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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第一章 ノブサダ大地に立つ
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第29話 武技が使えないなら作ればいいじゃない

ノ < 俺には資質がなかったんだ!

ことぶき < 俺には脂質がたっぷりあるぜ!


ノ < ……ファイアストーム!


ことぶき < ッアーーーーーーー

 俺には今所持しているスキルでのウェポンスキルを使う資質が無かったという驚愕の真実が明らかになった。


「まぁ気にするな。そもそもウェポンスキルや武技が存在する前は皆自分で技を編み出していたらしいぞ。だったら自分で作ってしまえばいい。お前は魔法も使えるのだろう? それと技を組み合わせて自分だけの戦い方を作ったほうが遥かに強くなれる可能性を秘めていると思うがの」


 さすが師匠、豪快だ。どこかのマリー的な理論ではありますがね。

 しかし、俺に現時点でのスキルでの資質がないのか、それともウェポンスキル自体の資質がないのか気になるところだ。もしかしたら異世界からの異分子だから習得できないのかもしれん。そう考えれば師匠の言うとおり色々と試行錯誤したほうが前向きだよな。


「それにどんな技を編み出すのか儂も興味があるでな。面白そうだ」


 おふ、興味本位全開でございます。でも師匠の経験を聞きながら技を編み出すほうが何倍も早そうだ。この際、協力してくれるというのだからなんぼでも教えを請おう。


「それじゃお父さん。そろそろ私は朝食の用意しますね」


「い、いやまてエレノア。儂がやるから…な、な」


 師匠の顔色が一気に悪くなる。こう、さーっと青ざめるっていうのが如実に現れていらっしゃるね。


「お父さんはノブサダさんの指導があるのでしょう? 久々に私が作ります」


「ま、待てというに……」


 むむむ、師匠はどうしてもエレノアさんの朝食を回避したいようだ? あ、そういえば俺作ってきたじゃないか、すっかり忘れてたよ。


「あ、それなら俺作ってきたのがあるんで二人ともいかがですか? 教えを請う身ですからこれくらいはしないとと思いまして」


「そうか! 折角作ってきてくれたものを無駄にするわけにはいかんの!!」


 師匠がそう言いつつエレノアさんに見えないようにサムズアップする。どうやらいい仕事をしたようだ。


「外で食べやすいものを作ってきたのでそこに広げて食べましょうか。今日は天気もいいですし」


「そう、ですね。すいません、ノブサダさん。気を使わせちゃったみたいで」


「気にしないでください。料理は好きなんですよ」


 敷物を広げて用意してきたものを広げていく。

 ハニートースト、揚げパン、胡桃ジャムとカスタードクリーム、果実水、ついでにこの場で果物も剥いてしまう。林檎はウサギ型にしてみた。

 広げられたものに師匠もエレノアさんも感嘆の声をあげる。


「こらまた、随分と本格的な。このまま店で出せそうじゃな」


「下手な店より上等ですよ、これ」


「まだ暖かいですから冷めないうちにどうぞ。ハニートースト、こっちのですね。このままでもいいですけどこっちのジャムやクリームをつけることで味の変化が楽しめます」


「ほうほう、それじゃ儂はこれからいこうか」


「私はこちらをいただきますね」


 師匠が揚げパンにエレノアさんはハニートーストに齧り付く。そして一口飲み込むとなんともいえぬいい笑顔をしていらっしゃる。うむ、その笑顔で作り手の俺もいいものが出来たと満足できますね。


「これはまたカリッとしていいのぅ。それでいて中の卵やハムがいい味を出しておる。これならいくらでもいけそうじゃわい」


「はぁぁぁ、甘くて柔らかなパンが美味しいですね。こっちのジャムをつけるとまた風味がいいです。こんなに美味しいものが作れるのになんで冒険者に?」


 いや、料理は必要に迫られて覚えたもんなんですよ。凝り性ではありますがね。折角なら美味しい食事を食べたいじゃないか。


「爺様と二人暮らししているうちに自然と俺が料理担当になったんですよ。ただ、あくまで自分で食べる分しか作りませんよ。仕事にしたら遊びがなくなりますからね」


 といってるうちにどんどん無くなっていく。二人とも食べるペースめっちゃ早いわ! 3人でも多いだろうなという量を作ってきたはずなのにもはや残り少ない。


「いや、美味かった。大満足じゃの」

「確かに美味しかったです。……どう考えてもノブサダさんのほうが料理上手だもの、私は女として……」


 エレノアさんの声が小さくなって後半聞き取れなかったけれどもなにか背中がすすけているように思えます。あ、そういえばタマちゃんにも食事を与えねばな。


「タマちゃん、ハウス!」


 昨日教え込んでおいた掛け声をかけるとタマちゃんはぽよーんぽよーんと俺の元へ弾んでくる。

 魔法で水を作り出してタマちゃん用カップへと注ぎいれるとしっぽりと入り込んだ。

 あれ? 二人とも目が点になってますか? マリモが意外?


