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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第九章 嵐の前の静けさ
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第241話 暗躍



 さて作戦決行のお墨付きも貰ったことだし奴等が出発する前にやりたいことは済ませてしまおうかね。まず行ったのは各都市の孤児院を回ること。これにはいくつかの理由があるのだがそれはまたいずれってことで。




「初めまして、院長先生。私は彼らを取りまとめている『和泉屋商会』の会頭を務めているイズミと申します」


 畏まって挨拶する俺は目の前の年老いた院長と握手を交わす。第一印象は大事だよね。


「いえいえ。先日は当院へ寄付をいただき助かりました。お蔭様で子供たちに久しぶりに満足な食事をとらせることができ皆喜んでおります。私たちの力のなさを露呈しているようで恥ずべきではあるのですがね」


 そういう院長の顔は頬がこけており栄養状態はよろしくないようだ。先ほどチラッと見た子供たちはそこまでではなかったので本人の食事を切り詰めてあの子達に分け与えているのだろうか。まぁ一人でっぷりしているやつよりか信頼してもいいのかもしれない。


「部下から聞きましたがやはり運営は厳しいのですか?」


 真っ直ぐに切り込む俺の質問に苦笑いを浮かべつつ院長は答える。


「そうですな。今はまだなんとか回っておりますがこれ以上食料などが値上がっていけば遠くないうちに破綻してしまうでしょう。元々こちらの領主様からの補助金と各神殿からの補助金、そして皆様からの寄付でなんとか成り立っていたのですが出来た当初から年をおうごとに目減りしていってるのが現状です。今では私財を切り崩してなんとか凌いでおりますよ」


 真っ先に影響を受けるのは仕方がないか。卒院した子供たちも生きるのに精一杯であまり寄付できなかったりしているそうな。この孤児院には普人族だけでなく獣人の子供もいる。それを受け入れているこの院長の人柄はそれだけで俺にとってプラスだわな。


「巷では内乱との噂もありますし世知辛いことです。こちらは些少ですが私からの心づけということでお納めください」


 出所を疑われないように銀貨に崩したものを机の上に置く。銀貨500枚、5万マニーだけにずしりと重量感がある。それを見て院長は呆気に取られた顔をしておりしばらく固まったままだった。これでも金額は抑えたのだ。あまり多くを渡してしまえば今度は孤児院そのものが強盗などの標的にされたりするかもしれない。それでは本末転倒だから必要ならば後日また援助すればいいさ。


「こ、こんなによろしいのですか? 真にありがたいことではございますがイズミ様に何の利もないこの小さな孤児院へなぜこんなにも良くしてくださるのでしょう」


 それは確かにそうだろう。いきなり50万円相当の金をぽいっと寄越されても不振感が沸いておかしくない。寧ろ警戒するほうが人としてまともだと思う。


「私も何も知らぬまま世間へ放り出された経験がありましてね。そんな中、心温かい皆に支えられ今このように僅かながら財を成すことができました。ですから少しですがそんな恩を今度は子供たちへと還元したいと思ったのですよ」


 そんな俺の言葉を一言一句聞き漏らすまいと真剣に聞き入っている院長。嘘は言っていない。真実ばかりではないけどな。


「それにこちらの孤児院では獣人の子供も受け入れています。昨今、彼らを差別する動きが王都を中心に起こっていたのを苦々しく思っておりました。私の恩人たちには獣人や亜人の皆も多くいたのでね。それでこちらの院長ならば信用できると感じております」


「その政策があったのは私も存じております。ですが身寄りのない彼らには何の罪もないのに差別するようなことはできませんでした。領主様方もそれを快くは思っていなかったのでしょう。何度か苦言を頂いたことがあります」


 ねちっこく嫌味を言う役人、貴族を思い浮かべイラッとする。おっと俺がイラッとしても仕方ない。


「なんとも世知辛いことです。ところでそれでは子供たちが洗礼を受けたりできないのではないですか?」


「はい、卒院するまでに受けられる子供が一人か二人いればいいほうです。いかな神殿といえどお布施を貰わねば他への示しがつきませんので……」


 やっぱりそうか。だが俺にとっては好都合。予めここのレベリット神殿には話をつけてある。各都市回ってみたがやはりレベリット神殿の規模は小さい。全てに寄付して周り孤児院を巡る際に洗礼を施しとして与える旨を伝えてある。ここら辺は駄女神に神託として予め根回しをしてもらっていた。洗礼を受けた信徒が増えれば彼らとしても損はないので寄付もありにこにこと満面の笑みでの了承だったよ。


