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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第九章 嵐の前の静けさ
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第243話 当方に出撃の用意あり


「あ、ノブちゃん、丁度いいところに」


 おや、珍しい組み合わせだ。セフィさんとティーナさんが二人して何処かへ行くのかな?


「どうしたの、二人して」


「ああ、『焔の槌』に頼んでおいたアタイの武具が出来るのが今日だから取りに行こうとしてたんだ。そしたらセフィロトも防具を頼んでいたのを思い出して一緒に取りにいくところなのさ」


「そうなのぉ。ノブちゃんも一緒にいかない? ずっと飛び回っていたでしょ。ここらで少ぉしゆっくりしてもいいと思うのぉ」


 ふむ、そういえばおやっさんのところに行ったドワーフ一家の様子も見に行きたいし丁度いいか。


「そうだね。俺もご一緒していいかな」


「「勿論さ(よぉ)」」


 そういうことで嫁さん二人と連れ立ってのお出かけである。


 セフィさんには業物であり魔法の発動体も兼ねている槍があるのだが胸当てなどの防具を発注していた。ティーナさんの場合はアーサーの一件でぼろぼろになった武器防具一式をまるっと作ってもらうことになっている。素材は俺提供のミスリルと魔鉄鋼をふんだんに使ったものになる予定だけに仕上がりが楽しみでもあった。おやっさんならばミスリルの軽さと魔法防御、魔鉄鋼の重いが物理防御に優れた点を生かした逸品を仕上げてくれると信じているぜ。


 素材であるミスリルは弛まぬ収集を続けていたし魔鉄鋼においては時間はかかるものの壁作成の魔法で作り上げることが可能になっていた。発動が遅いために戦闘じゃ使えないんだけどね。


「こんにちはー」


「いらっしゃいまちぇ! 『焔の槌』へようこしょ!」


 扉を開けるとすぐにちょっと舌足らずな子供の元気な声が聞こえてくる。一家揃ってここに住み込みで移ったドワーフ一家の子供だ。小柄の幼女がハンマーを持ってのお出迎えって何でだよ! この子もクーネルちゃんたちと同じ6歳だったはずだが大人顔負けの大きさのハンマーを持ち素振りをしていたんだ。


「……え、えーとマウちゃんはいるのかしらぁ?」


 流石のセフィさんですらちょっと動じているぞ。


「あい! 親方は今奥にいるので読んできましゅ!」


 ハンマーを振り回しながらトテテテと奥へ引っ込んでいくのだが……どこかにぶち当たってメキィとかドゴォとか音が断続的に聞こえてきている。音が鳴り止んでしばしたちのっそりとおやっさんが顔を出してきた。その顔には大きな青あざができている。なんとなくその理由を察したので敢えて何も言わなかった。


「おう、依頼の品はできてるぞ。あとはノブサダが付与をかければ完璧だ」


 本人も敢えてスルー。ここは何も気にしないのが大人のマナーである。二人も口を噤んでいるしな。


「サイズは間違いないはずだが念のためにもう一度確認してくれ。そいつが終われば引渡し可能だ」


 嬉々として試着室に入っていく二人。この店には俺が提案したため女性用の試着室があるのだ。男? そこら辺で着替えるといいと思うよ?


「それとだ。ミタマの嬢ちゃん用の弓の最終調整も済んである。職人二人分、技術の粋を集めた今までで一番の出来になったのは保障するぞ」


 ゴトンとカウンターの上に置かれたその弓は見ただけで業物だっていうのがありありと分かる逸品に仕上がっていた。


 品名:千里弓『紗枝羽さえば

 品質:遺産級 封入魔力:287/287

 付与:『視力強化』『感覚強化』『軽化』

 ネーネ、マウリオ、ノブサダの三者によって作成された複合弓。いくつもの希少素材を惜しげもなく使用し作られた。矢を必要とせずに魔力を用いての射撃も可能。

 天恵:【自己修復】【魔力具現化】



 あわや伝説級というこいつは複合素材の本体部分は闇夜に溶け込む漆黒。エルダートレントの中でもネームドモンスターの希少種『ゴルゴダ』からドロップした『ゴルゴダの新木』にミスリル、魔鉄鋼を使った部品を組み込んである。弦は『山鯨の髭』が使われており魔力を通すことで自己再生する使い勝手の良い素材らしい。持ち手の上側に『カーバンクルの瞳』と呼ばれる紅い宝石のような素材が組み込まれておりこれを使用したことで矢が無くとも魔力を具現化させ射る事が可能になった。


