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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第一章 ノブサダ大地に立つ
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第26話 こんにちはベイビー

 最後に気絶というハプニングがあったものの修行一日目は無事終了。


 ここからは食い扶持を稼ぐ為に頑張らないとだ。なんせ、昨日は一日オフってたから一銭も稼げてないのです。

 とはいえ、今すぐにダンジョンはきつい。うん、やせ我慢してたけど結構きてます、最後の一撃。

 ここは達成しやすそうな依頼を探すことにしよう。ソロモン亭の割引の為にも依頼はこなさないとまずいしな。

 できるなら室内のとか採取とかがあるといいな。もうリュックの中の果物は底が見えております。ついでに非常食も確保できるなら万々歳ですよ。



 ギルドの掲示板へ依頼を探しに向かうとやはりこの時間は集まっている冒険者も少ない。

 まぁ、残り物には福があることを祈りつつ依頼票を眺めていく。

 どれどれ……倉庫の夜間警備、飼い犬の散歩、下着泥棒の捜索……いいのないなぁ。

 お、下のほうにまだある。



 《 薬草の採取 》

 ポーションの素材となる薬草の採取を依頼します。ヒラ草やゲド草など。

 10株一束で受け付けます。丁寧な作業のできる方よろしくお願いします。


 報酬:素材の状態によって変化

 依頼主:錬金術店『ひきこもりのラミア』店主

 ※直接店舗へ依頼品を持ち込んで完了印を受け取ってください。



 セフィさんのところの依頼じゃないか。というか報酬がこれだと誰も受けないんじゃないだろうか? 不透明にもほどがある。

 ここらだとどこで薬草採取できるのかな。そこら辺も含めて受付で聞いてみようか。


「すいませーん、この依頼受けたいんですけども」


「うむ、依頼の手続きであるな。ちょっと待つのである」


 あれ? なんでランバーさんこっちにいるの?


「あれ? ランバーさんって素材買取のカウンター担当じゃなかったでしたっけ?」


「うむ、暇なときなどは休憩の交代でこちらをやってる事もあるのである。ほう、薬草の採取であるか。こういった地味な仕事は残りがちなので助かるのであるな」


「ここらで採取に丁度いいところってどこかありますかね?」


「そうであるな。北門から北へ30分ほどのところにある森周辺はいい採取場である。ただ、ゴブリンなどの存在が確認されているので気をつけるといい」


 なるほどなるほど。採取にどれくらい時間がかかるかわからないけど2,3時間で確保できれば日が暮れる前に帰ってこれるかな。


「情報ありがとうございます。それじゃいってきますね」


「うむ、しっかりやるのであるな」


 ギルドの近くにあるパン屋でパンを二つばかり買いおかずとして串焼きを一本購入する。行儀が悪いがパンに齧りつきつつも森へと急ぐ。

 こういった時ファンタジーなRPGなら移動用の馬やら馬車やらあるんだろうけど現実には厳しいやな。維持費だけでえらいことになりそうだ。ま、長距離移動することもいまのところはないだろうし己の足を動かすべしだ!


 えいほーえいほーと歩いていくと街道から少し離れたところにうっそうと茂った森がある。おそらくこれがそうだろう。


 入り口周辺から識別の魔眼で採取物を探していく。今回は念のために鉄蟻の拳甲を準備しておく。折角、格闘スキルを覚えたのだから何かあったら使ってみよう。


 ちらほらと点在する薬草を根っこから掘り起こし前と同じように束ごとに布で包装しリュックへと放り込む。

 ヒラ草、ゲド草以外にもこんなのがあった。



 マジ草

 マジックポーションの材料。ヒラ草によく似ているが葉の葉脈がうっすらと赤い。加工前の葉を齧っても多少の魔力回復効果が見込まれる。が、ものすごく苦い。


 パラ草

 麻痺に治癒効果のある薬草。所定の手順で加工しないと効果がほとんど無くなるので注意が必要。齧るとすごく辛い。



 これ幸いにとリュックへ詰め込む。これはいい感じで採取できている。一応、全て採取するのではなくいくらか残しておく。生態系分からないけど全部採ってしまったら群生地がダメになってしまうしな。


 薬草は結構な量が採れているけど果物とかはあんまりないな。やっぱりあの森が特殊だったのだろうね。野生のリンゴと梨があったくらいか。ま、しっかりと採取はいたしましたがね! あ、胡桃みーっけ。


 入り口付近から採り進めてすでに森の奥へと歩を進めている。採取を始めてすでに1時間半ほど(あくまで体感時間だけれども)経過しておりここらが折り返し地点か。


 ギギギッ、ギャッギャ


 そろそろ戻ろうかと思っていたら耳障りな声が聞こえてきた。これって以前にも聞いたことあるぞ。



 息を潜めて声がしたほうを覗き込むと数匹のマリモを囲んでいるゴブリンが3匹ほどいた。

 何してるんだと疑問に思いつつ覗いているとゴブリンの一匹がマリモを掴みがぶりと齧りつく。


 えええっ!? マリモってあいつらの食料なのか?

