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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第二章 鬼姫邂逅
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第35話 カグラさんとの冒険 谷間編

 ペズン村への道中は多少魔物に襲われたものの比較的順調に進んだ。


 ゴブリン数匹とジャイアントバットに襲撃されるもあっさりと撃退。だって俺とタマちゃんがゴブリン一匹ずつ倒す間にカグラさんは二匹目を終えているんです。はやい、はやいよ。

 まだ魔法は使ってないからなんだけどもね。片手剣のリハビリ中なんだよ。


 村まではあと数時間というところだがそれまで彼女と話しながらの道中だった。主に俺からの質問が多かったのだけどもね。

 やはり東の国には刀が存在するらしい。それどころか侍や忍者のクラスもあるようだ。そして味噌や醤油など食文化も日本よりだと言う。なぜならば東の国『ヒノト皇国』の初代は異世界から迷い込んだ人だったらしい。現在の文化から察するに日本人だったのだろう。カグラさんは端のほうに住む閉鎖的な村の出身らしい。彼女は10歳からずっと傭兵として活動し様々な国を渡り歩いてグラマダに定着したとの事。冒険者を始めたのはグラマダに着いてからだと言う。紆余曲折あったこれまでの冒険譚を面白おかしく話してくれた。


 俺もそのお礼にと夕食は張り切って作ったよ。石窯なしのなんちゃってピザとお野菜ごろごろのポトフである。

 鉄板の下では火をたき上からは俺が魔法で熱を加えた。具材は俺お手製の燻製肉とチーズにトマトソースとシンプルである。生地は常にストックをリュックの中に入れているので大概の場合に対応可能だ。ポトフのほうには試作品の腸詰とじゃがいもキャベツ、ニンジンをごろりと突っ込み煮上げた。ちなみに調味タレはグラマダへ着いて落ち着いてからずっと煮汁を注ぎ足しながら作っているのでどんどん味わい深くなっている。


 それらをカグラさんの前に並べた時は目を丸くしていたね。ミタマたちも言ってたけど通常の冒険者の旅路でこんな料理するやつなどいない。だが、そこは食のこだわりを持つ日本人。どんな時でも美味しい物を食べたいじゃないか。マジックリュックありきではあるが俺は美味いものを追い求めるのである。





「タマちゃんハウスっ!」


 ぽいーんぽいーんと飛び跳ねて定位置である俺の肩の上に着地するタマちゃん。ひょっこり現れた魔物を傷一つ負うことなく滅殺なさったところだ。



「この目で何度確認しても面妖じゃのぅ。なんでマリモがそんなに強くなっておるのじゃ?」


 タマちゃんが一方的な蹂躙をしたのはゴブリンアーチャー。おそらく斥候かなにかだと思うがここらへんにもゴブリンの集落あるのかね。

 はじめにカグラさんにタマちゃんを見せたときは何度目かわからん目が点状態になっていた。目の前で実力を披露しても半信半疑のようだ。タマちゃんは普通のマリモではないのです、なんせスーパーがついていますからな。そのうちタヌキやハンマーやカエルなマリモになったりせんだろうなという不安はあったりする。


「俺と一緒に戦闘してますからね。通常のマリモにはないほどの戦闘経験積んでると思いますよ。そのうちなにかの大会で世間をあっと言わせてみたいものです」


「たしかに衝撃的な展開になりそうじゃの、くくく」


 有名になったらグッズとか出しますか。マリモよう○んとか。



「それは兎も角として今日はこのまま洞窟に向かいそのままそこで夜営をする。ペズン村の宿はちと訳ありで泊まりたくないでな。そのまま一夜を明かして朝からの突入じゃな」


「了解です。それじゃさっさと行ってゆっくりと休みますか」




 村近くの岩肌に件の洞窟はあった。洞窟の中はずいぶんとひんやりとしている。しかし、村は完全にスルーしてきた。何か嫌な思い出でもあったのかな?

 夜営は洞窟の入り口付近を使用する。ここらへんは特に危険な獣もおらず比較的安全だそうだ。だが、ゴブリンが住み着いたりするかもしれないし念のため手製の鳴子を周囲に設置しておいた。


 夕食に作った鮭のフリットとコンソメスープに舌鼓を打ちつつ気になっていた話題を振ってみた。


「カグラさん」


「んう?」


「結局のところここでなにをするんですか? それに関してなにも聞いてませんでしけど」


「そういえばまだ話しておらなんだなこの洞窟の奥にはとある水が湧く場所があってな。その水の入手が今回の目的じゃ。何に使うのかは私的なことじゃから伏せておくがの。複数で来る理由じゃが奥に進む為には途中で転移魔法陣に乗らねばならん。だがこれがくせものでな。二股の分かれ道の先にあり両方の陣に人がおらねば魔法陣が発動せんのじゃ」


「なんとも面倒な仕掛けですね」


「まぁ、トラップがあるわけでもなしまともなほうじゃぞ。さ、そろそろ休むか。入り口は木などで塞いでおいたし万が一何かが来ても音で反応できるからの」


「了解」


 寝袋などあるわけないので地べたに毛布を羽織って待機する。カグラさんはもう寝たか。

 ミタマたちもそうだったけれどカグラさんも男が横で寝てるのにまったく気にした様子がないよね。まったく男と意識されてないのかそれほど信用されているのか……。後者だと思いたい。




