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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第一章 ノブサダ大地に立つ
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第30話 タマとキノコとワタシ

「魔術師としてはじゃがな」


 師匠、持ち上げてから落とさんでください。


「明らかに魔術師としての素養のほうが高いのう。属性は四属性持ち。さらには詠唱なしの短縮発動なぞ中堅の魔術師でやっとできるかできないかというレベルじゃぞ。それも何割か威力が落ちるもんじゃ。お前のはそんな様子が微塵も無いしな」


 すいません、詠唱自体を知らんとです。真面目に魔術師やってる皆さんからすればフザケンナっていう存在なのかもしれん、俺。

 そんな現状確認も終わったところで早速、開発開始だ。さあ師匠、忌憚の無いご意見お待ちしております。


 ――30分経過


「というわけでだ。組み込むならこういったタイミングでこう……ってな具合だと思うのじゃな」


 ――1時間経過


「なるほどなるほど。だったらこれはこう返して発動しちゃえばロスがなくなりますよね?」


 ――1時間30分経過


「ええのぅ。だったらこいつを……」



 俺と師匠の秘密技開発は予定よりも大幅な時間オーバーをかますまで続いた。師匠の部下があまりに遅いから迎えに来てこっぴどく怒られたよ。最終的に師匠の『細けぇこたぁいいんじゃよ』発言で部下の人が涙目になりながら引き摺っていった。ごめんなさい、部下の人。


 明日は修行が休みらしいんで依頼を受けるも良しダンジョンで鍛えるも良しなのである。


 タマちゃんもいるし並行して受けれる依頼があればそれを受けてダンジョンでレベル上げでもしましょうかね。

 連携や新技の練習もしてみたいしな。そうと決まればれっつらギルドだ。



 冒険者ギルド午前10時。今までは午後とか微妙な時間にまばらにしか人がいなかったがこの時間だと大盛況である。というかパーティ単位で掲示板囲んでいると見えないんですが!? くう、低身長が憎い。


 冒険者の隙間を縫ってなんとか掲示板の下へたどり着く。誰だ、俺の尻触ったやつ!


 なにか丁度いい依頼はないものかいなー?



 《 レアキノコの入手 》

 フォンブランの迷宮2Fに出没する『マヨイタケ』が稀にドロップする『ナスキノコ』(紫色のつるんとしたキノコ)を入手してきてください。できるだけ多く確保できれば尚いいです。

 報酬:1本につき1,000マニー

 期日:3日後の夕方まで

 依頼主:ソロモン亭店主

 ※直接店舗へ依頼品を持ち込んで完了印を受け取ってください。



 依頼主はドヌールさんだったよ。とりあえずこいつの詳細を聞いてから決めますか。しかし、茄子なのか茸なのかはっきりしない食材だな。

 えーっとエレノアさんはっと……いたいた、依頼票をもってエレノアさんのカウンターの列に並ぶ。



 待つこと15分



「お待たせしました。次の方……ってノブサダさん。依頼の受理ですか?」


「そうなんですがこれについて情報を聞いてからにしようかと」


「ナスキノコですか。2Fであればノブサダさんなら滅多なことがない限り大丈夫だと思いますよ。ただ、ドロップに関しては運ですからなんともいえません。地図などは持っていますか? あるなら群生してそうな場所に印をつけますけれども」


「おお! ありますあります。助かりますよ。それじゃこの依頼を受けますね」


「はい、確かに受理しました。気をつけてください」


 群生地まで教えてもらえるとは幸先がいい。いよっし、タマちゃん頑張ろうか。




 ダンジョン内部へ入った俺たちはさっそく2Fへ向かって歩き出した。1Fの構造として2Fまでは真っ直ぐというつくりになっている。やはり1Fは本当に駆け出しな冒険者が多い。というか俺もそうなんだけどさ。そういやファーストクラスをシーフにしておいた。なんとなくドロップ率あがりそうな気がするから。上がってほしいです、切実に。セカンドはまだ異世界人のまま。技や魔法の開発にもうちょっとMPに余裕が欲しいところなんだ。



 カツーンカツーンと静かなダンジョン内に俺が歩く音が響く。そして、見通しの良い通路にて早速ポーンドッグが立ち塞がった。


 ポーンドッグ Lv3

 HP:15/15 MP:0/0


「ウィンドバインド!」


 ギャウン


 後ろ足2本を風の輪に封じ込まれて身動きが取れなくなる駄犬。ふははは、貴様はタマちゃんの糧となるがいい。


「タマちゃん、ゴー!」


 合図と共にタマちゃんが駄犬へと体当たりする。頑張れタマちゃん。一応、前足や口はまだ動くから気をつけるように。

 その後、効果が切れそうになるたびに追加でウィンドバインドをかけ直しフルぼっこにされる駄犬。

 ふらふらになったその時、タマちゃんは顎の下へと這いよっていた。


「タマちゃ~ん、アパカッ!」


 ズドムッ!