「私は商人ではありますが同時に修道士のクラスも所持しています。よろしければ子供たちへ洗礼を与えてあげたいと思っております。生活魔法が使えるようになれば幾分か生活の助けになると思うのですがいかがでしょうか? 勿論、お布施は必要ありません」


「……ご好意に甘えてもよろしいのでしょうか? こちらからイズミ様へとお返しできるものが何もないのです」


「構いませんよ。そうそう、子供のためにこちらのような教本も置いていきますね。彼らが成長したらいずれ私が仕事を頼みに来ることもあるかもしれません。私は彼らの未来へ投資するのですよ。それと院長にはこれまで通り獣人亜人に対する差別が生まれないような教育をお願いしたいのです」


「はい、それは勿論! イズミ様のご好意に最大限の感謝を」


 そう言いながら俺へと祈りを捧げる院長。拝まれてもなんにもでませんよ? ちょっと子供へのおやつや衣服がでるだけですわい。



 それから10歳を超えた4人へレベリットの洗礼をしてあげた。終えてから俺が差し入れたお菓子を頬張りながら熱心に『マリモも理解できる教科書』を読み始めていたよ。最低限の四則演算は勉強できるだろう。ちなみにタマちゃんは計算ができる。さすがは俺のタマちゃんだ。


 駄女神の信徒を増やしつつ獣人などへの差別を減らす。いずれこの中からうちへ就職するものも引っ張っていけるかもしれない。そんな彼らの未来へと投資するのが今回の目的だ。


「それじゃ俺はこれで次へ向かうよ。ここの様子もたまに見ておいてほしい。それとスラムの方であぶれている獣人、亜人の子供がいたら保護してこちらで引き取ろうと思う。何なら家を借りて孤児院の真似事をしていても構わない。戦争が終わったら順次移動させよう」


「はっ、畏まりましてございます。御屋形様の御武運をお祈りしておりまする」


「ありがとう。よろしく頼むよ」


 俺は空間転移を発動し次の目的地へと飛びだす。

 こうしたことを各町で繰り返した。結構な散財ではあるが寧ろ資金は増えている。各町へと飛ぶたびに金属、貴金属の壁を作り出し資金を補充していたからだ。流石に鉱山が売りのところでは枯渇させてしまうと後が不味いのでやってないが。最早、冒険者でも何でもないなぁと一人溜め息を吐いたりしたのは内緒である。ま、あくまで冒険者はお金を稼ぐ手段のひとつにしか過ぎないのだけれどもね。本当はどんどん依頼をこなしてランク上げたいところなんだがこのご時勢では仕方がない。


 部下たちには孤児院に介入して青田買いし後々に作る予定の町へと引き込むのが目的なのはまだ伝えていない。知っているのは嫁さんたちくらいなものである。頭の固くなった大人たちよりも子供を教育していったほうが差別やなんかは育ち難いだろうという思惑からだ。


 そんなことを考えながら最後の街である『オーデンサ』へと舞い降りる。


 孤児院の方はさくっと周り後の事についても部下の彼に任せた。ここでの大きな目的。それはここの領主であるハヌマーンの戦力偵察、妨害と兵糧へのマーキング。それと違法奴隷である亜人たちがいないかなどの潜入捜査だ。さあ、君もれっつダンボール!









