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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第九章 嵐の前の静けさ
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第238話 僅かな休息、僅かでも合宿 前編

にゃんにゃん


 ざっくざっくにゃんにゃん♪ ざっくにゃんにゃん♪

 ざっくざっくにゃんにゃん♪ ざっくにゃんにゃん♪


 朝も早よからねこさんは~♪

 しじみを求めて砂を掻く~♪

 出汁が溢るる味噌汁飲みたい だからせっせと砂を掻く~♪


 ざっくざっくにゃんにゃん♪ ざっくにゃんにゃん♪

 ざっくざっくにゃんにゃん♪ ざっくにゃんにゃん♪


 今日も朝からねこさんは~♪

 あさり求めて砂を掻く~♪

 今日のご飯は 深川丼 涎が止まらぬ美味さよの~♪


 つりつりにゃんにゃん♪ つりにゃんにゃん♪

 つりつりにゃんにゃん♪ つりにゃんにゃん♪


 今日はねこさん、船を出す~♪

 目指すはマグロの一本釣り♪

 赤身と中落ち大好きです わさびと醤油でうまうまよ~♪


 あぶあぶにゃんにゃん♪ やばにゃんにゃん♪

 あぶあぶにゃんにゃん♪ やばにゃんにゃん♪


 船が転覆大変だ~♪

 ねこさん海へ投げ出され~♪

 イルカでサーフィンした後は 鯨で港へ帰還します♪


 ざっくざっくにゃんにゃん♪ ざっくにゃんにゃん♪

 ざっくざっくにゃんにゃん♪ ざっくにゃんにゃん♪





 子供たちが歌を歌いながら一心不乱に砂を掻く。

 アサリ、シジミ、ヤドカリ、時々ムツゴロウを石で作られたバケツへと放り投げていた。

 相変わらず生態系がおかしいと思いつつも俺はその光景を暖かく見守っている。ちなみに歌っている歌は作詞が俺で作曲はフツノさんだ。半分以上実話なだけに身悶えしているミタマがいたりする。


 今日は嫁さんとお子様たちを連れてダンジョンの海へと遠足である。獣人やその他の大人たちは子守もなくゆっくりと体を休めてほしいと休日にしてあげた。無論、和泉屋も休みなので三連娘やティノちゃん、それとミネルバちゃんやフォウちゃんも一緒に来ている。奴隷から解放したジャパネたちは女性たち総出でショッピングに行くと張り切っていた。あまり買い込みすぎないように祈るだけである。


 以前、嫁用に作った水着は流石に子供たちの人数分作るのは時間も無かったので汚れてもいい薄着の服を着せている。泳ぐのには適さないので浜辺周辺の行動範囲とした。念のためウズメたちウミネコ衆を何匹か配置はしてあるけどね。報酬はこれから俺が地引網で獲って来る何割かだ。これまでの情報収集の褒美も兼ねているのでしっかり漁をしてこないといけない。出来ればマグロッスあたりも仕留めたいところだ。


「それじゃひとっ飛び沖へ漁に行って来るんで皆で昼食の準備頼むね」


「はいな、大漁祈願しとるで♪」


「……ん。私はサザエやアワビ獲って来るね」


「浜焼きや刺身にする準備はお任せください。御屋形様、御武運を」


 フツノさん、ミタマ、フミたんが順に手を振りながら声をかけてくる。そう言われちゃ生半可な成果ではいけませんな!

 猫は水が嫌いというがミタマはそんなことはなく海女さんも項垂れるほど巧みに素潜り漁をこなすのだ。食への執念ここに開花せりと言ったところだろうか。フミたんも随分と料理の腕を上げていた。『侍女の嗜みです』と軽く言うけどひと月足らずでその腕はフツノさんと肩を並べるほどになっている。


 浜辺を飛び出す際にちらりと横目を向ければお子様天国なこちらと打って変わって地獄のトレーニングが目に入った。


「こらぁ! 最近、教えるばかりで体が鈍ってるさね。いいかい! きっちりここで鍛え直しな!」


「ほうれ、2人でも3人でもよいぞ。かかってくるがよい」


「怪我をしても大丈夫です。旦那様やタマちゃんが控えていますからね。なので力を出し尽くすつもりできてください」


 ティーナさん、カグラさん、エレノアさんが男衆を圧倒しながら無双していた。姐御に萌え隊や衛兵隊の面々も地獄の合宿に参加していた。前回俺にのされた隊長たちは強制的にカイルは思うところがあるのか自主的な参加だ。下が砂だからカグラさんもぽーんぽーんと男たちを放り投げている。

