第64話 フツノ救出戦 その伍
トウゴウ公爵はいつか出したいなぁ。
いつになるか分からないけども \(゜д゜)/
月猫の切っ先をバカボンボンの真正面に据えてエアバインドを解いてやる。
「ひっ……」
「さぁ、キリキリ話してもらおうか。お前の組織はこれで全部か?」
目の前に突きつけられた白刃に怯えの色が隠せないバカボンボン。きっと荒事は全て部下や奴隷任せで高みの見物してたんだろうな。この際だから根こそぎ壊滅させてやろう。
「はっ、話すからっ。それを近づけないでくれよ。さっきまでのがうちの全戦力だ。あと残っているのはこの屋敷にいる奴隷の使用人と売り払う予定だった地下牢に捕らえてあるものたちだけになる」
使用人としての奴隷は5人。全員、拉致や無理矢理負わせた借金のかたに召し上げられてきた女性である。囚われている面子も同様で見目のいい男女が数人残されているらしい。数が揃ったらまとめて隣国や貴族へと売り払われることになっていたようだ。ヤクザみたいなもんだと思っていたんだがもう盗賊団だな、こいつら。
「それじゃその借金の証文とかどこにあるのかね?」
「ああ、僕の部屋の隠し棚に保管してある。もう、これで全部だよ。素直に話したんだから解放してくれないか?」
さっきまでの弱腰はどこへやら、なんというかどこまでもふてぶてしいな。フツノさんやクレイさんにあんだけしといて自分は解放されようってか。そもそも、解放されても後ろ盾であるジャミトーはもういないんだけどもね。
「解放というかこの後は牢獄いきだぞ?」
「な!? 貴族の子息たる僕が監獄だと!? ありえないね、支援者や伝手でどうにでもなるさ」
言っちゃっていいのかよ。もう絶望するまで追い込んだほうがいいな、こいつ。
「後ろ盾のジャミトーなら先日事故で死んだぞ。そういえば近々大掛かりな捕り物があるらしいけどもな。はてさてお前さんの伝手が通じるかねえ」
バカボンボンにドヤ顔で情報を突きつける。予想通り有り得ないというような顔をしてくれる。捕り物のほうは嘘だけれどもここで事実なんて分からないだろうから脅しには十分だろう。
「嘘だ、嘘だ嘘だうそだぁぁ……」
壊れたプレーヤーのように『嘘だ』を繰り返すバカボンボン。予想外な事に対するメンタル面の強度は陶器のように脆いらしい。とりあえずバカボンボンの追い詰めは完了したし捕まっている人の解放や証文の取立てと財産没収の刑を進めますかね。あ、しっかりとリビングアーマーの剣と盾は没収してあります。
月猫を鞘へ納めミタマたちへと振り向く。フツノさんはまだ気がつかないためミタマが抱えている。カグラさんは縮んでしまって幼女化しているが準備していた子供用の服へ着替えていた。あれ? そういえばデイブ倒したのに呪いは解けてないのか?
とりあえずこの場を離れてやることをやってしまおうと思ふ。彼女らはフツノさんが目覚めるまで休んでもらおう。クレイさんの抑えは縛ってからカグラさんに見ていてもらおう。
「お前だ! 全部お前のせいだぁぁぁぁぁ」
バカボンボンが絶叫しながらこちらへ向かってくる。右手を振りかぶって……爪になにか仕込んでいるのか? 俺は落ち着きながら振り向く。
振り向き様、居合いでバカボンボンの右手を切り上げ吹き飛ばした。
「ぎゃああああぁぁぁぁ、ぼ、僕の右手がぁぁぁぁ」
大方、呪毒でも仕込んであったんだろうな。もはやどうでもいいけれども。
レベル差はあるからどれだけ通じるか分からないが駄目押しでこれをプレゼントしてやろう。レベル差は込める魔力量でカバーできるかどうかだな。出血による朦朧とかで抵抗もほとんどないとは思うけれども。
「一思いにっていうのはしてやらない。今までの悪行を悔やんで逝くといい。ペイン!」
暴れるバカボンボンの額に指先を押し付けて魔法を発動する。ペインは四肢へと痛みを与える魔法だが威力を高めれば皮膚になにかが触れただけで悶絶するほどの効果を発揮する。
