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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第一章 ノブサダ大地に立つ
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第7話 けも耳さん見つけました

 

「天気は晴れ晴れ。旅立つにはいい朝だ!」


 ここにきてから独り言が増えた気がする。寂しくなんてないやい。

 とりあえず昨日は戦士のレベルを上げつつ食料を溜め込んだ。季節感がまったくないがタラの芽やゼンマイ、ワラビなども結構な量を確保した。無論、果物類もだ。そういえば初めて見るような果物あったな。


 ランプトゥンの実

 トゲトゲの表皮をもつ甘い果物。中にはつるんとした果肉が入っている。

 食用のほかに栄養剤の材料にもなる為、それなりの額で取引されている。


 それなりの額っていうところに引かれて結構な量を詰め込んだのは内緒だ!


 快晴のもと俺はついに旅立つ! 結構長居したけど!

 あ、現在のステータスはこんな感じだ。


 名前:ノブサダ・イズミ 性別:男 種族:???

 クラス:戦士Lv4

 称号:【マリモキラー】

 HP:55/55 MP:82/82

【スキル】

 エターニア共通語 異魂伝心Lv1 魔法改変Lv1 家事Lv5 農業Lv3 剣術Lv2 投擲Lv1 神聖魔法Lv1 属性魔法適性Lv1(new!) 偽装Lv2 魔力纏Lv1


【固有スキル】

 識別の魔眼Lv1


 称号設定で【マリモキラー】をつけてみた。

 正直現時点でまともにつけられそうなのが【おかんを超えし者】との二択だけ。だったらこっちのがまだマシ。マリモがでたら有効だしな。


 さてと、太陽の加減からなんとなく東を割り出して方向を決めた。とりあえず間違ってたらすぐに戻れるよう草を切り払いながら進もう。マリモも出るかもしれないしな。


 スパッスパッ


 歩き始めてかれこれ2時間あまり。

 辺りに響くのは俺が草を刈る音だけである。先ほど見つけてもいだマンゴーを頬張りつつ水分補給をしながらそれでも進む。


 むむ!?

 いい加減飽きてきたなと思ったところで森の出口らしきものが見えた。先が拓けており平原が見えるような気がする。


 キィン、ギャリン


「ん?」


 何か金属を打ち付けあうような音が聞こえる。これって戦闘か!?

 少なくともマリモとかではなく武器を使うような者同士が戦っているんだろう。


 意識しながらなるべく気配を殺し木を影にして音のする方向へと向かう。


 近づいたその先には二人の人物がゴブリンっぽい集団と戦闘をしていた。


 そしてその姿を見て俺は目を見張った! ケモ……ミミだと!!

 憧れのケモミミ。無論尻尾もふさふさである。猫っぽい女性と狐っぽい女性がゴブリン相手に苦戦しているようだ。片割れの猫さん(仮称)は脚に傷を負っているらしく狐さん(仮称)は彼女を庇いながら戦っているため旗色はよくない。


 もふもふ王を志すものとしてこれは助太刀せねばなるまい。だが、所詮俺は異世界4日目のひよっこ。いきなり出て行っても足手まといになる可能性が高い。まずは取り急ぎ相手の戦力を分析しよう。


 ゴブリンリーダー Lv5

 HP:20/20 MP:1/1

 ゴブリンの集団を率いるもの。魔物の一種。

 ゴブリンにメスは存在せず他種族の女性を繁殖に用いるため忌避される存在。

 繁殖力は高く恐ろしい速度でコロニーを形成するため常に討伐対象となっている。


 ゴブリンソルジャー Lv4×2

 HP:16/16 MP:0/0

 ゴブリンの兵士。以下略。


 ゴブリンアーチャー Lv3×3

 HP:11/11 MP:0/0

 ゴブリンの弓兵。以下略。


 平均してLv4程度のゴブリンの集団か。残りは6匹ほど。人型をしてはいるがどこをどうみても化物である。

 何匹も切り伏せられているので実力的にはあのケガさえなければジリ貧になってはいなかったのだろう。


 まずはこっちにある程度注意をそらさないとだな。俺は手近にあった石を振りかぶって投げつけよう。

 幸いこちらには気づいていないようなので思いっきり振りかぶって投げつけた。

 くらえ! 竜巻投法から繰り出されるジャイロボールだったらいいなと願う投石を!!


