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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第二章 鬼姫邂逅
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第39話 カグラさんとの冒険 殲滅編

 簡単な食事を終えて一息ついたところで思考をしていく。


 兎にも角にもここから出る手立てを探さないとな。上を見やればまったく先が見えない。ここら辺の壁はどうにも崩れやすく登っていくとかは不可能に近いな。

 ならばと周囲を見渡せばいくつかの横穴が見えている。どこに繋がっているかわからないがここを進んでいくしかない。

 ただ、気になるのはさっきまでの洞窟と違い最近掘り起こされたもののように感じるのだ。

 なにかしらが存在することを念頭において行動すべきだろう。


 クラスを戦士と異世界人にもどし万全の態勢で挑む。レベルが上がっても錬金術師などは非戦闘職だからな。異世界人もそうじゃないのと思うのだがなぜかこっちにしたほうが魔法の威力が僅かだが増すのである。これを使わない手はないのだ。


「カグラさん。取り敢えずはそこの横穴を進んでいくしかないね。俺の後ろを着いて来てくれ」


「すまぬな。妾はこの体だと戦力外じゃ。まともに槍を振るうこともできぬ」


 彼女は服や装備を詰め込んだ自分のマジックリュックをなんとか背負っている。それだけで一杯一杯のようだ。


「仕方ないさ。タマちゃん、カグラさんを守ってくれな」


『任せておくんなはれ。主様もおきばりやす』と言わんばかりにぽよーんぽよーんと弾むタマちゃん。

 ちょっとまて、なんでタマちゃんの話してそうな言葉が京都弁っぽく感じるんだ? 更なる謎を醸し出しながらも今はそんなことを考えている暇などないと思い直して通路へと近づいた。


 通路の一つを選び奥へと進む。何度か行き止まりに突き当たり引き替えす羽目になるも今現在進んでいる道は奥へと通じているようだ。この通路、何かが急ごしらえで掘り進めたような感じがする。今すぐ崩れそうなことはなさそうだが早めに対処を考えないといけないだろう。

 カグラさんも何も言わずに後ろをついてくる。歩幅が小さくなっているので無理はさせないようにゆっくりと歩いた。



 どれくらい進んだだろうか。通路の先からなにか反響するような音が聞こえてくる。


 そーっと忍び足で進み一気に開けたところを覗き見る。真下に広がるのは体育館ほどの広さのすり鉢状のくぼみ。そしてそこには蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻…………その数50匹以上。遠目なんでさほど大きく見えないがうじゃうじゃと群れるその姿は正直怖気を誘う。



 アイアンアント Lv6×53

 HP:18/18 MP:1/1

 鉄の甲殻を持つ蟻の魔物。いわゆる働き蟻でヒエラルキーの中の最下層。力強い顎や酸の液、複数の腕で武器を扱うなど様々な攻撃方法を持つ。ちなみにアイアンアントの持つ武器は死んだ蟻の甲殻を加工したもの。



 アイアンアントクイーン Lv16

 HP:27/47 MP:28/48

 鉄の甲殻を持つ蟻の女王。年月を重ねるほど強く巨大になる。魔力を消費し単為生殖を行う。



 こいつらがこの空洞を掘っている犯人か。

 一匹一匹はそんなに強くない。クイーンもなんでか体力が減っている。出産でもしたか? 懸念があるとすればあの数だな。あれが一気に押し寄せてきたらカグラさんを守りきる自信がない。そうなると戦闘を回避するか一気に押し切るしかないってことだ。


 ん? 向かいに見える横穴の中で一つだけつくりが違うのがある。あそこからもしかしたら地上へでれるかもしれない。問題はあそこへいくには蟻の中央をつっきらないといけないことなんだがな。


「むぐぐぐ、あまり気味の良いものではないのぅ」


 俺が覗き込みながら考え込んでいると気になったのかカグラさんも身を乗り出して様子を眺めている。



 ガララッ



 見えにくかったのかもう少し前にでようとしたカグラさんの足元が崩れる。よろめく彼女の手を掴みぐいっと引っ張った。


 ガラガラといくつかの土片が真下の蟻達へ落ちて行く。



 ギ、ギィィィィィ



 あちゃー、気付かれたか。考えている時間がないな、こりゃ。


「はわわ、す、すまぬのじゃ」


「怒りはしないけども……。カグラさん、俺に命を預けてくれるかい?」


「妾一人ならすぐに果てるだけじゃ。なにをする気なのかは分からぬがお主に全てを託すぞえ」


 大して意味はないけども落ち着かせるのと俺自身の心の安定のために聞いたんだがね。ま、力強く肯定してもらったことだしやれることをしましょうか!


