第32話 タマちゃんの可能性
ナスキノコやっとドロップ!
これで大手を振って帰れる。
ちなみにたまにドロップしていたベニテングダケですが帰り道にてちょっとした実験に使ってみました。
え? 何の実験かって?
道具や毒で倒しても経験値は入るのかなーという素朴な疑問のですよ。
ファーストクラスを呪術師にセカンドクラスを獣使いに変更して帰り足に遭遇したポーンドッグ相手に試してみました。
結果は経験値入りました。数匹試してみたところ全て問題なく。なんと、何もしてなかったタマちゃんにまで。 従魔だけなのかパーティメンバーにも有効なのかは要検証だね。
いやしかし自分でやったことだけども毒殺って物凄く後味悪いわ。ウィンドバインドで縛ったポーンドッグの口の中にベニテングダケを突っ込んでしばらく放置。じわじわとHPが減っていくんだけども苦しむ姿がもうね……。いっそひと思いにって何度か思ったよ。
今後ベニテングダケを入手したらどこかにキノコ塚でも作り積み上げておきましょう、ゴブリンが出そうなところにでも! 悪食だから食うかもしれない、まさに外道!
いや、むしろドライで乾燥させてから粉にして風魔法でゴブリンのコロニーへ流し込んでやれば……さっきまでの感傷はどこへやら。汚れちまったね、我ながら。
馬鹿なことばかり考えてないでさっさと帰りますか。とにかく帰ってゆっくりしたいです。ステータス確認やらはそれからでいいや。今日はもう疲れてしまったよ。
ソロモン亭よ、私は帰ってきた!
ふいー、空いてる席は……いつものカウンターが空いてます。もはや俺の特等席になってませんかね?
席に着くとフォウちゃんが注文確認に来てくれる。
「お、お疲れ様です。今日の成果はどうでしたか?」
「上々だよ、依頼もちゃんとこなせそうだしね」
「それは良かったです。あの、それじゃ美味しいもの食べて明日の活力もつけないとですよね」
流石、給仕。営業トークは完璧だ。
「それじゃあね、えーっと、オススメと果実水。あとこの黒虎の塩焼きっていうのをお願い。それとドヌールさんに依頼の品を持ってきたんで都合のいい時間帯を教えてって伝えてもらえるかな?」
一瞬、キョトンとした顔をするフォウちゃん。それでもウサ耳はふりふり動いております。ハっと理解するとピーンとウサ耳が立ちました。もふりたい衝動を押さえ反応を待つ。
「承りました。料理を運んでくる際にお伝えしますです」
オーダーを携え厨房へと戻るフォウちゃん。
そういえばメニューの端にあって気になったからつい頼んでしまったけれども虎って美味いのだろうかね?
果たして結果やいかに!!
うん、きっとこんなオチじゃないかとは思ってた。
ブラックタイガー(海老)の塩焼きだったよ。くそぅ、美味い、美味いなぁ。
ちょっと心の汗の分だけ塩味がきつい気がしたけどな。
タマちゃんは俺の肩の上で見事なバランスをとって休憩中だ。
従魔の宿での扱いだけれども結果的に俺と一緒の部屋で問題ないとドヌールさんから許可を貰ってある。
従魔登録すんでからすぐ相談したんだがタマちゃんくらいのサイズなら別段追加料金等発生しないらしい。
むしろタマちゃんのことを幼女組(ミネルバ、フォウ)が大層気に入りまして好感度グラフはあっという間に俺を追い越し頂点へと君臨しております。寂しくなんてないんだからね、ぐすん。
娯楽の少ないこの世界。人形なんてあってもリアルなビスクドールみたいなやつばっかりで可愛いものへの渇望はあるようだ。街から出たことの無い子供たちならマリモが魔物だなんて思わないかもしれない。
意外だったのはドヌールさんも非常に触りたそうな感じでチラチラと見つめていた事。駄目ですよ? 幼女組が優先ですから。
大分冒険者連中もひけた頃、従業員の休憩室でドヌールさんと向かい合っていた。
「依頼票がこれでこっちが目的の品『ナスキノコ』が二本です。ご確認ください」
ナスキノコ
品質:良 賞味期限:萎れるまで
芳醇な香りとトゥルンとした食感と喉越しがたまらない高級キノコ。ツルンではないトゥルンです。子供から物憂げな未亡人まで大好きな一品。
「うむ、確かに依頼した品で間違いない。品質といい色艶といい問題ない」
「それは良かった。いや、稀にしか落とさないと言う話でしたけどこんなに落とさないとは思いませんでしたよ」
「それは苦労をかけたな。もし良ければ他の食材も買い取るぞ?」
「あ、いいですか? いや、他のものは結構採れたんでどうしようか迷ってたんで助かります」
リュックの中からマイタケ15、シメジ8、エノキダケ4、シイタケ10を引っ張りだす。一応、後で天ぷらにして食べる分を除いた数である。シイタケ以外は一房ごとにカウントしている。
「これはまた随分と倒したもんだな。品質も上々。まとめて……580マニーでどうだ?」
帰りがけに覗いた食料品店の値段よりも結構色ついてるな。品質はこっちのが上だし妥当なところか。
「問題ないです。それにしても依頼出してまで食材調達するなんてなにかイベントでもあるんですか?」
おや、ドヌールさんが鼻の頭を照れくさそうにかいている。
「その、な。3日後が結婚記念日でな。妻の好物を用意したかったというわけだ」
おやおや、これはノブサダさん余計な質問しちゃった模様です。ご馳走様ですな。ドヌールさんは愛妻家のようだよ。
「それではこれが報酬と確認した依頼票だ。あくまでドロップ品だからな。依頼は出したものの不安ではあった。よく採ってきてくれた。ありがとう、ノブサダ」
むぅ、ドヌールさんの惚気に俺のHPはキリキリと減っていってたがこう真正面から感謝の意を表されると戸惑っちゃうね。ま、ドヌールさん一家の家庭円満に協力できたならそれは良い事です。独り身の俺はタマちゃんをもふって癒されるとしよう。
さて部屋へと帰り今日のレベルアップの確認と反省だな。現在の俺のステータスはこちら。
名前:ノブサダ・イズミ 性別:男 種族:普人族?