 アッパーカットと銘打ってはいるが結局体当たりなんだけどね。まぁ、気分だ気分。タマちゃん渾身の一撃で駄犬のHPは遂にゼロになる。良くやったな、タマちゃん。

 なでりなでりとタマちゃんを撫でて労ってやる。俺が撫でるとなんとも気持ちよさげに震えるんです。なにこの可愛いナマモノお持ち帰りしたいわ。……してるわ、俺。



 てれれてってって~♪ シーフのレベルが上がりました。

 てれれて~て~てんてってれ~♪ タマちゃんのレベルが上がりました。



 何気に俺のときとファンファーレが違う! 芸が細かいぞレベリット様よ。


 体当たりなので相手の防御力とタマちゃんの強度次第ではタマちゃんがダメージを受ける。当たり所が悪く少しHPが減っていたので大事をとってヒールをかけておく。従魔とはいえ魔物相手に効くのかという疑問もあったが無事に回復していたので一安心。



 その後、道すがら現れるポーンドッグをタマちゃんの糧へと捧げつつ2Fへと降り立った。


 2Fは1Fとさほど作りが変わらないもののなんとなくだが空気がじめっとしている。そしてほんのり薄暗く感じる。初めてのフロアということでタマちゃんは肩に乗せて慎重に進んでいく。

 幸いにして敵と遭遇することなく教わった群生地付近へと進むことが出来た。

 辺りを見回すと……いた! 子供の背丈ほどの動くキノコ。よくあるキノコに手足がついているあれである。ただ、顔は無くどちらが正面だか判断がつかない。それがひぃふぅみぃ……7匹か。



 てってれ~♪ 識別の魔眼のレベルが上がりました。


 マヨイタケ Lv6

 HP:24/24 MP:2/2

 迷宮産歩行型菌糸類マヨイタケ科マヨイタケ。目などは無いがこちらを感知して襲ってくる。ある程度の範囲内に同族がいるとリンクするので注意が必要。マヨイタケそのものは食用ではないので気をつけよう。また毒を撒き散らすタイプの個体もいる。



 識別先生のレベルが上がったからか詳細が今までよりも詳しい。それにしても学名なの? というかリンクしてくるのか。ここで言うリンクとは戦闘中の範囲内に同種個体が入ると非アクティブだったものがアクティブになりこちらへ攻撃してくることをさす。たぶんだが識別先生は俺の分かりやすいような単語で情報開示してくれている気がする。しかし、リンク型か……トレインとかしたらやばそうだ。


 マヨイタケは移動を繰り返しているので丁度離れたところを狙い攻撃を与えてこちらへ引き寄せてから倒すのが良さそうだ。


「タマちゃん、ウェイト」


 タマちゃんは俺の斜め後ろに待機させておく。いざとなったら物陰にでも避難してもらおう。


 今回は魔法改変を使わずに純粋な魔法を使用する。


「ファイアアロー!」


 ゴウと音を立てながら火の矢は離れた位置にいるマヨイタケ目掛けて飛んでいった。マヨイタケに見事着弾。やはり改変したものより命中率は高いようだ。

 ダメージが入るものの倒すまでには至っておらずどうやって知ったかわからないがこちらへと一直線に向かってくる。立てかけておいた鉄の剣を握り締め構える。この間までとは違い攻の型へ当てはめた構えである。



 ブルッツァァァァァ



 どこから声出してるんだかわからないが妙な咆哮をあげつつ突進してくるマヨイタケ。



 マヨイタケ Lv6

 HP:8/24 MP:2/2



 むむう、予想以上にダメージ入っているな。もしかしたら火属性が弱点なのかもしれない。

 これだけ減ってればあとはトドメだ。返しの型に切り替えタイミングを計る。マヨイタケが頭突きで突貫してきたところへ刃を合わせ一気に振りぬく。綺麗に真っ二つになったマヨイタケはそのまま粒子となり消え去った。そしてドロップはなし、あふん。


 火属性が弱点……もしかしたらファイアストームあたりなら一網打尽にできるかも? やって駄目なら魔法改変で高温の蒼炎とかのイメージで改変したらいける可能性は高い。よし、離れた個体が少数なら試してみようか。


 タマちゃんも動員して1匹ずつ順に倒していく。残りが3匹となったところで実験タイムだ。ちなみに先ほどまで合計4匹。赤い魂石が1、マイタケが1ドロップしている。今度マイタケの天ぷらでも作ろうか。


 マヨイタケが気付くギリギリまでそっと近づきファイアストームの範囲を計る。識別先生の成長でどこまで効果範囲が伸びるかがなんとなく分かるようになったのでだいぶ楽になった。

 3匹が一まとめになったところで待ってましたと魔法を発動する。


「ファイアストーム!」


 炎の奔流がキノコを丸焼きにしていく。消し炭になるまで焼き上げたところで魔法を解除する。炎が巻き上がることでマヨイタケの動きを阻害しその場へ留め置くことができるのは嬉しい誤算だった。

 これで『汚物は消毒だ!』作戦が決行できる。ようは見敵必殺サーチアンドデストロイをするだけなんだけどもね。



 エレノアさんの情報を元に休憩を繰り返しながら群生地を焦土に変えていく。はっはー、汚物は消毒だぁ! 悲しいけどこれ殲滅なのよね。

 おっとっと、またはっちゃけすぎた。だがそうやって自分を鼓舞しないとやっていけないのである。

 なんせナスキノコが全然ドロップしないのだ。すでに40匹は焼き尽くしているはずなのにね、解せぬ。まぁ、マイタケ、シメジ、ベニテングダケや魂石が手に入ってはいるんだが……ん? 猛毒が混じってるぞ。



 すでに時刻は夕方近いだろう。帰り道もあることだし次の群生地を襲撃したら今日はやめにしようか。

 ちなみに俺が魔法で見敵必殺していてもタマちゃんに経験値が入っているようだ。順調に育っていらっしゃいます。おそらく今ならマヨイタケとタイマンしても勝てるんじゃないかと思うよ。

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