 あれ? あまり見ない顔もいるな。あの縦縞の服の一団はなんだっけか? まぁ、カグラさんたちが放置しているなら大丈夫なんだろう。


「ひいいい。姐御、滅茶苦茶強くなってないか?」


「明らかに膂力も足腰も鍛え上げられてるな。あれか、夜の特訓の成果なんじゃないか?」


「うほっ、それは何とも激しい」


「……お前ら、余裕ありそうだねぇ。ほぉら声も出なくなるくらい叩き付けてあげるよっ!」


「「「うっは、そいつぁご褒美です!」」」


 ……楽しそうだな。いい笑顔で宙を舞っていたが気にしないようにしよう。



 セフィさんは自主練ということで海の中を本来の姿で闊歩しているようだ。三叉の矛を片手にサメやダイオウイカ、巨大魚がいるポイントへ向かったらしい。昨日戻ってきたときにイカを刻んで乗っけた『ポセイ丼』を振舞われたがあれは厳しかったな。ヌメリが酷いんだ。それでもなんとか完食したのはニコニコしながら食べる姿を眺めるセフィさんを悲しませたくない一心である。次からは俺がちゃんと料理しようと決意したけどもラミア族的にはご馳走なのだろうか? ちょっと怖くて聞けないのだった。


 海面をホバーで滑りながら突き進めばこの階層の海の守護神となりつつあるハイクラーケンのケンさんに手を振りながら丁度いい漁場を探す。おっとここら辺にマグロッスの魚影があるじゃないか。


 魔力集中ぴきぴきどかん! 魔糸よ、魚を捕り込みし網となれ!


 どこぞの蜘蛛男のように手の平から網を海面広域に放り投げる。ぶわっと広がりながら海へ沈んでいく様を空間把握できっちりと追いながらあとは指定のポイントへつくまでゆっくり待つだけ。


 止まることを知らぬ黒い弾丸が一団となって海中を突き進んでいた。その突進力たるや道を塞ぐ魔物は突き破り海溝が立ちはだかれば転移し素通りする。喧嘩上等、死屍累々。走り出したら止まらないぜ、何人たりとも俺らの前は走らせねぇと言わんばかりのそいつらを……フィーーーーーシュ!


 ――外に張るのは薄皮一枚。中はたっぷりホイップ&カスタード。だけど本当は痺れる雷、触ると感電必死なり。


「『薄網雷電内包陣シュークリームサンダー』!」


 マグロッスの一団が魔糸でできた網の中へ包まれたその瞬間を見計らって多重発動された電撃がこれでもかとひた走る。突如襲ってきたそれに転移する間も無く次々に昇天していく。


 ドロップアイテムだけが残ったことを確認し一気に引き上げるとさっさと次元収納に保存した。うん、大トロ、中トロ、赤身に中落ちにおっと心臓も入ってるな、よしよし。大々的に刺身に寿司と作りたいところではあるのだが如何せんわさびの量が足りない。八百はっつぁんの所に東国から入ってきてた分しか今のところ在庫が無いのだ。わさび畑の作り方なんて精々写真で見ただけだからなぁ。山わさびとはまた違うものだし。取り合えず十本ほど魔力水の池に漬けてみている。うまくいきそうならばグロウアップの魔法で成長を促してもいいだろう。失敗したならば販路をどうにか探すしかあるまい。やはりマグロなど脂の乗った魚にはわさびが欲しいんだものさ。


 いかんいかん。食べ物にトリップしている暇などないのだ。育ち盛りの子猫ちゃんたちが待っている。再び投網と化した魔糸を作り出し海の底へと投下していく。ファンタジー世界の深海魚ってなんか怖そうだねと思いつつ。





 というわけで大漁旗を掲げつつ浜辺で待つあの子達の下へとご帰還ですわい。


「た~いりょ~だぞ~!」


 ご覧下さい、こちらの新鮮な魚介類の数々。数々の部位があるマグロ、一緒に網へ引っかかっていたカツオを筆頭としたお魚たち、深海からお出ましの八角、各種カニの皆さん、ミタマが獲ってきたアワビ、サザエ、イセエビ。そしてどこから来たのよ知ってるよ、ダイオウイカにウツボにハリセンボン。セフィさん戦利品はいいのだがなんでこんなのばっかりなのよ。今回は俺とフミたんとフツノさんできっちり料理しますので安心安心。

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