第234話 嘘だどんどこどん
ここ数日、ポイント入れてくれてる皆様のおかげで地味に伸びております。
更新するたびに減ったりして地味に効いていたマイハートに癒しの光でござる。
連日30℃超えてテンションだだ下がりでしたが頑張りますよ! とりあえず今日を入れて4日は続けて更新なり。お気に召しましたらぽちっと一発お願いしまっす。
師匠やテムロさん、アミラルさん、果ては公爵様にまで相談してみた。
忙しい中、申し訳ないと思ったのだが全員快く相談に応じてくれたよ。全員、経験に応じた体験談などを交えて親身に答えてくれた。寧ろ、そういった人並みな悩みを持つ常人だって少しほっとしていた感じも見受けられる。完璧超人な英雄だったら扱いに困るってのもあるんだろうね。
特にためになったのは部隊の運用方法。うちの多くは獣人の皆さんであるからかなり尖った編成なのだね。更に種族ごとに特性を活かしたものを教えてもらった。犬人族、狼人族はその速度を活かした電撃作戦、戦場を自由に駆ける遊撃隊向き。リザード族はその堅い表皮と体力の多さから防衛戦向き。蝙蝠人族は隠密能力から諜報、空中を飛べることを活かしての防衛。空からの絨毯爆撃も検討中である。
公爵様から借り受けた軍略書にも目を通してみた。これってここ数十年の戦争の歴史書でもあるのな。これに記されている限り公国で起きた大きな戦は二つ。北の帝国、そして西の魔王領との戦いだ。帝国とは3万対3万5千の不利な状況から巻き返し講和で休戦と落ち着いた。魔王領との戦いは魔王配下の四天王が攻め込んできたものを国境の砦で何とか防ぎきった防衛戦である。
公国の兵ははっきり言って周囲の国と比べて特色もなくそこまで強くないらしい。ただしその分、粘り強い戦い方で防衛に力を発揮する。二つとも共通する作戦で主力を受け止めている間に突出した殲滅部隊が突き抜けて戦線を崩す戦法をとっていた。ちなみにどちらの戦でも特攻をかけたのは師匠たちだそうな。さもありなん。
短時間ながら充実した時間を過ごさせてもらった。ただ寄ったついでに薬品の追加発注がきたのには参ったね。どうにも他の都市からの応援の兵数が増加するらしい。アルティシナの参戦情報が伝わったせいか日和見を決め込んでいた貴族が加わったりしているそうな。例の件で錬金術店が減ったことが懸念事項であり先んじて申し入れたようだ。色々と便宜を図って貰っているし断りきれませんでしたとさ。素材を増産しておかないとだな。
……あるじ……こちら……ウズメ……
そんな中、不意にウズメより念話が入る。これはもしや!?
……目標……動きあり……場所は……
随分と長いこと待たせおって。ドルヌコさんの分、ポポト君たちのイラっとした分、俺のいらいらもやもやの分。このもやっとしたものを思い切りぶつけるべく俺は窓を開け空中へと飛び出した。
薄暗い建物の中、何人いるのか複数の影が一同に介している。誰も彼も堅気には到底見えない雰囲気をかもしだしていた。そんな中、黒いローブを着た人物がおもむろに口を開く。
「首尾はどうだ?」
「問題ない。店の乗っ取りは気づかれてはいない。このままやつらに卸す食料の中に遅効性の毒物を混ぜ込むさ」
「こちらも順調です。集めている義勇兵にこちらの手のものを入り込ませていますよ。部隊長あたりに任じられそうな人材を送り込んだつもりですが上手くいくかはあちらさんの状況次第ですね」
「グラマダの兵の切り崩しは失敗。少し前に錬金術ギルドのごたごたがありその際に癒着していた奴らは全て取り除かれてしまったよ。現時点では付け込む隙はないな。今は視点を変えて周囲の貴族の配下を切り崩しにかかっている。頭の貴族は公爵に心酔しているようだが配下まではそうじゃないからね。そっちはどうだい?」
ゆらりと最初の影が揺れたようにも見えるがそのまま語りだした。
「多少ごたつきはあったが5件の錬金術店を潰すと共に吸収した。二、三日もすればここを含め全店動き出す。一つ一つは無毒だが複数摂取することで劇毒に変わる代物を預かっている。そいつを仕込んで納める手はずだ」
報告が済んだのか一時的にシンと静まり返るも誰と言わずに次の話題を切り出す。
「決戦戦力はどうだ?」
グラマダの誇る一騎当千の戦力。戦をするにあたってはなんとしても引きずり出したくない相手であろう。それがこの街には3人も存在するのだ。戦いを吹っかける側からすればどんな手でも打ちたくなる。
「今のところどうしようもないな。戦拳は娘を、流星は息子を、剣王は母親を押さえようとしたものの悉く失敗している。特に戦拳の娘を押さえられなかったのは痛いな。あれ単体でも決戦戦力に次ぐ戦闘能力を持っているからな」
「あれか。公爵の娘と一緒に押さえる手筈だったのに全て台無しにされたってやつか」
「そうだ。100名を超える追手と足止めしていた傭兵団を叩き潰した存在、最近現れた『魔獣』とか呼ばれる若造のせいだな」
「やつには会った事がある。数ヶ月前まではただのFランク冒険者だった筈だ。何をどうしてそんな力を得たのかは知らないが何にせよ俺らの邪魔をしてくるに違いねぇ」
「Fランク? そんな駆け出しが今では戦拳に並びうる英雄だというのか? 勇者でもあるまいし人違いではないのか」
「いや、あの時見えた面は確かにやつだ。戦拳の弟子になっていたってのは聞いたことがあるしな」
「戦拳の弟子か……それなら在り得るか? やつの弟子は全て無茶苦茶だからな。魔法を得手とするものが生まれたとしても……」
そこで彼らの会話が途切れる。影が揺れ各々窓や壁へと近づきすっとあたりを窺っていた。
バン!
音を消し扉へと近づいていた影がそれを開いた矢先に物陰に潜んでいたものを中へと引きずりこんだ。
それは突然のことに驚きつつも引き寄せる手を振り払い受身を取って転がった。だが部屋の中央へとまんまと誘導されたことに気付き若干顔色を青くしている。ぐるりと囲むは5人。各々ローブやフードを被り顔を隠していた。
「一人か。ならばこいつを処理すれば事は明るみに出まい」
「どうせなら上手く使えば良い。格好を見るに衛兵だろう」
本人を無視して好き放題言い合っているがその中で一人フードから見える口元が苦々しく噛み締められている。それに反応した隣の男が訝しげに見る。
「どうした? 顔見知りかい?」
嗜虐的な笑みを浮かべそれはもう楽しそうに問いかけた。チッと舌打ちしながら更に不機嫌になるフードの男。つかつかと身構える衛兵の下へ向かうとまるでチンピラのようにしゃがみ込んだ。
「……久しぶりだな、カイルよぉ」
そう言いながらフードをとったその顔を見てカイルの表情は固まった。彼にとっても以外な人物がそこに居たからである。
「なんで……アンタがここにいるんだよ……ギアンの兄貴……」