「ノブサダ。これはなんじゃ?」


 タマちゃんを指差しながら師匠が問いかけてきた。


「え? 昨日できたばかりの従魔です。マリモのタマちゃんって言うんですよ。ちゃんと従魔登録してありますから街中でも大丈夫ですよ?」


「ま、マリモが従魔? それなりに長くギルドにいますけど初めて見ました……」


「儂もじゃ。獣使いは何人か知っておるがマリモを従魔にするなぞ誰も考えたりせんかったの。そもそも、声を発せぬこいつとどうやって意思疎通をするのかという問題もあるからな」


 まぁ、俺の場合は特殊な事情とスキルがあったからなんですけども。流れでいつの間にか従魔になっちゃったわけで。


「それよりも、エレノアよ。そろそろギルドへ向かわなくていいのか? 今日は出勤じゃろ?」


「え? もうこんな時間!? い、急がないと」


 エレノアさんはそういうと猛然とダッシュして家へ戻り数分で着替え今度はギルドへ向けて駆けて行った。というか速いな。もう見えなくなっちゃったよ。


「ふぅ、あやつもいい歳なんじゃからもう少し落ち着けばいいんだがの」


「ギルドではしっかりしてると思いますよ。まぁ普段のエレノアさんも楽しくていいですが」


「はっはっは、なら嫁にでも貰ってくれるか?」


「ええっ!? 俺は稼ぎもなんも半端ですからそういったことはまだですよ」


「冗談じゃ冗談。さて、あと1時間ほどしか付き合えんが話題にも上がったことだしどんな技ができるか試してみるか? まずはお前のスキルだがどんなものがある?」


 師匠は少年のようにわくわくした目でこちらを見ている。こういった技とかはいくつになっても楽しみなようだ。俺もこれに関しては望むところなのですよ。高望みではあるがこの場でひとつやふたつ実現可能なものができたらいいな。


「これってどこまで開示していいもんだか判断つかないですが師匠だから全開します。まずいと思うところがあったら指摘してください。戦闘スキルとしては剣術がレベル3、格闘が1、両手槍が2、投擲が2です。魔法は神聖魔法が2、属性魔法全般が3です」


「は?」


 本日2度目の目が点な師匠。


「いや、魔法がそれだけ使えるならなんでまた前衛を……ふむ、それだけスキルがあるならなにかしら特殊な事情持ちか。ソロ主体ならばそのスキル構成も納得ということか……」


 ぶつぶつと現状を確認していらっしゃる。なにも言わなくてもそこまで考察しちゃいますか。


「ふむ、まぁクラスには魔法戦士などもあるしそこまでまずいこともないがの。ただ駆け出しのスキルとしては有り得ない量じゃな。あまり派手にやりすぎると勧誘など五月蝿くなるじゃろうて。それが嫌なら早々に自分でパーティメンバーを探すほうがいいかもしれん」


「とりあえずしばらくはソロ……いや、タマちゃんと一緒になんとかしていこうと思います。いずれ縁があればパーティを組むこともあるでしょうがまだまだ戦闘技術とか褒められたもんじゃないと思うので……」


「それくらいのスタンスでいるほうがいいかもしれんな。それにしても属性魔法がレベル3か。どれ試しにあの木人に向かって撃ってみよ」


 とりあえずアロー系でいいか。順に火水風土と矢を放っていく。

 どうですかと言わんばかりの顔で師匠を見やるとすぐに次の魔法とせっつかれる。あれぇ、間近で魔法使うのなんか楽しんでませんか、師匠?

 とりあえず促されるまま使える魔法を順番に使っていく。というかファイアストームやサンドストームとかご近所さんに迷惑じゃなかったでしょうか? 洗濯物に砂が(怒)って苦情来ても知りませんからね?

 一頻り使ったところで師匠が言いました。


「ノブサダ。お前はすでに規格外になっておる」


 なんですと!?


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