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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第73話 エルフとハーフエルフ

腰が痛い……。

ぎっくりかと思いましたが筋膜傷ついただけとの診断。

待ち時間3時間、診察5分、完治するまで2週間……解せぬ。


 薬草園に最初の種を蒔き終え、一緒に作業をしていた二人に尋ねる。


「薬草園も思ったよりも早く出来上がったし午後はティノちゃんの洗礼しにいこうか。どの神様にお願いするか決めたかい?」


「うん! ノブお兄ちゃんと一緒のがいい!!」


 嬉しいこと言ってくれるじゃないの。俺はノンケでも……っていかんいかん何かが降りてきたようだ。

 俺としては問題はないのだが駄女神でいいのかね?


「ディリットさん、よろしいですか?」


「はい、私達エルフではレベリット様を信仰するものは少なからずおりますので」


 なんでも長い寿命を誇るエルフであるからして成長と才能を磨く期間は人の何倍もある。それ故に可能性をどんどん追っていけるからそれなりに人気があるらしい。それでも他の女神より人気ないらしいけれども。


「それじゃ洗礼受けたら同じくらいの歳の子供が知り合いにいるので顔合わせしてきましょうか。やっぱり歳の近い同姓の友人がいたほうがいいでしょうし。俺が以前暮らしていた宿の娘さんたちなんですが心根も良い子ですからきっと仲良くしてくれますよ」


 ディリットさんはちょっとだけ心配そうな顔をするも今後の娘のことを考え意を決したようだ。


「不安ではありますがどうかお願いします。母親としてこの子には不自由ないよう心を砕いてきたつもりですがやはり人の中で暮らしていくなら繋がりをもっていくのは大事なことだと思います」




 というわけでティノちゃんのお出かけである。

 前もって準備しておいた帽子と俺手製のフードつきポンチョ(ネコミミ付属)で耳が見えないようにカモフラージュする。ネコミミフードに喜ぶティノちゃんとミタマ。なぜか悔しそうなフツノさん。今度は狐耳のも作っておこう。あ、カグラさん、角付きは作りませんよ。隊長にならないと角は付かないんです。


 ちなみにカグラさんは変化をやめて鬼人族の姿のままである。ギルドにもちゃんと届け出てある。はじめはぎょっとされたりしていたが時間がそれも薄めてくれると思う。変に絡むやつがいたら各個撃破するがな!



「おっくせんマニ~♪ おっくせんマニ~♪ わったしのお財布どらまちっく~♪」


 ホイホイついていって迷子にならないよう手を繋いでお出かけだ。歌を口ずさみながら弾むティノちゃん。よっぽど外に出れるのが嬉しかったのだろう、この娘のりのりである。でも、その歌どこからでてきたの?

 ついでに周辺の店なんかを案内しながらてくてくと歩む。子供の歩幅に合わせるためその歩みは非常にゆっくりだ。白米号に乗せていっても良かったんだがやっぱり自分の足で歩かないと地形って覚えないもんだしいざって言うときのため、おやっさん達にも紹介していたほうがいいだろうと二人と一匹でお出かけなのである。今回タマちゃんはティノちゃんのフードの中、その頭の上に乗っかっている。もし、何かがあっても即座に俺へ伝達が入るようにだ。



「俺、参上!」


 バーン!! 勢いよく扉を開け放ちサムズアップ。なぜかハイテンションなのはティノちゃんの歌でなんかノリにノッているからである。


「おう、ノブサダか。どうした……ってお前、いつのまに子供造ったんだ!?」


 微妙にスルーされた。いや、ちょっとお待ちを。そのニュアンスだとロボットかなんかを創造したみたいじゃないですか。


「この子は『ひきこもりのラミア』で働くことになった女性の娘さんですよ。この子もお使いとかで色々出歩くかもしれません。もし、なにかあったらここに駆け込めるようにお願いしようかと思いまして」


「おいおい、なんでまたこんなおっさんのところに」


 フードと帽子をとってみせる。長い耳に驚いたような顔をするがすぐに得心がいったようだ。


「こういった事情がありまして。信用できる人といえばまずおやっさん達かなと思ったんですよ」


「ふう、お前はとことん面倒ごとに好かれているな。やれやれ、お嬢ちゃん俺はマウリオ。よろしくな」


「私はティノです。ノブお兄ちゃんのところでお世話になってます。マウリオおじちゃんよろしくね」


 ニパっと笑うティノちゃんにおやっさんの強面も台無しである。目じりが垂れ下がってますぞ。


「うむうむ、ノブサダの言ったとおりなにかあったらすぐおいで」


 おやっさんはごつい手で優しく頭を撫でる。よし、これで味方を一人確保だ。





「御用改めである!!」


「うぇぇぇえ、一体なにごとですかノブサダさん」


「気にするな、ちょっとした新撰組ごっこだ」


 ???が頭の上に表示されそうなほど首をかしげ呆けるベル。ふむ、血色はいいようだ。どうやらまともに食べているようである。なんというか上京した息子を持つおかんの気持ちだな。


「それでだ。今日はこの子の洗礼を頼みに来たんだ。丁度暇みたいだし一丁頼むよ」


「はいはい、お任せください~。あれ? お嬢さんどうかしましたか?」


 おろろ? ティノちゃんがベルを見て固まっているぞ?