 たしかに植物っぽいけどあれを食べるとは思わなかったな。残りのゴブリンももしゃりもしゃりとマリモにかぶりついて咀嚼している。

 さて、どうしたもんか。俺自身の体調は修行終わりたてに比べれば大分マシになってきている。ゴブリンはほっときゃどんどん増えてしまうから常に討伐対象だ。一匹5マニーだけど……。


 結論、魔法でざっくり滅ぼして小銭を稼ぎましょう! 鉄蟻の拳甲を構えつつ様子を窺う。


 折角だから魔法改変をイメージしながら使ってみるとしましょうかね。使う魔法はウィンドアロー。イメージするのは男のロマン兵器であるドリル! 俺の中でドリルと言えばやはり『可変戦機ゲットダロボ』のⅡ号機だな。地中を進み股間からドリルで股裂きするなど今までにない演出だった。子供ながらに思わず股間がキュってなったよ。おっといけない脱線した。


 大きさは数センチあればいい。大事なのは貫通力。狙いはゴブリンの脳天。

 方向よし! 射角よし! 弾数は3!


 全てのイメージを固めて魔法として形どる。


「ドリルアロー!」


 チュイイイイイン


 歯医者の器具のような音を立てて3つのドリルアローはゴブリンへと向かう。ウィンドアローの利点は音がほとんどないところだったのにこれじゃ気付かれてしまうじゃないか。試行錯誤しないとだめだな、こりゃ。

 そしてごっそりMP持っていかれた気がします。戦闘開始なんで確認は後だが。


 ビスン!


 ドリルアローのうちひとつは狙い通りゴブリンの脳天へ着弾するももうひとつは当たったものの肩口へ、もうひとつに至っては地面へ突き刺さっていった。さっきのイメージでゲットダⅡ号を思い浮かべた弊害だろうか?

 とにもかくにも射撃管制がいまひとつです! これも要練習だ。


 外れたことを確認した時点ですぐさま攻の型を構えゴブリンへと突貫する。

 相手は狙撃で浮き足立っているから一気に制圧する所存なり。


 怪我を負ったゴブリンへと向かって一気呵成に躍り出た。エレノアさんの動きを参照にして軸足から拳までを一本の線になぞらえ勢いを殺すことなくむしろ増しながら右拳を突き入れる。振り向くまもなく負傷したゴブリンは転がりながら木の幹へと叩きつけられた。

 格闘スキルを習得したことでいままでよりも体の動きがスムーズだ。前よりも思い通りに動いてくれる。


 チャキッ


 最後のゴブリンが錆びた剣を抜きこちらを警戒している。仲間を殺られたからか鼻息が荒い。

 対して俺は今までにないほど落ち着いている。少なくともあの時のエレノアさんほどの恐怖は感じない。あれは怖かった。本当に怖かったもの。


 ギィィィィ


 耐え切れなくなったのかゴブリンが剣を振り上げこちらへと切りかかってくる。見える、見えるぞ、俺にも動きが見える! ギアン、エレノアさんと立て続けに俺の力量以上の相手の動きを見せられたからかゴブリンの動きは非常にゆっくり感じ取れた。


 剣の動きに合わせて返しの型でカウンターを……返せない! そりゃそうだ、型は教わったけどうまいこと組み合わせられる攻撃手段を確立してないものな。たかだか1日習ったくらいでできるわけがない。


 かわしながらタイミングを見計らって左ジャブ。勿論、見よう見まねだが型のお陰か重心は安定しているのでそれなりの形になっているようだ。

 拳甲がゴブリンの顔へと当たる。ワンツー、ワンツーとジャブで間合いを計りながらどこまで動けるのか試していく。

 哀れゴブリンはもはや動くサンドバックと化しており先日の俺を思わせる。これ以上嬲るのは趣味ではないので動きが止まったところへ渾身の右ストレートで止めをさした。


 てれれてってって~♪ 拳士、異世界人のレベルが上がりました。


 やれやれ、剣と違って拳甲を通してだが確実に命を自分の手で刈り取った感触を感じる。そういえばよくラノベとかでは人型を殺めたとき吐いたりしてたけどそういうのはないな。思えばフツノさんたちを助けたときからそうだったか。

 これが人相手だとどうなるか、それはまだ分からないけれど今の内からある程度の覚悟はしておいたほうがいいだろう。ここへ来る前に依頼のところで盗賊の捕縛とか対人の依頼もあったしな。まかり間違えばいつどうにかなってもおかしくないんだから。

 ふう、考え事はここまでにしよう。ここはダンジョンじゃないんだからさっさと討伐部位と魂石を回収しとかないと。


 ゴブリンの左耳を切り取り魂石を抉り出していると視界の隅でなにかが動いている。

 む、まだなんか生きているのか?


 よく見てみると最初に絶命したゴブリンの影に生き残っていたマリモがいた。だが、飛び跳ねるでもなくその場に留まっている。

 今まで見てきたマリモよりも一回り大きく感じるそれはふるふると小刻みに震えている。やがて一際大きく震えたかと思うとぷしゅうと音をたて空気が抜けたかのように萎んでしまった。


 何事かと近づいてみるとそこにはゴルフボールくらいの色艶のいいマリモが転がっていた。

 脱皮? 分裂? 出産??

 やがてぽよーん、ぽよーんと柔らかそうな飛び跳ね方をしつつこちらへと近づいてくる。攻撃してくるか!?




 慌てて構えを取ったのだがこのマリモが攻撃してくることは無かった。というかなんか俺の周りをぽよんぽよん飛び跳ねてるんだけど?

 これって刷り込みみたいなものなんだろうか……。このナマモノ、目がないけれども。


 屈んでマリモを手の平に乗せてみる。素直に乗っかり手の平の上で跳ねるマリモ。なんだろう、ちょっとだけ可愛いと思う俺がいる。


「お前、俺についてくるのか? どうする?」


 戯れにマリモは話しかけてみた。マリモが話せるわけもないのになにやってんだ俺。









 てってれ~♪ マリモは恭順の意を示しました。 異魂伝心Lv1を発動します。






 なぬ? 


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