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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第三章 お金の錬金術師
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第55話 後始末はしっかりと 後編

本日2話目。これで錬金術師編はおしまい。

 そのあとは今回お世話になった皆さんへ挨拶回りをした。


 おやっさんにはお酒を渡し協力してくれたことに頭を下げる。気にするなと豪快に笑うおやっさん。むしろ無事だったことを喜んでくれた。男前である。


 マニワさんの店にもお礼を言いに行ったのだが生憎マッスルブラザーズは店にはいなかった。それもそうか、相手は冒険者だしな。どこにいるかわからなかったのでお礼と一緒に言付けをお願いすることにした。

 非売品のポーションセット(通常よりも魔力を込め品質が上がったもの)をマニワさん含め人数分渡しておく。


 俺がセフィさんのところへ走ってからどうなったかの顛末を聞いたのだが依頼を受けただけの冒険者連中は二度と手を出さないことを約束させ解放。ジャミトーの側近3人は現在マッスルブラザーズの下で鍛え直されているとの事。ずいぶんと甘いペナルティにも思えそうだがヤスゥーダ流の鍛え直しっていうのはちょっと怖そうである。マニワさん曰く健全な筋肉には健全な魂が宿るというなんとも脳筋よりな教えに従いスペシャルでハードかつ少しだけアダルティな教育コースを施しているらしい。おおう、思わずブルってしまいそうだ。特にアダルティなところに。


 折角寄ったのだからと穴だらけになった衣類を直すために布何枚かと新しい毛布を買っておいた。普段使いのだと地べたにひいてたりしたからクリアを使っていても部屋の中で使うにはちょっとだけ抵抗があるのだ。



 次は手に入れた情報をミタマたちへ伝えようと『炎の狛』を訪れるも生憎と依頼で出かけているらしく言付けだけ頼んで店を出た。


 訊ねるところはこんなものかと思い食材の買出しに向かう。今日から世話になるのだしちょっとだけ豪華な食事にするのもいいよな。肉はたくさん残っているし問題はない。数の無かった卵や調味料数点と果物なんかを買い込んでおく。あれ? くまはっつぁん、牛乳とバニラエッセンスあるじゃないの。どこから仕入れたのか気になるところだが使えるものは使う。こいつぁ買いだね! 久々にあれを作ろう。きっとセフィさんも喜んでくれるに違いない。





 セフィさんの屋敷につく頃にはお昼を大きく過ぎていた。

 屋敷に戻るとセフィさんは……やっぱり寝ていた。

 おかしい、急ぎの納品依頼があったはずじゃなかったのだろうか? だが幸せそうに眠っている姿を見ると今は起こさなくてもいいかなと思ったりする。ここ数日色々ありすぎて彼女もそんなに寝ていなかったのかもしれないしな。


 俺は物音を立てないようにこっそりと台所を目指した。起きる頃には食べられるようにもう作っておこう。



 卵、牛乳、砂糖、バニラエッセンス。ここまで揃えば何を作るかはもうお分かりだろう。そう、プリンである。タマちゃんのもち肌にも負けないぷるぷるぷりんぷりんなプリンを作ろう。甘味って男でも無性に欲しくなるときがあるよね。流石にバケツプリンは自重したけれども。


 んで、こちらが本日のメニュー。

 ルイヴィ豚のトンテキ、パンにサラダ、キノコのシチューとデザートにはフルーツポンチとプリンだ!


 さて結構いい時間だしセフィさんを起こして食事にしようか。ああ、あとで依頼の件について聞いておこうかな。どれだけ手伝うのかも確認しないといけないしね。



 食堂に料理を並べて居間のセフィさんを揺り起こす。


「セフィさん、食事の用意が出来ましたよ? そろそろ起きてください」


「……ふうん、あと5時間~」


「寝すぎです! 起きないならこうです」


 セフィさんの足をくすぐってやる。手加減はなしだ。


「ひゃあああああ、いやん、やめてぇ、あはははふうううん。んもう、ノブちゃんたら酷いわぁ」


「食堂の様子とか見ましたけど今朝俺が出てからなにも食べてないでしょう? セフィさんは放っておいたらお酒しか飲まないんだから多少強引にでもしないといけないんです。体調のほうも心配ですからね」


「ノブちゃん……」


「ほら、冷める前に食べましょう。食後にデザートも準備してありますから楽しみにしていてください」


「うわぁ、これはまた美味しそうねぇ。うふふ、いただきます」


 一度食べ始めてしまえばさすが肉食女子(意味が違う?)、用意した品々をぺろりと平らげた。見ていて気持ちのいい食べっぷりである。ミタマたちにも劣らないな。


「んーーーー。あまーーいぃぃん。このプリン私大好きだわぁ」


「お気に召したようでなによりです。そういえば、急ぎの納品依頼っていつまでにどれくらい作ればいいんですか? 俺が手伝うようなら結構な量なんでしょう?」


「んふう、実はそこまで多くはなかったり? 明後日までに標準品質の桃味ポーションを30本だからぁ。たしか注文書が机の上にあったはずよぉ」


 プリンを幸せそうに食べながらセフィさんはそういって居間の方を指差した。


「ああ、それじゃ俺がとってきます」


 それにしても30本か。きっとセフィさん一人でも余裕で作れるだろう。ま、これは方便で心労から心細くなっていたと考えるほうが妥当だろうな。

 机の上、机の上っと……あ、これか。なになに、うん、確かに明後日までに……300本!?

 ちょっとまて、桁が一つ違うぞ!?


「セフィさん。この注文書、納品本数が300本になってますが!?」


「え゛!?」


 手渡した注文書をまじまじと見つめ目を丸くする。そして、こちらへゆっくりと青ざめた顔を向けた。


「いーーやーーん、見間違えちゃってたわぁ。ど、どどど、どうしようかしらぁ。そうだわぁ、総隊長さんがこの間の飲み比べで勝ったから一つだけお願い聞いてくれるはずなのよぅ。注文をなかったことにしてもらえば……」


 注文書を持ったままあたふたと慌てふためくセフィさん。ちょっと落ち着いて。注文名義が師匠の部下の人だからあまりにもそれは不憫すぎる。ストレスで30歳手前なのに前髪の後退をかなり気にするくらいだから。300本口の依頼を無いことにしちゃったらごっそり抜け落ちちゃうんじゃないだろうか、色々と。


「落ち着いてください。残っていた素材と容器、それから作成用の機材はどこですか? 俺も手伝いますからすぐに作り始めましょう。今からなら二人でやれば余裕があるはずです」


「え、あ、うん、そうよね。機材なんかは空いてる部屋に纏めてあるから荷解けばすぐにでも始められるわぁ。ありがとう、ノブちゃん」



 セフィさんはなんというかこう放っておけない感じするよね。そんなところが可愛いと思ってしまうのは大分やられちゃてるのかね、俺。

 こうして引越し先での慌しい生活が幕を開けたのだった。


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