第34話 カグラさんとの冒険 出会い編
今日も今日とて修行を終えただいま冒険者ギルドの依頼掲示板にいるんざます。毎度! ノブサダです。
ランクがDにもなると街を離れての討伐や輸送など種類も増え駆け出しの頃とは難易度も段違いである。うーん、目移りしてしまうけれども俺の心の琴線に触れるような依頼はあるかね?
そんな中にこんな依頼がありましたぞ。
《急募:同行者求む》
最低限自分のみを守れる実力を持ち同行してくれる冒険者を求む。目的地はグラマダから南に2日ほど行った先のペズン村内容は依頼の説明時におって話す。
依頼者:カグラ
報酬:1,500マニー+道中の魔物から得られた素材や魂石
連絡先:『炎の狛』
カグラさん、なんて不透明な依頼だしてますか。これ受けるやついるのか?
……いたね、俺だわ。
ある意味、両手槍のスキルを貰った様なものなので恩返しの意味もあるし何より道中色々と話を聞いてみたい。あの出で立ちなら東の国の情報とか沢山知っていそうな予感がするからである。もしかしたら刀とかの情報も得られるかもしれない。日本男児としてはやはり振るうならば刀がいい。この剣も悪くないんだがやはりこの思いは捨てきれないのだ。
それに美人な鬼っ娘との旅もばっちこいなのである。だって元日本産もやし系男児だもの。
というわけで依頼票を持ってカウンターへ並ぶ。勿論、エレノアさんのところに。依頼で遠出する事になるので修行をお休みすると言付けしなければなるまい。
依頼を受理してもらいカグラさんの定宿らしい炎の狛へ来ました。ミタマたちと同じ宿だったんだな。それにしても依頼を受理するときエレノアさんが若干不機嫌でしたがヤキモチかね? だったらちょっとは意識してもらえてるんだろうか、少し嬉しい俺がいる。ま、それはさておき依頼だ、依頼。
「お久しぶりです、ストームさん」
「おお、ノブサダか。久しいな。だいぶ、冒険者として慣れたようだ。雰囲気が以前とは違っている」
「そう見えますか? 少しは様になって来たらいいんですけどね。今日は依頼で来たんですがカグラさんはいますか?」
ストームさんに依頼票を見せながら説明する。
「あ? ああ、出張るとも言ってなかったしたぶん部屋にいると思うぜ。206号室だな。一応規則なんで俺も一緒にいく、すまんな」
「いえ、問題ないですよ。そういや、まだオススメの料理いただいてなかったですね。この依頼が終わったらカグラさんやミタマたちも呼んで部屋を借りて打ち上げでもしますかね」
「そうかそうか。それじゃがっぽりと稼いできてもらわないとな、ははは」
そんな談笑をしながらカグラさんの部屋の前へ着いた。炎の狛はソロモン亭と違って一部屋一部屋が広いようだ。ソロモン亭はカプセルな一人部屋しかなかったしな。
扉をノックしながら中にいるであろうカグラさんへ声をかけてみよう。
「カグラさーん、いらっしゃいますか? 依頼の件で来たんですけれども」
少ししてガタンガラランと部屋の中から何かが崩れる音がする。慌てて何かに蹴躓いたか?
「すまぬ、またせたのぅ。依頼を受けてくれて感謝す……おや? お主はたしか……ノブサダだったかの?」
「ええ、そうです。お久しぶりですね」
「むむ? 依頼はたしかDランク相当で出したはずなんじゃが間違えたかの?」
「間違ってませんよ。俺、Dランクに昇格しましたし」
カグラさんはぽかーんと口をあけたまま固まってしまった。ストームさんも冗談だろと言わんばかりの顔をしている。むー、そんなに信用できませんか、ならばこいつをくらえぃ!