魔物相手に試してみたのだが最高出力でかけた相手は歩き出してすぐ倒れ込む。そして転がりまわる度にのた打ち回りさらに己を傷つける。やがて発狂したのかピクリとも動かなくなった。
そんな魔法をこれでもかと威力を高めてかけてやる。バカボンボンはもはや声も無くただただヒクついている。出血もありそのうちに息絶えるだろう。だが慈悲は無い。無いのだ。
フツノさんを抱え広間を出る。本当はカグラさんの母親を抱えようと思ったのだがカグラさん本人が自分で運ぶときかなかったからだ。色々とグロいことになっているので入り口はストーンウォールで塞ぐ。そんな時、外で待機していたタマちゃんから連絡が入った。
◇◇◇
ふう、なんとかバレずに抜け出せたか。子鬼があれだけ強くなっているとはな。だが、まだ呪いは有効なようだ。一先ずここから脱出したらいずれあの体を俺のものにしてやる。
だが、このままでは移動すらままならないからな。森にいる動物の死骸でも構わんからなにかしらの動物へととりつかねえと……。
門を抜け森へと向かってゆらゆらと進んでいく。まったく進まないこの体がもどかしい。今のうちならあの小僧どもも坊ちゃんに掛かりきりでこっちのことまで気が回らないだろう。
それに魔法以外にゃこの体を傷つけることはできねえからな。子鬼の武技には驚いたがあれくらいの炎では俺にトドメを刺すほどじゃない。
ドゴーン
なんだ!? いきなり後ろの地面が爆ぜただと!?
一体何が起きている! ここもやばい気がする。急げ、急げ俺。
まるで俺の後を追うように爆発が続く。やめろ! くるな! くるなぁぁぁぁぁ!
◆◆◆
「たーまやー」
屋敷から見える爆発模様。もやっとしか見えていなかったデイブの本体が爆発に巻き込まれて霧散した。タマちゃんナイスサーチ。いいお仕事です。
バカボンボンが逃げ出したときのために仕込んでおいた『機人片塵爆雷』の数は十数個。均してあった道路は爆ぜてボッコボコになっている。いや、全部爆破することもなかったかな。
これで今回のロクデナシどもは全員だろうか。さてさてほんじゃあとは後始末だな。
女性陣は皆まとめて休んでいる。奴隷として働かされていた人たちも保護して一緒に居てもらっている。残党が隠れているかもしれない可能性を考慮してだ。ここに来てすぐ事情聴取したちょっとふくよかな年上の使用人から屋敷の構造を聞き出し俺一人で回収と解放に動いている。
バカボンボンが使っていた部屋で隠し棚を見つけ中から証文や取引の証拠を回収した。中には錬金術ギルドや冒険者ギルドを含むギルド上層部への賄賂や奴隷取引などの書類もある。ジャミトーのものと合わせれば恐らく悪徳な連中は排除できる気がするな。帰ったら師匠かエレノアさんに頼んでギルドで信用できる人を紹介してもらおうか。
次いで財産没収。隠し金庫なども込みこみで探す為、屋敷全体へ『サーチメタル』の魔法を発動する。この魔法かなり使い勝手がいいので愛用しているのだ。魔力を込めれば込めただけ範囲が広がり地下深くまで探したり出来る上、金、銀、鉄、果てはミスリルまで鉱物ごとの判別が可能という壊れ性能。まだ宝石や見たことの無い鉱石など詳しくないものは種類分けできず判別不能なのだが俺自身の知識を深めればそれもできそうな気がする。
おっと脱線した。満遍なくサーチしたところ金や銀が固まっているところが2箇所ほどある。通常の倉庫と隠し倉庫ってところだろうか。はい、全部没収ですよー。
広めのところにはそれなりの金貨、銀貨がありほいほいとリュックへ突っ込む。問題はもう片方の隠し倉庫。なにこれバカボンボンの趣味だろうか?
黄金の髑髏や黄金のコウモリの置物とか気味の悪いものがずらりと並んでいた。幸い呪われた品などはなかったのだが持ち帰るには悩むものばかり。仕方が無いので宝石なんか以外は放置することにしたよ。どこかで売ろうにも出所が疑われるしね。しかしあいつの趣味が分からんな。
あぼーんしますた。
誰か忘れてる? 後から後から。