クラス:呪術師Lv3 獣使いLv3
状態:健康
称号:【真・マリモキラー】
HP:160/160 MP:1,287/2,085
【クラス】
異世界人Lv10(up!) 戦士Lv10 拳士Lv5(up!) 修道士Lv3 魔術師Lv4 呪術師Lv3(up!) 商人Lv1 農家Lv1 主夫Lv1 シーフLv10(up!) 狩人Lv1 獣使いLv3(up!)
【スキル】
エターニア共通語 異魂伝心Lv2 魔法改変Lv2(up!) 複合魔法Lv1(new!) 家事Lv5 農業Lv3 剣術Lv3 格闘Lv2(up!) 両手槍Lv2 投擲Lv2 魔力纏Lv2 回避Lv2 神聖魔法Lv2 暗黒魔法Lv1(new!) 属性魔法適性Lv3 生活魔法 偽装Lv2
【クラススキル】
挑発 トレジャーハンター
【固有スキル】
識別の魔眼Lv4(up!) レベリットの加護(小)
【従魔】
タマちゃん
本日の収支 元金316,570-130(果実水と黒虎)+2,580(ナスキノコ2+キノコ類)=319,020マニー
おふ、いつの間にかMP4桁突入していたよ。これで魔法や技の練習はどんどんできるな。
ベニテングダケの実験の際、呪術師のレベルが上がったら暗黒魔法を覚えていた。
識別先生からご教授いただいたスキルの詳細がこちら。
【異魂伝心】
Lv2 主が習得済みのスキルを覚えやすくなる。
【暗黒魔法】
闇の力を操り様々な効果を及ぼす。状態異常の効果、成功率はレベルと込める魔力量によって上下する。
使用可能魔法一覧 ※レベルにより順次解放
Lv1
ペイン 四肢に痛みを与える。
カース 対象へ呪いをかける。内容は行動不能、意識低下、不能、知能低下など多岐にわたるが複雑なものほど必要な魔力量が増大する。
【複合魔法】
魔法を組み合わせる才能を示すスキル。組み合わせは使用するものの想像力と魔力により無限大に広がる。
シーフ 『トレジャーハンター』
魔物を倒した際にアイテムがドロップする確率が上昇する。
そしてこれがタマちゃんのステータス。
名前:タマちゃん 性別:雌 種族:マリモ
クラス:SマリモLv2 状態:健康
称号:なし 絆:親愛
HP:45/45 MP:12/12
(主の称号の効果でステータスにプラス補正)
【スキル】
分体生成 神聖魔法Lv1(new!)
『スーパーマリモ』
最弱で知られるマリモが幾多の可能性を開花し始めた第一段階。10年ぶりに現れたマリモ界の新星。
は!?
タマちゃん魔法覚えたの!? 予想外のスキルに一瞬思考が止まったよ。まさに可能性の魔物?
分体生成だがまだ識別先生の力が足りないのか説明が開けなかった。識別先生精進あるのみです。
さて、今回の反省点だがやはり調子に乗りすぎたのが良くなかった。特にドロップがないことからの殲滅作業となり最後の最後で蹴躓いたね。下手したらタマちゃんを失っていたかもしれない。2Fといえど油断は禁物だということだ。
さらにはソロだから状態異常になると弱い。慌てちゃってリュックからキュアポーション出すのも忘れてるくらいだ。リュックでなくすぐ取り出せるような方法を考えないといけないな。タマちゃんが神聖魔法覚えてくれたのはこれ以上ないほどありがたいね。是非、このまま成長してもらいたい。
そして新技のほうはある意味成功、ある意味失敗か。構成や発動は成功したが改善点は沢山ある。元々は金属で構成する予定でトゲでもなくパイルバンカーを考えていたが金属の生成の時点で断念した。それをするためにはスキルやら知識やらが不足しているっぽい。それができるようになれば飛躍的に色々なことができそうだ。技としては威力が高すぎかつ魔力の消費もバカにならないくらい消費していた。あれ一発でごっそり魔力持っていかれたものな。岩でもドリルタイプとかショットランサータイプとかバリエーションも増やせるかもしれない。
今後の目標としては修行しつつ今ある全クラスをレベル10まで引き上げておく。全クラスかは分からないがどうやらレベル10になるとクラススキルが発現するらしい。何気にこれは有用なのが多そうだからだ。
そうそう、セフィさんとの約束通り薬草も採取しないとだな。俺も錬金術覚えたいし。
よし! 反省終了。それじゃあ明日からも頑張りますかね。
おやすみ、タマちゃん。
ぽよんぽよん




