表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第三章 お金の錬金術師
52/274

第48話 立塞がる壁はぶち壊すものである


 目を覚ますとちょっとおかしな事に気付く。岩壁の外側になにかの気配がするのだ。

 音を立てないように近づき壁に耳を当ててみる。


「変だな。ターゲットがダンジョンに入って3日目。順調ならすでにかち合ってもおかしくないんだがな」


「フム。相手はソロだというし途中で殺られたとは考えられんか?」


「いや、奴さんは従魔を連れているって話だわいな。そうそうやられるとも思えないわいな。もしかしたら追い越してきたかもしれないわいな」


「で、どうするのよ。たかだか15の子供一人相手に私らが出張ってきたんだから確保できませんでしたじゃ済まないでしょう?」


 どうやら相手は4人。男3人に女1人。従魔の情報持ちってことから俺を探してきたらしいと思われる。たぶんだがボス前で張り込みしようとここへ詰めているらしい。まさかターゲットがすでにそこへ潜伏しているとは露にも思うまい。こちらの対応は相手次第だがどうしようかね。



「ジャミトー様からはある程度痛めつけるのは問題ないと言われているがな。ナイナ、ここで張り込んで待つか?」


「そうね、強行軍で来たからそれもありだと思うわ」


「ならば準備するわいな。ま、いつものとおりたいしたもんはないけども。カックリコ爺、腰のほうは大丈夫かいな?」


「やれやれ、年寄りには辛いのう。ダンジョンへ篭るのも久しぶりじゃわい」



 OK、自白していただいたようだ。手が回るの早いな、さすが大手の商人といったところか。先手必勝で仕掛けたいところだが相手は人間、しかも同業だ。うまいこと立ち回らないとこっちが不利になる。

 手持ちの物と魔法を見直しどうするか考えよう。


 ……


 …………


「ふう、飯も食ったし。交代で休むとするか……っておい。俺を残して寝てるんじゃねぇ」


「すまんわいな、どうも疲れがでたようだわいな。ジェリンド、あとで変わるから先によろしグー」


「「zzzzzz」」


「くそう、俺だって眠いんだぞ。おかしいな、なんだってこんなに眠く……グースーピー」



 そうして寝こける4人の冒険者の後ろの壁がスーっと消え去った。


 よしよし、どうやら成功したようだな。

 今回俺が使ったのはドクキノコシリーズ第一弾『ネムリタケ』の粉末だ。俺が空気口として開けていた穴から風の魔法に乗せて粉末を飛ばしたわけだ。効果はご覧のとおりである。

 さて、こいつらはと……。


 一人一人に魔法をかけて行く。これは暗黒魔法のカースを改変したものである。カースとは所謂呪いの魔法だがこれはそれの拘束力を弱くし誓約のような魔法に仕立て上げた。こっちからの一方的な誓約だがね! まさに外道。ま、そんな酷い命令みたいなのはできないんだけどもな。


 全員、俺らに手を出そうとすると各々の最も大切にしているものを害するように見え、その行いに忌避感を感じるようになる効果がある。これでいざというとき少しでも躊躇してくれれば儲けものだ。ステータスを確認しても状態の欄は健康と出ている。いよっし、やはり呪いとは認識されていないようだ。


 足がつくことは極力避けるべし、コレ大事。


 ちなみに師匠に実験台になってもらったんだが亡くなった奥様の面影が重なったらしく思い切り抱きつかれてしまった。師匠のあの筋力で! 背骨がへし折れるかと思ったよ。


 この4人を寝こけたまま殺されるのは忍びないので6時間ほどで消える石壁を作っておいてやろう。ネムリタケの効果は2時間ほどで切れるので残りの4時間は閉じ込められててくださいな。閉所恐怖症になっても責任はとらんがね。


 その間に俺はボスを倒してしまうとしようか。


 ダンジョンでは5Fごとに階層ボスが存在するらしい。ただし、何の敵が出てくるかはランダムで運が悪い人になると低階層ではお目にかかれないモンスターが出る事もあるようだ。悲しいかな、自分で言っててなんだがフラグ建てているようにしか思えない。


