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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第70話 ギルドマスター襲撃!

新章開始!

 現在、俺は木人の前で剣を構えている。月猫ではなくて刃引きの鉄の剣だ。


 事の起こりは1時間ほど前。諸々の報告と武技習得の報告、それと冒険者ギルドに対する交渉の為の助力をお願いしに師匠の下へと来たんですよ。


「やりました! 適性のある武器がありまして遂に武技使用可能になりましたよ!!」


 ソレを話したときの師匠はあんぐりと口を開けてビックリしていた。あれ? いつもと反応が違うぞ。


「いやいやいや、いくら何でも早いじゃろう。見切りをつけて他の武器を試すにしてもそこまで至るのに三ヶ月はかかるもんじゃぞ、普通。才能あっても一月半はかかっていたんじゃが、うーむ」


 そして押し黙る師匠。嬉しさの余りそのまんま報告してしまったがこいつは失敗しただろうか。


「まぁ細かいことはいいわな。それじゃ早速それを見せてみい。ほれほれ、的はそこの木人でええのぉ」


 そうでもなかった! アバウトすぎるところが素敵です、師匠。そうして冒頭に戻る。月猫だとそれのみでもかち割っちゃいそうなので刃引きの鉄の剣を借りることになったのだ。


「それじゃいきます」


 攻の型で構え一息吐きつつギッと正面を見据える。


「武技『震刀・滅却』!」


 ヒィィィンと小さな唸りを上げて鉄の剣が振動しそのまま木人へと切りつけた。そしてスパンっと木人は両断される、刃引きなのに。切り口もつるつるでまさに真っ二つという感じである。

 が、変化はそれだけではなかった。

 ボロリと鉄の剣の刀身が粉々に崩れ落ちた。細かいどころじゃなくまるで砂のようにだ。流石にこれには俺も仰天したよ。困惑した表情を浮かべながら師匠へ振り向くとあの人ですらぽかーんと口を開けている。おーまいがー。


 やがて師匠も落ち着いたのかおもむろに口を開いた。


「まさか最初に覚えたのがソレとはのぅ。いいかノブサダ。その武技だが人前で使うのは極力避けるほうがいい」


 えええ! まさかの封印宣言ですか!?


 師匠の話によると四番目の弟子であるジュノーという人が各国の代表が技を競う他流試合が開催された際に対戦した相手が使ってきたのを見たという。その相手はヒノト皇国代表十三代目ジュウゾウ・トウゴウ。流派は『震蔭流』。どこの剣聖さんの流派ですかい。

 互いに刃引きの刀と大剣で相対したそうなんだがこの技を使い大剣の刀身を半分に『斬った』らしい。それでも半分の大剣と体術を使い試合自体は引き分けに終わって遺恨は残らなかったようだ。その後、ジュノーとジュウゾウは意気投合し友人となる。

 それはそれとしてだがヒノト皇国のサムライ連中は手の内を見せることを極端に嫌うようで流派の奥義を習得していると知れたら下手すれば命すら狙われかねないという。

 いーーーやーーー。折角の武技なのにー。あまりといえばあまりの仕打ちでござる。はぁ、がっくりだ。



 さらに言葉を続ける師匠。


「それに余程の業物でもないとその鉄の剣同様に武器がもたんじゃろうて。お前の愛刀じゃから形を保っておるが連続して使えばそれすら危うい気がするのぅ」


 なんてこった。まさに切り札的に運用するしかないか。世に3本しかないっていう活魂刀シリーズを含め丈夫な刀の収集も目的に追加だな。くそぅ、なんで最初の一個目からこんな大技がくるんだ。憂さ晴らしに今度駄女神にお供えするときにはロシアンまんじゅうを作って一つにハバネロを入れてやろう。うん、そうしよう。売ってればだが。


「それにしても……」


 ん? なんか意味ありげな顔してどうしました?