 ふしゅん!


 こちらに来る前だったらありえない速度で石はゴブリンへ投げつけられる。


「ゴブァ!?」


 後方で構えていたゴブリンアーチャーの顔にめり込んだ! そのまま昏倒したようだ。


「お二人さん、助太刀する!」


 いきなり声をかけられた狐さん(仮称)はちょっと驚きつつも返事をする。


「助かるわぁ。うちは魔法使うけん巻き込まれにきをつけてや」

「わかった」


 まさかの関西弁風な喋り方に驚きつつもさらに石を投げつけて後衛の気を逸らす。

 この体、レベルが上がっているせいなのか予想以上に性能が高い。投擲のスキルも相まってか狙ったところへ石が飛んでいく。

 化物然としたゴブリンでも頭部へ石が当たればそれなりにダメージがあるようで2匹のゴブリンがすでに気絶している。

 投げる石がなくなったところで狐さん(仮称)側に駆け寄った。


「はっきり言ってそんなに強くないが体張ってでもお嬢さん方の盾くらいはさせてもらうぜ」


 盾もってないけど。


「うひひ、こんなお子様にお嬢さんなんてむずがゆいわぁ。うちが詠唱するあいだ後ろの子だけでも庇ってもらえるかいな?」


「了解」


 狐さんが身をかわしつつなにやら集中を始める。さて、こちらは動けない猫さんにむかってくる有象無象どもの相手をするとしよう。といえば格好いいがよけてよけてよけて剣で受ける。たまにひょろく反撃する。

 やっぱりマリモ相手とは勝手が違うな。


 だが、蛾のように舞い! 蚊のように刺す!!


 ゴブリンどもを挑発しつつ狐さんへ意識が向かないようにする。

 いたた、挑発が効きすぎたのかこっちへ3匹のゴブリンが寄ってきている。魔力纏があるものの剣を防ぐほどの防御力があるわけではないので所々傷が浮かんでいた。あたたたたたた、大きな傷はないがそれでも痛いものは痛いな。


 幸いにしてゴブリンの技量はそこまで高くないようなので剣術Lv2の俺でも致命傷にならない程度だがなんとか捌いていなせる。


 ドシュッ


 やっとゴブリンの一匹を切り伏せたところで狐さんが声をあげた。


「準備完了や、合図と一緒に下がってや」

「了解」


「万物に宿りしマナよ。炎の濁流となりてかの者どもを焼き尽くせ。ファイアストーム!」


 狐さんが力ある言葉を発すると炎の奔流がゴブリンたちを飲み込んだ。あ、気絶していたのも巻き込まれた。

 炎が消え去ったあとにはゴブリンがブスブスと煙を上げ丸焼けになって残っていた。


 てれれてってってー♪ 戦士のレベルが5になりました。


 お、俺のレベルも上がったようだ。

 ま、確認はあとにして今はこっちのお二人さんだな。ケガは大丈夫だろうか。


 ブツン


 ん? 何だ?


