建設していた!

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