「なにやら一皮向けたか? 随分とすっきりした顔しているようじゃが」


 ビクン!! 思わず直立してしまいました。何のことやら、ははははっと流すことが出来ずに今までの経緯や先日までおきてた事件の詳細、果ては昨夜告白したことまで吐かされてしまったよ、肉体言語で。師匠、どこかの不敗な方じゃないんですから拳で語り合わないでください。あれ? そういえば師匠の声ってあの人にそっくりだよね? おや、なにか背筋がぞくっとした。世の中には触れないほうがいい事があるようだ。



 そんな師匠は現在何やら思案顔。今度はなにを企んでいるんですか。


「のう、ノブサダよ。お前、エレノアのことはどうするんじゃ? 儂的には一緒に娶ってもらうほうがいいんじゃがなぁ」


 いいんですか!? いやいやいや、ぶっ飛びすぎです。エレノアさん本人の意思すら確認してないですしね。


「ただ、条件はある」


 ごくり。思わず喉が鳴る。一体どんな過酷な条件なんだろう。師匠だし……ドラゴン狩って来いとか魔王しばき回して来いとかないですよね???


「早めに孫の顔が見たいのぅ」


 おふう!! からかいましたね! 確実に。ニッカリと微笑む師匠の前で四つん這いになってがっくりする俺。この人を超えられるときは来るのだろうか。俺は……この人に、勝ちたい! 悪戯でもなんでもいいから!!




 ひたすら弄られているうちに大事な用件があったことを思い出す。


「師匠。実はですね……」


 バカボンボンのところでこんな証文などを回収したことを伝える。前回、今回といい冒険者ギルドの上層部には随分と腐った輩が蔓延っているんで何とかできないかなと。


「ほうほう、これはこれは。アミラルのやつが悩んでいた事がまるっと解決できそうじゃのう。あのいけ好かない奴等に目にもの見せてやれるの」


 師匠の目がマジだ。これはヤるきだぜ。


「ならばこれからすぐにあやつの所へ押しかけるとしようか。善は急げじゃ」


「のおおおおぉぉぉぉぉう」


 師匠にがっしりと手をつかまれ物凄い勢いで引っ張られるとです。痛たたたたたた。体が勢いで浮いてます。俺、高機動輸送魔法一式とか使ってないのに風を受けて浮いてるんですが。ひらひらとアニメさながらに宙を舞いながら冒険者ギルドまで連行されたのであります。






 そして本当にギルド長のところに押しかけた!!!


 エレノアさんも連行して一気にギルドマスターの部屋に押し通ったのである。俺もエレノアさんもギルドマスターも呆気にとられている。初めて見るギルドマスターは渋いダンディなおじ様。温厚そうに見えて明らかに部外者な俺に怪訝な目を向けていらっしゃいます。それはそうだろう。俺だって戸惑っているもの。



 名前:アミラル 性別:男 年齢:68 種族:ハーフドワーフ

 クラス:ソードマスターLv44  状態:健康

 グラマダ冒険者ギルド・ギルドマスター

 称号:【剣王】


【スキル】 

 両手剣Lv7 片手剣Lv7 身体能力Lv6 回避Lv6 闘気Lv5 直感Lv4 危険察知Lv4 指揮Lv5



 ドワーフにもハーフっているんだね。純粋なドワーフと違ってすらっとしており背丈は180cm近くある。師匠と同じ歳なのにかなり若く見えるな。ぱっとみで40代くらい。それにしても【剣王】ですか。やっぱりこの街のおぢ様方の実力って高すぎないだろうかね?