 更にこいつには俺の付与魔法によっていくつかの強化が施されている。アミラルさんの依頼やうちの部隊の武器防具全ての付与などを繰り返しているうちに俺の付与魔法もレベルアップし施せる種類も増加していた。そのうちのひとつが視力強化。その名の通り使用者の視力を強化するのだが細かいものを見れるのではなく遠目に見える獲物を捉え易くするといったものだ。


 これらが組み合わさって弓でありながら長距離狙撃が可能になるというとんでも武器に仕上がっている。どこまでの距離が射程範囲なのかは未だ未知数であるが俺が試しに射てみたところ500メートル離れた的の近くにあった木をへし折った。つまり的から外れたわけだがこれは俺が下手だからでありそれだけ離れていてもこの威力であるのが特筆すべき点だ。込める魔力量が多く必要になるため常人ならば射る事ができて精々1射だろう。俺と魔力のバイパスが繋がっているミタマだからこそ使いこなせることを見込んでいるのだ。なんせ狩人もいつの間にか上位職へランクアップしてたし。


 元々新しい弓を用意するつもりだったが途中から方向転換してこんな仕様になったのである。ネーネさんとおやっさんの知識が予想以上に深く様々なアイデアを出してくれたからこそだな。正直こいつに値段をつけたら城のひとつやふたつ買えるんじゃないかと思うよ。


「ありがとう、おやっさん。試射した時よりも随分と取回しが良くなっているよね。ミタマもきっと気に入ってくれると思う」


「おう、俺もこいつが出来上がった時は手が震えたぜ。間違いなく俺が手掛けた武器防具の中で一番の仕上がりだ」


 おやっさんの顔も非常に満足げである。いい仕事したぜっていうのがありありと分かるな。こいつは俺たちにとって大きな助けになる筈だ。出来るなら今回の戦乱のうちにこの国の膿は吐き出しておいたほうがいいもんな。おっと不穏な考えになってしまってる。ここは心を落ち着けてセフィさんたちが出てくるのを待ちましょか。



 10分後。



「ノブちゃん、これどうかしらぁ?」


 シャっとカーテンが開けられるとついついまじまじ見てしまう艶姿のセフィさんがいる。

 銀色の胸当てが胸部を含め丸っと覆っているもののへそとか出ちゃってるじゃないの。両手には肘近くまで覆う胸当てと同じくミスリルの合金でできた篭手を装備していた。腰まわりは両脇をガードする直垂はあるもののしゅるりと薄い布地が前後に垂れ下がっているだけである。本来の姿へと戻ることを考えスリットの入ったチャイナドレスの下部のような装備だな。生地は魔工で限りなく細くしたミスリル糸をマニワさんに布へと織り込んでもらったものを使用している。


 これは武器の類を防ぐというより魔法防御を高める代物だ。実際、斬れないことは斬れないのだが打撃の衝撃は普通に通ってしまう。セフィさんの戦い方は受け流し避けカウンターを決めるのが得意らしいのである意味マッチした装備なのだと思うよ。えっちぃけど。セフィさんもミタマと同様姿を察知させる前に倒すタイプだからいいんだろう。


「すごく眼福です。他人に見せるのが惜しいくらい」


「うふふぅ、ありがと♪」


 ひらりひらりと舞う度に布地が跳ね上がるので視線が固定されてしまうのは悲しい男のサガよのう。防具全体には『結界』を付与させてありいざとなれば魔力を通すだけで結界石と同様の効果を起すことが出来る。慣れれば篭手のみ結界を起動させ盾の様に使えるかもしれない。頼まれて『幻術』も付与したけどこれはセフィさんがどう使うかによりけりだろう。あくまで可能性なんだが使いこなせばこれ以上ない武器になる。セフィ先生、ベータテスターよろしくお願いします。



「あ、アタイのほうも見とくれよ。どっかおかしなとこは無いかい?」


 ガシャリと歩み出てきたティーナさんが着込んでいるのは赤と白の部位が入り混じったプレートメイル。とはいえフルプレートではなく適度に隙間をもたせ機能性も高い仕上がりになっている。