「おおきに、どこの誰かしらんけど助かったわ。うちはフツノ。怪我してるんはうちの妹でミタマや」

「……ミタマ。助けてくれてありが……」


 感謝の気持ちを伝える二人に向き直った瞬間。


 バサリ


「……ヒニャアアアアアア」

「ほぉう、これはこれは……」


 えっ!? 猫さんが悲鳴をあげ、狐さんが頬を赤く染めつつ興味深げに見つめている。というか超ガン見である。

 そして下半身にさわやかな風を感じる……。恐る恐る下を見やればつるっつるの股間に未使用感あふれる象さんが顔を出していた。


 うおおおおお、ズボンとパンツの紐が切れているぅぅぅ。

 慌ててズボンとパンツを引きあげて紐を結び直す。


「今のは事故、そう事故なんだ。決して股間を見せびらかすような趣味があるわけじゃないので許して欲しい」


 言葉を選んで必死に謝罪する。俺だって十二分に動揺しているが彼女達に変態扱いされたらそれこそ立ち直れないので必死である。


「あ、ああ、うちは別に気にしてへんよ。寧ろ、ご馳走様?」

「……あうあうあう」


 フツノさんはぷくくくと笑みを浮かべながらこっちを見ている。反対にミタマと呼ばれた猫さんは顔を真っ赤にして目を逸らしていた。


「俺はノブサダ。ノブでいいよ」


 なるだけ落ち着こうと努力して言っているが俺の顔も赤いだろう。まさか股間全開を人目に晒すとは。


「んじゃ、ノブ君。図々しいかもしれへんけどなんぞ医療セットもってたりせぇへん? 手持ちの包帯とかさっきの戦闘で踏み荒らされてしもうてん」

「ああ、それじゃこれでもいいかな? さっきは急なことでリュックにこれが入ってることすっかり忘れていたんだ」


 そういってポーションを一個リュックからとりだす。あえて、神聖魔法は使わないでおく。明らかに戦士な俺が回復魔法使えたら問題がありそうだからだ。


「ポーション? ええの? 結構するんやろ?」


 そうなのか? 値段までは出てないからな。まぁそれでも構わないだろう。他にそれっぽいものも持ってないことだし。寧ろ、こんな出会いを逃すようなマネは出来まいよ。


「構わないよ。相手がどうしようもないおっさんとかなら躊躇するかもしれないが美人のお二人さんに使ってもらうなら全然問題ない」

「っぷ、あははは、ノブ君は小さいのに口がうまいんやね。んじゃ折角だし借りておくわ」


 ポーションの蓋を開けて患部へと振りかける。その後、俺が小屋からもってきた布の切れ端で傷口を巻いていく。一応、小屋にいたときに煮沸しておいたから衛生的には問題ないだろう。


「タダで構わないよ。だけど、借りととるなら……あとでその素敵なケモミミをもふもふさせてくれないかな。いや、むしろお願いします」


 フツノさんが目を見開いてビックリしている。あれ? そこまでビックリするようなこと言った?


「……ノブく~ん、大胆やねぇ。獣人族の耳を触れるのは家族か番いなんやで?成人したら家族にさえ触らせないんよ?」

「なんと!?」

「つまり妙齢の獣人女性に耳を触らせてっていうのは結婚してほしいって言っているようなものなんやで」


 そんな馬鹿な!? 気軽には触れぬとはもふもふ王への道はかくも険しいのか!? くうう、だが、だがめげぬ、解せぬ、諦めぬ! 諦めてはなるまいぞ、もふもふ王。


 四つんばいになって絶望に打ちひしがれていたが気を取り直して立ち上がる。いかんな、情緒不安定にすぎる。


「ごめん、そんなに大事だとは。さっき森から出てきたばかりなんで色々と知らないことが多いようなんだ」

「森から? こんな辺鄙な場所に住んでたん?」

「うん、森で捨てられていたところをうちの爺様に拾われたらしいんだ。その爺様も先日亡くなってしまって身寄りもないから町へ出ようと思ったんだよ」


 夜、寝付くまでの間にそれらしい理由を考えておいたのだ。よくある設定だがこの子供の体で無理のない理由だとこんなところが妥当だろう。


「それはまた難儀やなぁ」

「……コクコクッ」


 ミタマさんはうなずいている。

 ミタマさんってあんまり喋らないのな。いや、さっきのあれで警戒している? それだったら非常に無念である。


「ミタマさん、すまない。さっきので気分を害したかな」


 ふるふる。彼女は顔を振って否定している。


「あー、この子は普段あまり喋らへんのよ。それが異性なら尚更。ノブ君の場合は緊張しているからやと思うよ。命の恩人やしね」

「……ありがとう、おかげで助かった。あと私もミタマでいい」


 ミタマさんははにかみながらそう言った。ふおぉ、可愛い。

 遠目からでも綺麗だったが近づくと本当、二人とも美人だな。


 ミタマは銀髪、碧眼。薄手のレザーアーマーに短剣と小弓を携えている。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるナイスバディ、大きく自己主張はしないが割りと大きめな胸がレザーアーマーでちょっと強調されているのが憎らしい。身長は悲しいかな今の俺よりちょこっと高い。

 フツノさんは金髪、緑眼。巫女服っぽい薄手のローブに杖と短剣を装備している。なにより主張しているのはそのお胸。かなりのボリュームである。メロンが二つあるようだな。さっきの戦闘中もぽいんぽいん弾んでいてついつい目で追ってしまったのは内緒だ。おかげで目を奪われている隙に攻撃をくらってしまったりしたけど……。