 俺らの真下の蟻達がギチギチと嫌な音を立てながら急勾配を駆け上ってくる。ちっと時間がないけれどもここは万全を期して詠唱ありでいこうか。


 詠唱込みで発動することにより魔力の消耗が抑えられ威力と精度が上昇する。改変魔法にてオリジナルの詠唱を組み込んだことで俺にもその恩恵が受けれるようになった。いまだ改善の途中で細かな制御や威力の安定という課題が残っているが今回はそんなことは完全に無視する。最大出力でぶっぱなすだけだから細かいことはいいのだ。


「波の谷間の命の華よ、波に揉まれ逆巻き咲き開け!」


鳴門海峡渦景色メイルシュトローム!!」


 アクアストームを改変した魔法が発動し俺の正面から一気に大量の水が波となり急勾配を下って押し流していく。その奔流は登ってきていた蟻を飲み込みすり鉢状の空洞にいる蟻すら巻き込んだ。全ての蟻が中央に集められ渦に揉まれている。その中には腕や足がもげたり変な角度に曲がってしまっているものが多々見受けられた。ははは、見ろ、蟻がゴミのようだ!


 苦し紛れに蟻酸を放つものがいるけれども勿論ここまで届くはずもない。巨大な蟻の酸だーとは格が違うな。


 阿呆な事を考えつつも次弾の準備のために魔力を錬りこむのは忘れちゃいけない。ぐいっとマナポーションを一気飲みしつつ残りの魔力のほとんどをつぎ込みトドメとばかりに追い撃つ。



「ハイホーハイホーチョーサンブーサンナカモッサン、雷様が通ります。近づくものは蹂躙ぞ、遠巻くものも蹂躙ぞ!」


雷様電撃大行進エレクトリックパレード!!」


 徹夜明けに考えてたからおかしな詠唱になっているのはごめんなさいだ。つーかなんでこんな詠唱になったのか俺自身よく覚えていない。徹夜明けのテンションおかしいです。帰ったら絶対に修正しよう。カグラさんがなんかかわいそうなものを見る目で見てるもんよ。


 サンダーを改変し指向性を完全に無視した威力重視の魔法。事前に水で濡らしかつ相手が鉄製の蟻だから問題なく運用できた。

 水や蟻自身の体を伝い雷撃が縦横無尽に暴れまわる。生まれたての蟻や手足がもげて弱っていた蟻からばたばたと倒れていく。数分後、雷様の大行進が過ぎ去ったすり鉢状の底は蟻蟻蟻蟻蟻蟻の死屍累々となっていた。んー、アリーヴェデルチッ!!


 あまりの惨状に言葉も出ないカグラさん。はっはっは、ぶっちゃけ鬼人族より俺のほうが危険物だよね。


 てれれてって……


 うん、そして駄女神のファンファーレを聞いている暇もないんだな。俺がやらかしたことではあるが嫌な予感がギンギンするのである。


「ノ、ノブサ……ダァァァァァ!?」


 カグラさんを抱きかかえ急いで通路を走り出す。急げや急げ。マナポーションをさらにぐい飲みしつつ足は緩めない。なんだかんで随分体力ついたな。師匠との訓練は伊達ではないのだ。


 途中、息が上がりそうだったので一度降ろして小休止をとった。ついでにクイーンの素材だけでもとその遺体をリュックへと回収しておく。さすがクイーン。波にもまれてもしっかり原型を留めていた。魔物の死体はマジックリュックにすっぽしと入れられるようである。生きているのは駄目なのにね。


「ノブサダ、他の素材はいいのか?」


「いや、ちょっと気になる事があるのですぐにあっちへ渡ります。いきますよ!」


「ちょ、まっ、あーーーー」


 再びカグラさんを抱え上げて目星を付けていた横穴へと駆け込んだ。

 なんでこんなに急いでいるか。それは大量の蟻、縦横無尽に掘られた横穴、掘りたての大空洞、そして最後に俺が派手にやらかした水魔法。これらが全部合わさることでひとつ導き出されることがある。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 ズズズーーーーン



 俺たちが息も絶え絶えになりながら急ぎ足で勾配を上り造りの違う階段へ差し掛かった頃、背後からなにやら崩れるような音が響いてきた。


 やっぱりである。あれだけ土砂災害の要素が重なれば当然そうなるよね。どんな余波がくるか分からないのでここも安全とはいえないだろう。疲れた体に鞭を打ち階段を上っていった。

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