 全体的に流線型の鎧でティーナさんに良く似合っていた。真っ赤な兜に白いブレードアンテナを二本つけたのは俺の趣味であるが男心をくすぐるのかおやっさんも非常に気に入っているようである。実際、このブレードアンテナで突き刺すことも可能と言えば可能だ。


 左右の篭手には盾を固定する接合部が付いており先端の尖った盾で突貫することも視野に入っていた。盾も結構な大きさで120センチメートルほどもある。


 最大の特徴は武器である剣だろうか。明らかに騎士が使うような武器ではない。なんせ巨大な出刃包丁なのだから。切れ味と殴打することを両立させたらこうなってしまったというか本人が希望したのだから仕方ない。しかし、その大きさは盾と同様でまさに金属の塊である。これをティーナさんの怪力で叩きつけられようものならミンチ確定だ。切れ味のほうも抜群でオークの三枚下ろしなんて容易くできると思う。ちなみに盾が剣の鞘代わりになるように設計されているんだ。


 全てミスリルと魔鉄鋼の合金製でありその性能は折り紙つきである。とはいえ付与しなければいくらティーナさんでも歩くのに苦労するくらいの重量はあるんだけどね。軽化の付与魔法様々だな。


「うん、すごくいいね。凛々しい女性って感じがする。真紅の虎が駆け巡れば味方は鼓舞されるだろうし敵は震え上がると思うよ」


「そ、そうかい! 旦那の為にもアタイ張り切っちゃおうかね!」


 ぶんぶん右手を振りつつ照れるティーナさんだがその手には巨大出刃包丁が握られていることを忘れるな! 危険が危ないぞぅ。


 他の嫁さんの分も修繕と強化が終わったようで全て纏めて引き取った。おやっさん、睡眠時間を削ってまでとっかかってくれてたようだ。リポビタマDXの詰め合わせと上乗せした作業代を支払わせていただきましたよ。ありがとう、おやっさん。



 ……心苦しいのだがフミたん用の武器防具もお願いします。できれば特急で!


 そしておやっさんは引きつった笑顔を浮かべながら崩れ落ちた。



 てれれてってって~♪ マウリオの鍛冶がレベルアップしました!

 てってれ~♪ マウリオは睡眠耐性を習得しました!














 こんな感じで俺たちは日々戦力の増強とあっちこっちの敵性戦力へちょっかいをかけつつついに出兵の日を迎えたのだった。

品名:幻惑の装衣『虹蛇』

品質:遺産級 封入魔力:197/197

付与:『軽化』『硬化』『結界』『幻術』

マウリオ、マニワ合作の胸当て、篭手、腰当ての一式。4種の付与を素材が許容できるギリギリまで付けた一品。『結界』と『幻術』を付与されているのが最大の特徴。本来ならば脛当ても付くはずだったが使用者の意向によりそれは無くなった。



品名:皆殺しの出刃包丁『大虎おおとら

品質:遺産級 封入魔力:177/177

付与:『軽化』『硬化』『腕力強化』

マウリオ作の巨大な出刃包丁。ノブサダが魔工によって合成したミスリルと魔鉄鋼の合金で出来ており叩き潰すことと切れ味を両立した逸品。『軽化』がかかってはいるものの常人には持ち上げることすら不可能である。


品名:守護の大盾『警虎けいとら

品質:遺産級 封入魔力:162/162

付与:『軽化』『硬化』『結界』

マウリオ作の大盾。ミスリルと魔鉄鋼の合金で作成されており『大虎』の鞘でもある。左手の篭手へ接続可能なギミックが付いており『大虎』を両手持ちで使う場合に使用する。また先端部には『黒虎の牙』が付けられていて盾を突き刺すというアグレッシブな攻撃方法もとることができるようになっている。


品名:魔法甲冑『扶郎花ふろうか

品質:遺産級 封入魔力:188/188

付与:『軽化』『硬化』『小治癒』『脚力強化』

マウリオ作のプレートメイル。ミスリルと魔鉄鋼の合金で作成されノブサダの付与魔法により全体を紅く部分部分を白に染め上げられている。ヒールの魔法が付与されており装着者の魔力を鎧に通すことで小規模な治癒が全身にかかる特色を持つ。これにより戦闘の継続時間が飛躍的に高まるが戦闘後の筋肉痛にはご注意を。

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