 魔法で強化を済ませボス部屋の中へ入る。入ってきた入り口が赤い靄に覆われ逃げ出すことが不可能になるのが視認できる。さて一体なにが出てくることやら。



 オークシールダー Lv22

 HP:180/180 MP:48/48

 豚面の大柄な魔物。動きはさほど素早くないものの膂力が非常に高く力任せに振るわれる一撃は危険。

 ゴブリン同様他種族の女性を孕ませて繁殖することから激しく忌避される。シールダーは一族の中でも特殊なオークのみがなれるクラスで比較的上位の実力を持つ。



 やっぱりだーーーー。引きの悪さは折り紙つきですよ、おっかさん。見た目はまさにハー○様なんだけども……。やっぱり鈍器類はずぶずぶっとめり込んじゃうのでしょうか。


 泣き言を言っても始まらないので月猫を抜き放ち相手の出方を窺う。タマちゃんは俺から離れこちらも様子見だ。タマちゃんの判断で動くように指示し相手を見つめた。

 対してオークシールダーはなにかしらの武術のように構えた後、じっとこちらの様子を窺っている。

 しばらく対峙するもあちらから動く気配はない。そもそもシールダーっていうくせに盾持ってないんだが。なんとも不気味だ。


 このまま待っているだけでも仕方がないのでこちらからアクションを起こすか。色々と試し打ちさせてもらうぞ。


氷結弾アイシクルブリッツ!」


 魔法の発動と共に親指大の氷の弾丸が瞬時に生成され勢い良くオークシールダーめがけて射出された。


 パキィィィィン


 が、それがオークシールダーへと届くことはなく中空にて消滅してしまう。

 なんとー!?


氷結極太弾アイシクルマグナム


 先ほどよりも大きく回転も鋭い弾丸が今度こそはとオークシールダーに向かうも同様に消滅する。

 まったく同じ距離で消滅しているのが分かる。シールダー……バリアとかそっちのほうか!?

 ならば物理ならばどうか。鉄の槍を取り出し思い切り投げつけてみる。


 ヒュオン


 投擲のレベルも上がっているので精度、威力共に以前よりもワンランク上昇している。

 バリアとかなら強度以上のものが当たれば砕けるはず! 某研究所のだってしょっちゅう割れていた。自虐的に煎餅を名物にするほどパリンと!


 キィィィィン


 甲高い音ともに鉄の槍は弾かれガランと少し離れた場所へ転がった。良く見ればその尖端が欠けている。バリア自体に反射か何かの仕掛けがあるのか?

 下手に大技を放って反射されたらえらい目にあうかも知れない。コイツはまいったな。

 月猫ならば欠けてもすぐさま修復するし斬り続ければ限界も来るか?


 そう考えたらすぐに実行に移すべし。攻の型から先ほど弾かれた位置目掛けて走り出す。

 勢い良く振り下ろしたその刃は先ほどまでのように中空にてなにか硬いものにぶつかったかのように甲高い音を上げ弾かれた。自ら得物を振るって分かったのはなにかしら振動波のようなものが展開されているのか月猫を持つ手が鈍い痺れを感じている。

 それでもと次の斬撃を振るおうと下段から振り上げようとしたとき、オークシールダーが今までと違う動きを見せた。何もない虚空へ掌底打ちのように打ち込むとそれは衝撃となって俺のわき腹を抉った。


「ガハッ」


 なんだと!? ボディブローのような痛みに耐え一旦距離を取る。どうやらある程度の距離があると先ほどの見えない攻撃はできないようだ。しかし、ストーンスキンを無視して攻撃くらったぞ。

 ヒールをかけながら考察するにあのバリアみたいなのをそのまま打ち出してきているのか? なんか内蔵を揺らされたような気分の悪さがある。だが、オークシールダーはあの構えをとらないと衝撃波は打ち出せないんじゃないだろうか? あれに気をつければ攻撃を続けることは可能か。

 よろしい、ならば続行だ!



 今度は横薙ぎに斬りつけるもその刃もなにかによって遮られる。だが、今度は弾かれないようにギリギリと押し込むように両手に力を込め続けた。


 ギィィィィン


 なにかが削れるような音がする。よくみれば月猫の尖端が細かく削れるも再生能力にて修復されるというのを繰り返していた。

 ここにきてオークシールダーはその余裕の表情を変え苦々しい顔でこちらを見ている。そして先ほどと同じように掌底打ちを繰り出そうとした。

 その動きに合わせて身をかわす。予想通りあの掌底打ちの軌道上から逸れた俺にはあの衝撃はこない。掌の直線上にあのバリア(?)を打ち出す技なんだろう。

 掌底を警戒しつつ斬撃を繰り返していく。


 何度目だろうか、先ほどまでよりも抵抗が弱くなっている気がする。このままいけば削りきれるか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