「ノブお兄ちゃん。この人もエルフなの?」


 おお! すっかり駄目な子認定していて忘れてたがこやつハーフエルフだったわい。ほっほっほ、いかんいかん、若ボケしてるわ。


「え? え? この人も(・・・・)??」


 ぱさりとフードを降ろし帽子をとったその姿にベルは言葉を無くした。


「あ、あああ、あああああああ」


 涙をボロボロと流しながらティノちゃんを見ている。やがてすがり付く様に彼女の足元でそのまま泣きじゃくっていた。

 10分ほどして落ち着いたのか自分の状況を省みるベル。やらかしてしまったと思ったのか顔を真っ赤にして平謝りしている。


「す、すすすいません。あまりのことに動転してしまって失礼なことをしてしまいました」


「いいよ、ティノは気にしてないから。辛い事があったら泣けば少しは楽になるってお母さんも言ってたし」


 うーむ、ティノちゃんは考え方が随分と大人びているな。ディリットさんの教育の賜物だろうか?

 それにしてもベルはどうしたんだか。そもそも、あいつの生い立ちとか聞いたことなかったな。ハーフってこともあり無理に聞きだすのも無粋だと思うし。忘れていたけれどな。


「ありがとう、私よりも幼いのにずっと強いですね。私は孤児だったので母親の顔すら知らないんですよぅ。だからティノさんという本当のエルフを見てつい母親の姿に当てはめてしまい、先ほどの痴態を……」


 そう言いながら泣きはらした目をこするベル。よくよく考えたらベルは14歳なんだよなぁ。それで親の顔も知らずに独り立ちをしないといけない状況ってずいぶんと過酷といって差し支えないんじゃなかろうか。


 それから少しベルの身の上話に耳を傾けた。

 とある朝に違う街のレベリット神殿の前に捨てられていたハーフエルフの赤子。それがベルだった。(『どうかこの子をお導きください。身勝手な母親を許して』と置手紙があったことから母親がエルフでは?という予測らしい)

 身寄りもない可哀想な赤子を見捨てることができなかったそこの司祭様がベルの親代わりとなって育ててくれた。幸いにして神官のクラスへの才能適性(多分だが神託とか交神とかそういうスキルだろう)があり修道士ではなく神官として修行を積むことになった。

 王都近郊の町にて活動を続けていたらしいんだが話を聞いているとどうにもきな臭くなった周囲から遠ざける為、親代わりの司祭がこの街への赴任という形をとったんだと感じた。

 絶対数の多い普人族の間ではハーフエルフが神官位に就いていることへ露骨に嫌な顔をするらしい。あの駄女神の信徒ですらそうなんだから他の神殿なんてもっとひどいのだろうか? 世知辛いねぇと思いつつこいつも苦労しているなとしみじみ感じ入る。


「暗い話になってしまいましたね。大丈夫ですよ、今はそんな辛さも忘れて毎日ご飯が食べられる幸せに浸っていますから」


 なんでも水魔法や動植物知識は生き抜くために習得せざるを得ない状況だったらしい。(兄弟子達の嫌がらせで食事やらなんやらは高い確率で妨害を受けたようだ)恩義を感じる司祭へこれ以上の迷惑をかけるわけにはいかないと書物から水魔法を覚え修行の合間をぬって木の実やきのこを集めているうちに動植物知識をいつの間にか覚えていた……って才能は十分にあるんだな。そら、兄弟子共が嫉妬する気持ちもわからんでもない。擁護するつもりはないけれど。


「ノブサダさんのおかげでうちの治療院とジャムの売り上げから貯えができるまでになりました。改めて御礼を。そうだ、今回の洗礼は無料で大丈夫ですよ。たまにはお礼をしないと……」


 そんなベルの額をデコピンしてやる。あいたぁと額を両手で押さえるベルはちょっと涙目だ。くくく、こんなだから放っておけないんだよな。歳の離れた弟か甥っ子ってところだ。


「俺には遠慮しなくて構わんよ。ジャムの売り上げなら作っている俺にだって入って来てるんだ。気にすんな」


「で、でも……」


「強いて言うならお前が変わりなくレベリットの布教と神の施しである治療院を続けていることが十分恩返しになっているよ。俺は信徒なんていってもなにもしてないからな。お前さんの支援って名目で楽させてもらってる、な?」


 そういう事ならと渋々といった感じで引き下がる。というか本来の目的を忘れているぞ。


「ま、とにかくこの子の洗礼を頼む。この子はうちの従業員になったエルフの娘さんでな。今後も会うかもしれないしよろしく頼むよ」


「私はティノって言うんだ。よろしくね、ベルちゃん」


「ベ、ベルちゃん!? 私は男ですよぅ。ほ、ほら、最近少し筋肉だってついてきたんですから!」


 そう言って腕をまくって見せてくる。うん、すごくぷにぷにです。タマちゃんに負けてないぞ、はっはっは。筋肉と言えば俺も総合的に随分とレベルが上がったからかこっちの世界に来た当初と比べると随分と力もついた。具体的に言うとりんごを両手で掴んでばかりと真っ二つに割るくらいは余裕になったよ。


「女の子だと思ってた、ごめんなさい」


「いえ、よく間違われるので慣れちゃいました、ぐすん。それでは女神像の前にお立ちください。そして片膝をついて目を閉じてくださいぃ」 


 言われるがままティノちゃんは女神像の前に。促されるように祈るような格好になる。 


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