「うっきゃあ、おい、行軍の準備は完璧ぞな?」


 よく言えば斉天大聖、悪く言えば猿にしか見えない男が部下へと状況を問いかけている。その間ももりもりとバナナらしき果物を頬張りながら侍らした美女の乳を揉んでいた。奴隷紋を刻まれた美女たちは表情を変えないままただただ揉みしだかれるままである。


「うほっ、ハヌマーン様。仰せの通り行軍の準備は万端でござるます。明日の朝だろうと今晩だろうと出発できるでござるます」


 相対するゴリラのような大男はボリボリと頭を掻きながら気だるそうに答えた。上半身が不自然なほど盛り上がりその腕回りは子供の胴ほどの太さである。猿とゴリラにしか見えないが二人ともれっきとした普人族、決して獣人ではない。


「うきゃきゃきゃ、良か良か。出来るだけワシ等は後方で戦力温存するぞな。そんでもって美味しいところだけかっさらうぞなもし。ディレンもアズベルも疲弊したところで美味しく平らげてしまうのが理想ぞな。それと行方をくらませたっちゅう公王は見付かったぞな?」


「うほほ、そちらは手がかりがないでござるます。最新の情報だとあの後一度顔を出したそうでござるますがその際にはヴェールで顔を隠し勇者の後ろに控えていただけだったらしいでござるます」


「フン、そうそう尻尾はださんかぞな。まぁいいわいな。明朝、出立するぞな。あちらに着き次第、飛猿部隊で情報を拾い集めるぞな、ゴリアテそのように進めよ」


「うほう、承ったでござるます。そりでは」


 のっしのっしと愉快なゴリ男が部屋をあとにする。ばたんと扉を閉めた瞬間、ハヌマーンは腰布をさらりと解き放ち無表情の美女へと飛びつく。そしてそのまませっせと腰を振るのであった。




「うえぁ、気色悪いの見たわぁ」


 うえぇと吐き気をもよおす光景を目の当たりにして俺は思わず舌を出してしまう。なんとも小者感のある貴族だな。これでこの国で三番目の力を持っているってのは公国の未来が少し危ぶまれる今日この頃。よっぽど期を見るに敏なのかそれともただ先代までの功績が高かっただけなのか。識別先生の鑑定結果がこちらでござるます。おっとうつった。



 名前:ハヌマーン・オカーン 性別:男 年齢:33 種族:普人族

 クラス:召喚士Lv33 色魔Lv33 状態:性病

 称号:【美女百人切り】


【スキル】

 召喚術Lv5 悪知恵Lv6 拷問Lv4 性豪Lv6


【契約】

 ??? ??? ??? ??? ???



 うーん、なんとも偏った性能。仲間にはしたくないやつだというのだけは確かである。契約しているものまでは流石に判別がつかなかったのは仕方ない。今の識別先生の限界が分かっただけでも収穫っちゃ収穫だ。


 それにしても何とも嫌な考え方をしているもんだわ。従軍している面子次第ではあるが叩き潰すのには躊躇しなくてもいいので気が楽とも言える。こいつの所には念入りに嫌がらせをしてやろう。折角だからつい先日こっそり拝借しておいたあの時の毒薬を希釈して使わせていただこうか。腹痛程度ですむらしいが結構長引く代物だとセフィさんのお墨付きだ。出所が宰相側だけにあっちを疑ってくれれば儲けものである。兵士諸君には悪いが泣いてくれ。こんなやつに雇われている我が身の不幸を呪うがいい。


 そして精々宰相の足を引っ張ってくれることを祈ろう。明日には出発ってことなのでマーキングを着けたら出発後にこっちの館へ忍び込んで色々といただいていきましょうかね。主力がいないから楽なもんだろう。ばれ難い様に寝具でも丸めて幻術を被せておけば二、三日は持つだろうさ。






 ノブサダは兵糧へマーキングしました。

 ある程度の距離へと近づけば場所が把握できます。



 ノブサダは亜人の娘さんたちを解放しました。


 牛人族の娘さんが3人仲間になった。

 猫人族の娘さんが1人仲間になった。

 狐人族の娘さんが2人仲間になった。

 羊人族の娘さんが3人仲間になった。

 栗鼠人族の娘さんが1人仲間になった。


 その他の美女たちを解放しました。



 ノブサダは宝物庫を物色しました。


 アダマンタイトの鉱石を手に入れた。

 武器防具を手に入れた。

 魔道具を手に入れた。


 てってれ~♪ 怪盗のクラスが解放されました。

 でれれれ、でれれれ♪ で~れん♪ 窃盗のスキルを習得してしまいました。

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