 ふう、自分で考えてて落ち込んでたら世話がないな。念のため起きてはいたけどそろそろタマちゃんと見張りを交代して寝ようか。



 目を覚ますとまだ明け方だった。カグラさんは……まだ寝てるか。タマちゃんは入り口付近でじっとしている……寝てないよね? あ、起きてるね、ごめんごめん。それならばとそっと奥へと離れて日課の素振りをする。ついついいつもの時間に目が覚めたからな。いつもなら素振りが終われば朝食を作り師匠のところへ行ってた。素振りが終わったら朝食の準備でもしましょうかね。献立はベーコンエッグにパンとサラダでいいかな。

 タマちゃんにもいつもの水を容器へ入れておく。ご苦労様、ぐいっと一杯どうぞ。


 ジュウー


 おやっさんの特製携帯サイズのフライパンを使ってベーコンと卵を焼き上げる。なんと深夜TVショッピングも顔負けのこびり付きにくい仕様の逸品である。俺は目玉焼きには醤油派なのだがないので塩と胡椒での味付けだ。胡椒は金銀と同様の価値があると言われることもあるらしいがこの世界では砂糖同様ダンジョン産のものがあるのでかなりお手ごろ価格で手に入る。


 もし、俺が町長目指すならばダンジョンの存在は欠かせないものになりそうだな。ダンジョンから少し離れた位置に街を作るか迷宮を踏破して安全な管理ダンジョンとして街に組み込むか。前者ならば迷宮の暴走が起きた際には恐ろしい損害を被る。後者にはダンジョンを踏破する実力が求められる。

 目標は高く後者だな。いつかパーティを組んで挑んでやる。まだ固定メンバーはタマちゃんとだけだがね!



「んぉ、すまぬ。随分と寝こけてしまったようじゃ。この時期は体調が思わしくなくての」


 そう話すカグラさんの顔色は冴えない。昨日もだったがてっきり低血圧かなんかだと思ってたんだがどうにも様子が違うようだ。


「大丈夫ですか? 朝食がもうできますけど食べれますか?」


「すまんのぅ。少し待ってほしい。すぐに落ち着くでな」


「はい、すぐ食べれるようにしておきますね」


 焼き上げたベーコネッグやちぎった野菜をサラダとして皿へ盛り付ける。パンはハニートーストとレベリンゴジャムを乗せたものを準備。スープは昨日の残りのコンソメスープですませる。そういやリンゴは通年採れる訳でもないそうなので新商品も考えないとだな。


 全部の準備が終わった頃、カグラさんがやってきた。顔色はだいぶ良くなったようだ。


「待たせた、ようやっと落ち着いたようじゃ」


「それじゃ早速食べちゃいましょうか。暖かいうちにどうぞ」


「はふっはふふ。ノブサダとパーティ組むものは幸せじゃの。こんな美味しい食事が毎回食べれるのじゃからな」


「はっはっは、それじゃカグラさん俺とどうですか? タマちゃんだけしかパーティメンバーいませんからね」


「それは光栄じゃな。……じゃが妾にはちょっと事情があってな。おいそれとパーティが組めんのじゃよ」


 そう言うと悲しげな表情をして顔を伏せる。俺にも人に言えぬ事情があるしカグラさんにも色々あるんだろうな。


「ま、今回みたいなときは俺もソロみたいなもんですからいつでも声かけてください。タマちゃんと一緒に駆けつけますよ」


 ぽよーんぽよーん


 タマちゃんも肯定するように弾んでいる。彼女もカグラさんのことを気に入っているようだ。


「ありがとう、ノブサダ」



 食事を終えて片づけをしながら内部のレクチャーを受ける。


「ノブサダ、転移魔法陣は二段階になっておる。最初の魔法陣まで魔物がおったことはないが転移した先では幾度か確認しておる。十分に注意するのじゃぞ」


「任せてください。タマちゃんは念のためカグラさんと一緒に行って貰いますね。いざというときなんとなくですが意思の疎通ができたら助けになると思うので」


「従魔にそんな能力があるとはのう。まだまだ妾も知らぬことが多いわ」


 ぽよーんぽよーんと弾んだタマちゃんはカグラさんの肩の上に乗る。だが収まりが悪いのかなんかむずむずしている。ぽよんと一跳ねした後、カグラさんの胸の谷間に収まった。

 ぬ、ぬぬぬ、羨ましい、羨ましいぞタマちゃん。だが貴女、雌ですよね。カグラさんのメロンはマリモをも虜にするのか。……恐ろしい子!!


「むぅ、こらタマちゃん、おいたしちゃだめでしょ」


 ふるるんと震えるタマちゃん。その振動に合わせてメロンも震える。なんという重量感。

 胸の谷間に命のタマが、二つに並んで咲いている……思わず凝視してしまう男のサガよ。


「ノ、ノブサダよ。そのように物欲しそうに見るでない。さ、準備して早速向かうのじゃ」


「すいません、すぐ準備しますね」


 いかんいかん、つい本能に負けそうになった。これが若さか。迸るなにかを発散せんと色々まずい。そのうちあっち系のお店にでもいってみよう。病気とか心配だったからいまだにご利用しておりません。識別の魔眼で健康か病気か判別がつくようになったんで今なら大丈夫な気がするんだけどね。


演歌好きなんです、ブラザーシップとか。

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