 二人とも俺の好みのどストライクなんだが……。こんな子たちとパーティ組めたら最高なんだろうな。

 これも縁ってことで大事にしよう。ここに落としてくれたグネにも感謝しないとだな。



「それにしてもなんだってこんなところで絡まれていたんだい?」


「うちらは採集の依頼でこっちへ来てたんよ。採集も終わっていざ帰ろうってところであのゴブリンの集団に絡まれてん。たぶんやけど採集の依頼品がゴブリンの好む“ランプトゥンの実”だったからやと思う」


 ほほう、アレはゴブリンが好むのか。このリュックじゃなかったら匂いでこっちへよってきたかもしないな。やっぱりこういった情報は大切だよね。


「なるほどね。それでこれからどうするのかな?」


「幸いノブ君からもろたポーションのおかげでミタマも歩けそうやしこのまま街へ帰るわ。無理せずゆっくり行っても3日あれば着けるしな」


「もし、よければ俺もついて行ってもいいかな? 地図ではなんとなく向かう方向はわかるんだが知っている人がいるなら助かるんだけど」


「あら、それならうちらも助かるわぁ。でも、美女二人に囲まれてもおイタはあかんよ? 火傷じゃすまへんで?」


「ははは、それは勿論。同意がなければしまへんよ、お嬢さん」


「あはは、ノブ君ませとるなぁ。ほな、ゴブリンの討伐部位剥ぎ取ったらいこか。いまから出れば道中の宿場町になら日が沈む前に着ける筈やで」


 悲しいかな、フツノさんの中じゃ俺は子供扱いなんだな。まぁ、仕方ないか、背低いし。というよりも年齢は結局どうなるんだろうね、俺。元のなのか肉体年齢なのか合計なのか。

 いや、それよりも討伐部位ってなんだ?


「ゴブリンの討伐部位?」


「あー、情報に疎いならそれもわからへんか。そこらへん道中話すさかいにゴブリンの左耳と胸の辺りにある魂石回収してまおう」


 俺は二人の作業を横目に見よう見真似でやってみる。ナイフを使って左耳を削ぎ取り胸を切り開いて魂石と呼ばれるものを探してみる。ちょっといやな感じがするが思い切って手を突っ込む。

 ん? 小さな硬い物があたってるけどこれかな。

 摑んで引き抜くと黒い結晶のようなものがとれた。これが魂石か。ラノベとかでよくある魔石とかと同じようなもんかね。そういうことにしておこう。

 2匹、3匹とこなしていくとだいぶ慣れた。イノシシ捌くのより楽だな。


「ノブ君、随分手馴れてるんやね。もう、うちより剥ぎ取りうまいやないの」


「家事がなんでかLv5もあるからかな。まぁ大き目のイノシシ捌くより楽なもんだよ」


「か、家事がLv5!? なんでそんなに高いの!? そして森の中におったんになんでわかるん? スキルなんかはギルドカードか鑑定官とかに見てもらわんと判別できひんのとちゃう?」


 うわーお、やっちまったなーーーー。そうか普通は鑑定なんてできないのか。んー、どうしよう。


「じ、爺様が鑑定のスキル持ちだったんだ。亡くなる前に丁度俺のスキルとか見てもらったんだ」


 よし、これならきっと大丈夫…なはず。


「そうなんか。それにしても家事Lv5か。家事が壊滅的に駄目なうちらには輝いてみえるわ」


「そ、そうなの?」


「そうなんよ。しばらく前にミタマが作った渾身の力作はオークを一口で仕留めるほどの威力を発揮したで?」


「まじですか」


「……」


 ミタマは顔を手で隠していやいやしている。

 なにこの超可愛い生き物。お持ち帰りしたいわ。


「よっしゃ。回収も終わったし町へ帰るで。ほな、しゅっぱーつ」


 フツノさんに促され町へと足をむける。この人ノリいいよね。


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[良い点] 徐々に強くなっていく展開はお好き。 [気になる点] 初っ端からからヒール使う戦士はどうのとかを気にするのは違和感が凄い。強制的に隠す展開に持っていってる感じ
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