首からぶら下げたギルドカードを取り出して二人へ見せる。これで間違ってたらギルドの手続き違いなのです。さ、存分に確認するとよいのですぞ。
「た、たしかにDランクになっておる。お主、一月前に駆け出しと言っておったが妾を謀ったのか?」
「いやあの時は本当にFランクでしたよ。あれから修行も依頼もしっかりこなしたからの結果です」
うん、特にここ2週間は頑張った。一日に短期の依頼2,3個とかハードなスケジュール組んでたりしたしね。急ぎの依頼を受けたときに限ってやおはっつぁんとかが指名依頼とかしてくれちゃうもんだからタマちゃんと夜遅くまでダンジョンに篭ってたりしたのよ。ま、派手さはないが地味に頑張ったのです。
「ふうむ、あそこの職員が不正なぞするわけもないしの。妾はDに上がるのに半年かかったゆえに少し信じられったのじゃよ。疑ってすまなんだ」
「構いませんよ。別な立場だったら俺も疑うかもしれません。慎重な人なら当然だと思いますよ」
「では、中で内容を話すとしようぞ」
「そんじゃ俺はここで失礼するぜ。依頼が終わったら打ち上げするって話忘れるなよ、ノブサダ。腕によりをかけてもてなしてやるぜ」
「ほう、それは楽しみじゃの」
「ええ、ありがとうございました、ストームさん」
カグラさんに促され部屋へと入る。中は特に飾ったものもなく簡素なものだった。ただ、先ほどの名残か槍や胸当てが無理矢理隅に押しやられていた。
いかんね。つい不躾に見やってしまった。女性の部屋は慣れないな。
「では依頼の内容じゃがここより南方へ2日ほど向かったペズン村。そこの近くにある洞窟が目的地となる。中にはある仕掛けがあってな一人ではどうしても奥へは進めぬようになっておる。普段ならば妾の数少ない友人に頼むのじゃが生憎と長期の依頼で宿を離れておってな。急遽、依頼にて募集したというわけじゃ」
「なるほど」
「妾のほうはすぐにでも出立できるがお主はどうじゃ?」
「念のため食材だけ買い込めばすぐにでれますよ」
「ならば1時間後に南門前にて集合でよいか?」
「了解です。ちなみにカグラさんはお好きなものや嫌いなものありますか?」
「ん? 妾か? 酒にあうものならばなんでもよいぞ? 嫌いなものは豆類かの」
「あいあいさ。んじゃそこらへんを注意して食材買ってきますよ」
「むむ、話の流れから言うと妾の分も準備するように聞こえるが……」
「そうですよ? 臨時でもパーティなんです。折角ならみんなで美味いもの食べたほうがいいじゃないですか」
「ほんにお主は変わり者じゃの。随分とお人好しじゃわ」
「よく言われます。それじゃ南門で」
「うむ」
カグラさんと別れヤオエイトにて食材を吟味する。野菜や魚、チーズと調味料を買い込む。そのうち食材専用のマジックポーチでも欲しいな。今度セフィさんに作り方聞いてみよう。
南門へ着くとすでにカグラさんは待っていた。
背に両手槍を背負い肩掛けのリュックを持っている。他に荷物がない所を見るとあれもマジックリュックなのだろう。防具は鉢金と胸当てと小手、袴の様な装いの下には脚絆をしていると思われる。俺と同じく動きを妨げない最低限の装備だな。両手槍で寄せ付けずに先攻して敵を屠るタイプな気がする。
現在の彼女のステータスを覗いてみるとこうだった。
名前:カグラ・カガミ 性別:女 年齢:20 種族:鬼人族(普人族に偽装中)
クラス:闘鬼Lv21(戦士Lv17に偽装中)
称号:【血煙の戦乙女】
【スキル】
両手棍Lv4 両手槍Lv4 格闘術Lv3 回避Lv1 身体強化Lv2 隠蔽Lv2 偽装Lv2
以前と比べて少し成長していた。
これくらいが普通だとするならやはり駄女神の加護もあって俺の成長速度は異常だな。
帰ったらまたなにかお供えしてやろう。
ちなみにだが俺の装いも少し変わった。腰に試験管もどきを差せる様なベルトを作った。この試験管もどきは薄く加工した石で出来ており中にはポーション類が入っている。コルクは売っていたのでそれに着色して内容物の判別が出来るようにしてある。これはDマヨイタケ戦での反省を生かしてすぐに薬品を取り出せるように試行錯誤して作ったのだ。持ってきたポーション類は全て桃味のノーマル、キュアポーション(解毒)、マジックポーション(魔力回復)、パラポーション(解麻痺)の4種類。全部自作である。
今回の旅では片手剣を使っていこう。最近、格闘万歳だったので他のも使わないと腕が落ちてしまうだろうしな。
「お待たせしました。それじゃ行きましょうか」
「おお、もういいのか。ならば行くとしようかの」
ノブサダ初の街を出ての依頼である。さてさてどんな珍道中が繰り広げられますことやら。