 我に返り俺が居心地悪くしているけれどもエレノアさんも突然のことに口元を手で覆って戸惑いを隠せないでいる。堂々としているのは師匠だけだ。


「おう、アミラル」


「『おう、アミラル』じゃない。先触れも無く急にどうしたんだ。それに隣にいるのは……たしかノブサダ君だったかな。先だってはこちらの依頼の件で迷惑をかけたね。すまなかった」


 そう言って俺のほうへ頭を下げる。これにはビックリした。下っ端でしかない若輩者の俺に組織の長が頭を下げるって普通ありえないだろう。限られた人の前とはいえ度量の広さに感服である。


「いえ、ギルドマスターのせいじゃないですから。むしろ、これから話すことにご協力いただければそこら辺も払拭できると思うのですが……」


「ふむ?」


 すーっと眼が細められ緊迫した感じがする。だがここでびびってはいけない。協力を貰って幹部連中の引き締めor追放をお願いしたいのだ。


「先だって俺の大切な人である『風のしっぽ』の二人がとある依頼から盗賊団と思しき輩に捕らえられ危うく奴隷にされるところでした。幸いにして逃げ出したミタマから情報を入手。俺と【血煙の戦乙女】の異名を持つカグラさんとで根城を襲撃し二人を奪還、一緒に囚われていた奴隷5人と捕まっていた数人を救出しました。その際、盗賊団の頭の部屋からこのような証文と誓約書を入手しました。ご覧ください」


「こ、これは……」


「ご覧の通り盗賊団とこのギルド幹部数名の取引記録、しかも違法奴隷のです。先達ての俺の件といい今回の件といい上層部にこういった輩と懇意にされている方がいると我々末端のほうへととんでもないとばっちりがくるんですよ。なのでそういった人たちをどうにかできないかと師匠に相談したところ……ここへと乱入するという暴挙になってしまったのです。正直、俺も直接乗り込むとは思ってもいませんでした」


 アミラルさんと二人で師匠を見つめる。見られた本人はどこ吹く風のご様子だ。コホンと一つ咳き込んだアミラルさんが言葉をつなげる。


「事情は分かった。この資料だけでも十分な証拠になる。幹部連中のサインまであるからね。だが、念のため衛兵隊の調査隊が戻ってから本格的に動くことになるだろう。それでいいかね?」


「ええ、確実に仕留めるほうが大事だと思います」


「確かにな。私のほうでも協力者たちと色々と手を打ってはいたのだが如何せん王都からねじ込まれた連中が発言力を持ちすぎていてね。これで形勢逆転の手が打てる。さて、これに対してなんらかの報酬を出さないとならないがなにか希望はあるかね?」


 ふむ、見返りって考えてなかったな。正直、余計なお節介さえ出されなければこちらとしては問題ないんだけれどもね。


「特に考えていませんでした。ギルド内の風通しがよくなれば良いと思っていただけなので。いずれ困ったときにでも何かしら助力をいただくってことでもいいですか?」


「ははは、君は欲がないな。だが、面白い。助力のほうも了承しよう。どれほど高いタイミングで依頼されるのか怖いがそれも楽しみなものだ」


 イケメンダンディは笑う仕草まで格好いい。う、羨ましくなんてないんだからね!


「のぅ、アミラル。この件に関しては公爵様へと伝えておくぞ? あの方もあやつらの腐敗ぶりには頭を悩ませていたからの」


「ふむ、そうだな。頼んでいいか?」


「おう」


「しかし、王都の肝いりで入ってきた連中はどこのギルドでも持て余しているようだな。錬金術ギルドだけはギルドマスターがあっちのやつだからニマニマしていたが……」


「そうじゃのう、例の店主が死んだのもやつらが関与していたかもしれんしの」


 あ、師匠すいません、それたぶん俺です。俺俺、俺だよ、俺。失礼しました。

 なんというかなんで王都の連中がここの幹部にねじ込まれていたんだろうね? ギルドはたしか各国で独立しているものだが国内のは同組織のはず。もしかしてグラマダと王都のほうで仲がよくない? ま、そこら辺は下っ端のでる幕じゃないよな。こちらとしてはさっきのアレで余計なことしそうな奴等を叩き落としてさえくれればいいんでね。


いつから襲撃されると思っていた!

ええ、師匠なら乗り込むだろうなと書きながら修正しましたよ。

作者の中で師匠のCVは秋元の御大でございます。不敗なあの人とか衝撃のあの人と被るんですよねイメージ。

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